第25話:魔獣食レストラン
宿に到着した後、今日は階下のレストランで食事をしていた。
「むむむ、どれが何の料理かわからないな……」
「そうね。ねぇシャリアさん、これはどんな料理ですか?」
「これはコカトリスの卵と肉を使ったオムレツね」
「「「!?」」」
俺とアミリアとレナが驚く。
「コカッ!? 魔獣の肉ですか!?」
「えぇ、魔王領、特に南部は魔獣食が盛んな地域なのよ~」
「へぇ~」
「知らなかったわ……」
「私も食べることは中々ありませんね、魔獣肉もお祝いや神事の際にしか食べません」
セレーネが補足として言ってくれている、魔王領も地域によってやっぱり特色がでるんだなぁ……。
「それで、コカトリスってどんな魔獣なの? 俺の世界だと鶏と蛇を合わせた様な空想上の生き物なんだけど」
「そうねぇ……大きい鶏と言えばいいのかしら……」
「あ、でも蹴る力は凄く強いです」
「それで肉食ね」
「はい、子供の時に眠らないとコカトリスが食べに来るぞ~って言われました!」
と子供筆頭のレナちゃんが言う。
「正確には肉食なのだけど、人間や魔人は食べないわ。鼠型の魔獣が主なエサで麦の生産なんかをする農家にとっては必須な家畜ね」
「へぇ……猫みたいなものか」
「まぁ猫より俊敏性は無いですけどね……」
「そうね、でもお肉は締まっているし、脂の乗りも良い、卵も人間国の鶏卵よりも栄養価が高いのよ」
「栄養価の概念とかあるんだ……」
「なんとなくよ、滋養強壮にいいとか、食べたら元気になるとかの伝わりなのだから」
「「「へぇ……」」」
「ともかく、皆魔獣食はした事無いみたいだし、私が食べやすいものを頼んでいいかしら?」
「あぁ、頼んだ」
「「「お願いします」」」
そうしてベルでウェイターさんを呼びシャリアが色々と注文をする、何を言ってるかわからないけど『コカトリス』とか『バジリスク』とか『マンドレイク』とか出てくるんだけど……。
(なんだろう、俺の想像する生き物とは違うんだろうけど……凄く不安になる)
そうして30分程するといろいろな物が運ばれてきた。
・コカトリスのオムレツ
・バジリスクのステーキ
・レヴィアタンのムニエル
・マンドレイクのスープ
・サテュロスのサラダ
の5つが運ばれてきた。
オムレツはオムレツだな、ステーキは普通のステーキで玉ねぎみたいな野菜が上に乗ったシャリアピンステーキみたいだ。レヴィアタンに関しては白身魚のムニエルだしマンドレイクは黄色のポタージュ、サテュロスはもう肉すら無い。
「シャリア、これはどんな魔獣の何だ?」
「えっとね、コカトリスはさっき説明したじゃない、と言っても魔獣の肉を使ってるのはステーキとムニエルだけよ。バジリスクはコカトリスの対になる鶏でこちらは草食なの、サイズも人間領の鶏と同じサイズ。まぁ、原種は石化魔法を使うけど、家畜化された種だと魔法は使えないわね」
「へぇ、そうなんだ……って石化魔法って大丈夫なの?」
「大丈夫よ、受けても1週間くらいで自動に解ける魔法だし、今は解毒薬もあるわ」
「「「「へぇ~」」」」
俺達四人が感心する、やっぱりシャリアは幹部だけあって詳しんだな。
「それで、レヴィアタンね。これは海で獲れる大型魚の総称で。かなり大きな種類が獲れたら一律でレヴィアタンと呼ばれるわ、今回は白身魚だし、多分ホキかそこら辺よ」
「へぇ……じゃあカジキとかマグロもそう呼ばれるのかな?」
「そうね、良く知ってるじゃない」
「俺の世界にもマグロやカジキは居るからね、まぁこの世界と同じかどうかは分からないけど」
「それもそうね。それで、説明に戻るわね。次にマンドレイクは人間領でも見た事ある野菜だわ、わかるかしら?」
「あるのか……何だろう」
「どんなお野菜なんでしょうか……」
「「うーん」」
「ヒントは外は硬いけど中はこのスープの色と同じよ」
「あぁ、わかった」
「わかったけど、何でそう呼ばれているのか、わからないわね」
「「???」」
俺とアミリアは分かったけどレナとセレーネは分からない様だ。
「正解は『かぼちゃ』よ、魔王領でも大半の地域では『かぼちゃ』と呼ばれているけど昔の呼び方はマンドレイクなのよ」
「「「「へぇ~」」」」
「でも、どうしてその呼び名なんだ?」
「それはね、繁殖力よ……」
「「「???」」」「あっ……」
昔某漫画で見た蔓を切っても切っても伸ばしてくるのを思い出した。
「凄く増えるのよ、それこそ他の野菜の養分を吸い取るくらいね。それで農家が悲鳴をあげる事からマンドレイクの名前がついたのよ。それでサラダは魔獣のサテュロスが良く食べる野菜の総称ね、それを一括したサラダの事をサテュロスのサラダというのよ」
「そうなんだ……」
「勉強になりました」
「シャリアお姉様凄い物知りです!」
そうして一様に説明が終わり料理に手を付けようとする皆、それを止める。
「どうしたのよ?」
「何か嫌いな物でもありました?」
「好き嫌いは駄目だよ!」
「ねぇシャリア」
「何かしたら?」
「サテュロスって毒草を食べたりするの?」
「しないわよ? 魔人族も毒の耐性は高くないし、摂取したら死んでしまうもの」
「へぇ……じゃあなんでこのサラダに致死性の毒草が入ってるのかな?」
「「「「!?」」」」
皆が一様にフォークを手から離す。
「何だ……見破られちゃったのか……」
先程迄控えていたウェイターが、全身黒のローブを纏ったヤツに変わっていた。