第23話:魔王領到着
領都を出発した俺達は早速山道へ入っていた。
「レギル、進みはどう?」
「えぇ、好調ですよ。この様子なら昼過ぎには川に差し掛かれそうでっせ」
軽快に手綱を操りながらレギルは進める。
「それじゃあ川に着いたら昼食にしようか」
「わかりやした、後は任せて下せえ」
それを聞いて、一旦昨日出した優羽の家へ戻る。
すると、セレーネが出迎えてくれた。
「ご主人様、お帰りなさいませ。どうでしたか?」
「お昼は頃には到着できるみたい」
「そうなんですね、かしこまりました」
「アミリアは?」
「そうですね、相変わらず何か考え事をされています」
「そっか、じゃあ邪魔しない方が良さそうだね。他の皆は?」
「レナちゃんは今、私とシャリアさんと共にお昼ご飯の準備をしていますよ」
リビングを覗くと、頑張って餃子を作っている二人が居た。
「ただいま、二人共」
「お兄様! お帰りなさい!」
「お兄さんおかえり~」
二人共ニコニコと返してくる。
「結構作れたね」
「そうですね、全部で100個位はあるかと」
「それじゃあ俺も手伝うかな……」
「かしこまりました、私も作成に戻ります」
それから手を洗ってエプロンをして餃子を作る、そうして昼前には200個近い餃子が出来上がっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから馬車に戻り川へ到着した、大きな橋が架かっており距離も1キロ程の河川だ。
「おおきいなぁ……」
「そうですねぇ、この橋はこの代の魔王になってから架けられたモノなんですよ。今代の魔王は穏健派と聞きますし、公共事業もかなり行ってると聞きます」
「そうなんだ、でも何でそんな相手に戦争仕掛けてるの?」
「そりゃ、この国の王様は野心家ですから……先代国王を追い落としてからあたかも自分が継承権が正当と言ってますから」
「それで、良く民衆は納得したね」
「そりゃ国は発展しましたので、正直国民としては複雑ですよ」
「ふーん、そうなのか……」
「でも、そろそろ限界ですね」
「どうして?」
「いやぁ……もう10年も魔人族との戦争状態ですよ? 嫌になりますって。互いに大きく動いたら死者も増えますし。しかもここ2~3年は小競り合い、しかも王国側からの仕掛けばかりですよ」
「あれ? 先代が変わったのってどのくらい前?」
「確か11年前ですね、その後蟄居されたとか幽閉されたとかで、離れに家族丸々住んでいたとは聞いてますが。今から5年前に屋敷ごと火事で焼け落ちましてね。家族全員焼け死んだと言われてますよ」
「そうなんだ」
「あれ? でも聖女様の髪色って……」
(これ不味いかな?)
「髪色って……結構赤髪の人多いじゃん、それに彼女たちは10年位孤児をやってたみたいだし、辻褄が合わないんじゃない?」
取り敢えず取り繕いながら答えると「そうですね、勘違いですよね」と言って納得していた。
「さて、昼食にしようか、この橋を越えたら後は魔王領の最前線だよね?」
「ですね、あーあ……もう終わりかぁ~」
「あはは、まぁこの後来る保護した奴隷達の面倒も見てもらいたいし、まだ雇用期間はあるけどね」
「でも、旦那との旅は終わりですよねぇ~」
「そうだね、魔王領側の教会にも赴く予定だしね」
「それじゃあ、残り少ない、旦那飯楽しまないと!」
そう言ってレギルは馬車を止めて休憩の準備に入るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから家庭用のガスコンロじゃ、いっぺんに焼けないので向こうの家を空間収納にしまい、皆と転移してくる。
「『————クリエイトロック!』それから『——抽出』と『——生成』」
竈と鉄板と大きな蓋を作る、そしてその上に油を垂らし、家にあったお好み焼き用のヘラで薄く延ばす。
「それで、火を点けて、そしたら並べていく」
燃え過ぎないように火を調整して弱火にする。
「お湯をかけて、蓋をして、蒸し焼きにする」
皆が珍しそうに見ている。
「ん? どうした?」
「いや、ユウキさんの凄さに驚いてるとこです……」
「地面に鉄って本当にあるのかよ……」
「しかもそれを綺麗な形にしてるし……」
「お兄様凄い!」
「それに、油って言うとこの世界じゃ動物の油が基本なのよ、そんな綺麗な液体の油なんて見た事無いわ」
「原材料は何でしょうね……凄く黄金色で綺麗でしたけど」
「あぁ、それはね――」
そんな事を話しながら、昼食会を終えるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「それじゃあ、ここまでの無事を祝って!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
全員がグラスを打ち鳴らす、最後の中継地点である最前線の街までやって来た俺達は。最後の日という事で、空き家を借りてパーティをしていた。
「いやーこの数日でここまで来るなんてほんと強行軍だったわぁ~」
「あはは、ありがとうございます」
「いやいや、良いもの見れたし、本当にこの依頼受けて良かったよ」
「そう言ってもらえるなら良かったです」
「それにしても、良かったのか? こんな上等な酒を……」
そう言ってレギルはシャンパンを呷る。
「えぇ、大丈夫ですよ、これ位ならまだあるので」
「っぷはぁ! ならじゃんじゃん飲ませて貰うわ!」
そう言って次々と呷るレギル。まぁ仕方ない、この依頼中いつも飲む量の半分以下に抑えていてくれたらしいし。
それにしても、料理をどんどん作らいないとな……。
皆の声が楽しく響いている、それをBGMに揚げ物を揚げていく。
「ご主人様、お手伝いしますね」
「セレーネ、楽しんでて良いのに」
「いえ、ご主人様にお任せしてたら奴隷の名折れですので!」
「それに、主役のお二人のペースが速いので、急がないと潰れてしまいますからね♪」
「そうだった、料理を食べる前に潰れられても困るな」
「はい、なのでお手伝いしますね!」
「わかった、任せるよ」