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第44話:夜魔の女の子

すっかり子供達に捕まって囲まれながらお菓子をねだられる俺がセレーネとシスターに助けを求めると苦笑いをしながら歩いてきた。


「はいはーい、皆おにーさんが困ってるからはなれなさーい」


「「「「「はーい!」」」」」


「ユウキさん大丈夫ですか?」


「あはは……よじ登られたりすると流石に振りほどけないからね。止まるしか無かったよ……」


「ご苦労様です」


「これを毎日アミリア達はやってるのか、大変だな」


「私は身体が動かせるので好きですよ~遊ぶの」


「セレーネは元気だなぁ~」


「捕まるまでは村で、学校と畑と子供の面倒を見る位でしたから……」


「そっか……ここから一日の距離だし、明日にでも行こうか? セレーネの里に」


「えぇ!?」


「場合によっては、セレーネは追加で数日、里帰りしても良いんだよ? お城で働くことを報告をした方が良いし」


誘拐の件があり里には一応王城で保護をしている事は知らせてある、それに虹のセレーネ自体の貴重性がありこれ以降は城で職を用意して面倒を見ることになっていた。


「そうですね、それでしたらお言葉に甘えようかと……」


頬をかきながら苦笑いをするセレーネ、そんな話をしていたらいつの間にかフードを被った小さい子がこちらをみていた。


「じーっつ」


「えっと? どうしたのかな?」


怖がらせない様に目線の高さを合わせて話しかけるとその視線がセレーネと俺を交互に見比べる。


「おにーちゃんとセレーネおねーちゃんって夫婦?」


「クロコちゃん!? 一体何を!?」


セレーネが驚いたよう反応する、この子クロコちゃんって言うのか……


「だっておにーちゃんとセレーネおねーちゃんの空気が夫婦みたいったんだもん」


夫婦かぁ~そう言われるとは思わなかった。


「ななななな――」


壊れたおもちゃの様に『な』を繰り替えすセレーネ、うーん俺が否定するのもなぁ……。


「うーん、セレーネとは主従の関係で、俺が雇用主だからセレーネのお休みとかのお話をしてるんだ」


「ふーん……そうなんだ」


そう言うとクロコちゃんの姿が霧になって消える、魔力的に建物の中へ入った様だ。


「セレーネ? 大丈夫?」


「あばばあばっばばば……」


(ダメみたいだな、仕方ない……)


――――バチンッ!!


目の前で少し大きな音が出る様に手を叩く、するとセレーネの視点が定まった。


「セレーネ、大きい音出したけど大丈夫?」


「あっ、はい……大丈夫です、あれ? クロコちゃんは?」


「うーん、建物の中に行ったみたい、霧の様に消えて」


「彼女は夜魔ナイトゴーント半魔ハーフで暗い所が好きなんですよ」


「夜魔?」


「はい、サキュバスとは違って夜の活動がメインの魔族です、基本は大きな角があるんですが彼女は半魔なので角がちょこんとあるだけなんですよ、それに日差しが得意では無いのでどうしてもフードを被ってるんです」


「へぇーそうなんだ、面白いね」


「多分、日差しに当たりすぎて疲れたんだと思います、夕方になると元気になりますよ」


そう言ってニコニコと笑うセレーネ、それに合わせて鐘が鳴る。


「さて、それじゃあ巡回に戻りましょう!」


「そうだね、急がないと皆を困らせちゃう」


それからシスターに挨拶して、巡回に戻る。平民街を見ながら異常や問題が無いかを見て回る、詳しく調査に来るのはまた今度で良いだろう。


◇◆◇◆◇◆◇◆

「お疲れ様ですカミナギ様!」


特に問題の無かった巡回から戻ると、隊長さんがカチコチになっていた。


「どうしたんですか?」


「たっ、只今リリアーナ王女殿下が来訪されてまして!」


公務を終えたリリアーナが倒れた兵士たちを見に来たのだろう、まぁあの強さなら護衛はいらないだろうからふらっと来たんだろうな……。


「そうなんですね、お疲れ様です……」


「ユウキさん、報告終わりました!」


ガチガチになっている隊長さんに同情しているとセレーネが報告を終えて戻って来た。


「あれ? どうしたんですか?」


「今、リリアーナが来てるんだ」


「そうなんですね、それで皆さん緊張なさってたんですね」


「そうみたいだね」


そんな話をしていると奥の部屋からローブを持ったリリアーナが出てきた。


「カミナギ様! セレーネさん!」


タタっと飛び込んでくるのを支える、危ないなぁ……。


「危ないよ、リリアーナ」


「すみませんでした」


釘を刺されてシュンとなるリリアーナ、元気になってからそれなりに活発になっている。


「隊長さん、ありがとうございました」


「い、いえ! 私どももリリアーナ様にお声がけいただき恐悦至極でございましゅ!!」


噛んでる、噛んでる。


「それではカミナギ様、セレーネさん。帰りましょう!」


ローブを着たリリアーナに手を引かれる。


「えっと、ちょっと待ってね挨拶だけしちゃうから」


「はい、わかりましたわ」


そういって横にちょこんと控えるリリアーナ、ちゃっかりセレーネの隣を確保している。


「隊長さん、今日はありがとうございました」「ありがとうございました」


「いえいえ! こちらこそ大助かりでした!!」


「また、機会があれば街の見回りに参加させて下さい」


「はい! かしこまりました!!」


ビシッと直立不動で答える。


「それじゃあ今日はお疲れ様でした」


そう言って外に出ると兵士たちが整列していた。


「リリアーナ王女殿下! カミナギ様! セレーネさん! 本日はありがとうございました!!」


綺麗な礼を全員で合わせて道を作る、ヤ〇ザの子弟が並んでるみたいだ……。


「皆様も、元気で街を守って下さいね」


「今日はお疲れさまでした、色々と勉強になりました」


「また機会があればよろしくお願いします!」


そう言って俺達三人は詰所を後にした。



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