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第5話:聖女成長中

「全体! 止まれ!!」


アミリアの号令により騎乗した騎士たちは止まる。


「上手くなりましたな聖女様!」


司令官の軍務宰相が喜びの声を上げる。


「えぇ、ありがとう。それよりユウキは?」


「あはは、聖騎士様はあちらで近衛との訓練をしておりま……したぞ」


こちらを見る軍務宰相に手を上げると苦笑いをされる。俺の周りには近衛兵たちが屍のように倒れ込んでいる。


「流石、聖騎士殿……これでもこの国の中じゃかなり優秀なのだが……」


「そりゃユウキですから!」


「聖女様は良い旦那を捕まえられましたのぅ……」


剣を収めアミリアに近づく。


「三日でここまで覚えるのは凄いね」


「ユウキのお陰よ【潜在強化】が発現してからメキメキ強くなれてるもの!」


過去に飛ばされてから1週間、相変わらず神様達からの連絡は無いが特に変わりなく過ごせている。飛ばされた日に鑑定で見た【潜在強化】は二日後には発現した、今の所はまだ数値が低いが将来性が凄く高い能力だった。


「じゃあ今日もお願いするわね!」


馬を宰相に預けすらりと剣を抜くアミリア。軍団指揮の練習後、いつも通りの模擬戦だ。


「がんばれーアミリア様!」


「馬鹿! 聖女様って言えよ!!」


模擬戦の観戦に来た兵士の皆からアミリアに応援が飛ぶ、少し馴れ馴れしい感じに宰相がムッとする。


「ありがとう! さあ、いくわっよ!!」


――ガイン!!


振られた剣を受け止める、昨日より重くなっている剣によって重い音が響く。


「ひぇっ……すげぇ音……」


「アレを受け止める聖騎士様はバケモンかよ……」


「ぐぅ! 今の渾身の一撃だったのに!」


歯がゆそうにぎりっと苦い顔をする。


「無駄口叩かない! 剣だけじゃない! 魔法も合わせる!」


「わかってるわ! 『我の元に集え――アイスパイク!』」


半歩下がったアミリアの周囲に、細い氷の槍が現れる。


「くらいなさい!」


「ふっ!」


「んなぁ!?」


飛んでくる氷の槍を短剣で打ち払う。


「ほんと、何でもありねユウキは!」


「褒めても手は抜かないよ?」


「もう!」


そう言って足を高く蹴り上げる。砂が舞い上がり目潰しの様に土煙が起きる。


「ぺっぺっ! うへぇ砂が口に……」


「隙あり!」


土煙の中から口元にバンダナを巻いたアミリアが飛び出してくる。


――ガキンッ!


左手に持った短剣で受け止める。


「これでもダメなの!?」


「考えは良いけど、目くらましはもっと派手に行わないとね!」


「きゃぁ!」


目を瞑り剣の柄に仕込んだマグネシウムをで目くらましをする、そのままアミリアの剣を奪い放る。


「くっ! 『——生成!』」


剣を生成したアミリアはそのまま振り抜くが踏み込みが甘く届かない。


「はぁ!」


くるりと一回転して石剣せっけんを叩きつける、すると俺の剣とぶつかり砕け散る。


「っつ! 今!!」


石剣に残した魔力を操り破片を千〇桜の様に操る。


「いやぁ……これは防げるかな!?」


双剣に持ち替え片っ端から叩き落すが、流石に捌ききれなかった。


「そこまで!」


宰相さんがストップの合図をして止める、一撃俺に入った時点でこの模擬戦は終了となる。


「ありがとうございました! ふぅ……疲れたぁ~」


アミリアがその場にへたり込んだ、流石に疲れたのだろうそのまま寝っ転がった。


「今回の時間は3分15秒か、だいぶ早くなったね」


「うぅ……それでも3分切れない……」


「【潜在強化】のレベルが上がってる分、時間は確実に早くなってるよ?」


アミリアの前にしゃがみ込むと、起き上がって背中に乗って来る。


「ユウキぃ~後はお願いぃ~」


疲れたのか背中で寝息を立て始めるアミリア。


「聖女様は?」


馬を繋いできた宰相さんが戻って来た。


「寝ちゃいましたよ、流石にまだ慣れていないですからね」


「すみません、聖騎士殿……」


スキンヘッドの頭を下げ申し訳なさそうに謝り始める宰相さん。


「どうしたんですか?」


「いえ……聖女様は元々こういった荒事とは、関係無い育ちと聞きましたので……」


「あーそうですね、アミリアは『元』王女様ですから関係ないですし」


「『元』ですか?」


「あれ? 聞いて無かったんですか? アミリアの両親は今の国王に謀殺されたんですよ」


アミリアには悪いと思ったけど、遅かれ早かれバレる事だしな。


「んなっ……そうだったのですか、お労しや……」


「それも奪還するため。その内、軍の指揮とか覚えて貰う予定でしたから。良かったですよ」


「そうか……力になれるのなら私達も心が軽くなる」


気まずそうにだが少しうれしそうに笑う宰相、そういえば名前知らないんだよなぁ……皆、宰相閣下とか軍務宰相殿としか呼んでないんだよな。


「それじゃあ、アミリアを寝室に運んだあとは食事でも作りますか……」


「それでは、台所を使えるよう手配しておこう。そういえば聖騎士殿の作る料理に、料理長が興味津々だったぞ」


「あーそういえば昨日、めっちゃしつこかったから教える約束したんだった……」


アン〇ンマンみたいな顔の料理長を思い出して少し鬱になる。あの人粘着してくるんだよな……。

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― 新着の感想 ―
表現的に、灰猫の方が近い気がした。
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