|幕間|一方その頃
◇リリアーナside◇
「わくわく、ドキドキ」
突如学校を襲撃され捕らえられた私達と宝石獣の子供達。今は牢付きの馬車に乗せられ森を抜けていた。
「皆さん、大丈夫ですか?」
森を抜けるまで騒いでいた子供達も度重なる人攫いたちの脅しで大人しくなってしまっていた。
「僕たち、どうなるんですか……」
1人の宝石獣の男の子が聞いてくる、この中では年長者で落ち着きもある。
「大丈夫、少なくとも私達が手荒に扱われる事は無いわ、子供の宝石獣は宝石も小さいですから」
牢に押し込められるときに殴られた子供達が居るが、それも痣が出来る程度で命などを奪われた子はいない。
「心配しなくても大丈夫よ、私が居れば旦那様も居場所がわかるし。大人しく従っておきましょう、それに年長者の貴方が子供達をしっかり守らないとね」
その子の頭を撫でるとしっかりと頷いた。
(さて、私の魔法で、私自身も里人と認識させている、つまり里の催眠魔法は効かないけど私の魅了魔法は効くようね)
考えれるのは催眠魔法に対する魔道具が作られていてそれへの対抗が出来ているか。催眠魔法が効かない種族か、はたまたそれほどのレベルか……。
(ともかくカミナギ様はすぐに動いてくれますでしょうし、一応お父様にも連絡は飛ばした、このまま人攫いの拠点まで行けば末端まで調べれる良い機会だわ。それに囚われのお姫様なんて最高に憧れるシチュエーションだわ!)
内心ほくそ笑みながらリリアーナは優希の救出劇に思いを馳せる。
(それに、私が全員蹴散らすのは簡単ですが、子供達全体の防御となると非常に難しいですからね。血はたくさんいただきましたけど、いざという時まで隠しておきたいですからね)
自分ひとりならば少しくらいのダメージを受けても容易に倒せるが、他の子供達は皆子供である、それを考えるとやはり無理はしないでおくに越したことは無い。
(という訳でカミナギ様、お待ちしておりますわ♪)
この状況にウッキウキのリリアーナを、少し引いた目で見ている少年であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇ノクタールside◇
その知らせは突然だった。
「魔王様! 姫様より連絡が!!」
側近というか秘書が執務室に飛び込んで来た。
「どうした? 随分急いでいる様だが……」
「そ、それが!!」
出された書簡を見るとそこには『さと・しゅうげき・つれてかれる・だいじょうぶ』と血文字で書いてあった。
「姫さま!? 大丈夫なのでしょうか!?」
覗き込んでいた秘書が慌てる。
「大丈夫じゃないかなぁ~ ユウキ殿は妻より強いだろうし……」
「あの奥様よりですか!?」
秘書が顔を青くする。彼は一度、妻の逆鱗に触れ死にかけたもんなぁ……。
「まぁ、リリアーナは大丈夫だよ。それより、里には守りが減るだろうしこちらから支援を出そう、近衛はすぐ動けるだろうし任せよう。それと催眠魔法の陣を抜けるのには耐性持ちが必要だからシャリアを連れて行ってもらおう、彼女なら上書きも出来るからね」
「畏まりました、シャリア様次第ですが1時間以内には出発できるかと」
「わかった、頼むよ。あ、そうだ。聖女様にも確認して、行くというなら連れて行ってあげて、大急ぎで今朝帰って来たばかりだろうけどね」
「かしこまりました!」
そう言って秘書が慌てて出て行った。
「発生してから2日経っているだろうからもうユウキ殿たちは出発してしまっただろうが援護にはなるだろう」
大きく一つ伸びをして残りの仕事の山を見るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇アミリアside◇
――コンコン。
部屋で寛いでいるとノックの音がした、現在シアは疲れを落とす為お風呂に行っていて一人だ。
(シアだと、遠慮なく開けるし。城のメイドだとするとノックの回数が少ない)
ユウキが居ない今、私は一応警戒して武器を構える。
「聖女様、お休みの所すみません。私魔王様の秘書をやっている者です!」
声に聞き覚えがあったので扉を開ける。すると走って来たのか息が切れている。
「どうなさいましたか?」
「カミナギ様が向かわれた宝石獣の里が襲撃されてリリアーナ姫が攫われたとの連絡が入りました。カミナギ様の後詰めとして近衛が里に向かうのですが、魔王様が聖女様も行くならば同行させてあげる方が良いとおっしゃいまして。その確認をさせていただきたく存じます……」
「なにか凄く情報過多でしたが、要約するとユウキの所に向かうんですね?」
「そうなります」
「じゃあ行きますわ、シアは只今お風呂に行ってますのでメイドに伝えていただければ大丈夫かと」
「畏まりました、では手配をさせていただきます」
そう言うと秘書さんはまた走って行ってしまった。
「一体何が起きてるのよ……まぁユウキの事だから大丈夫でしょうけど……」
それでも顔が見たいので向かう事にする。
「さて、準備をしましょうか……」