第21話:カレーと優希の決意
カレーを煮詰めてからおおよそ2時間、土鍋で炊いたご飯も出来上がり夕食の時間となった。
「皆~おまたせ~」
「全く、遅いじゃないの、すぐ出来ると思ったのに……」
「あはは……ゴメンゴメン」
「お兄様、お腹が空きましたわ!」
「ご主人様、その器は?」
皆の視線が土鍋へ注目する。
「あぁ、これはご飯だね。多分この世界じゃかなり珍しいか、存在しないよ」
「へぇ~お兄さんの世界の食べ物なんだ~でもなんか……」
「白いわね」
「白だな」
シャリア達が覗き込む、そこには蒸らし終え、艶々したお米が鎮座している。
「あぁ、これは少し甘みもあって、そのままでも食べれるんだけど。食べてみる?」
「それじゃあ……」
その言葉に皆が頷く。
しゃもじで少しづづ取って皆の手の上に一口大で乗せる、そしてそのまま食べていく。
「あっ、ほんとだ少し甘い」
「そうねぇ、もちっとした感じで案外いけるわね」
「まぁ、でも味が薄いよなぁ……」
「うんうん」
「「美味しいです! お兄様(ご主人様)!」」
良かった、上手に炊けてたみたいだ、ありがとう春華……。
「それじゃあ、このご飯に。カレーをかけよう」
カレー入り寸胴鍋を空間収納から出して鍋敷きの上に置く、小さめだがそれなりに圧迫感がある。
「うっ……この匂いだ、腹が空いて空いてたまらなくなる匂いは……」
レギルが真っ先に反応する。
「そうですねぇ~ここまで美味しそうな匂いは初めてです」
セレーネも鼻をひくひくさせながら匂いを嗅いでいる。
「これって南国の方にあるスパイスを使った料理よね?」
「へぇ~こっちの世界にも、似た様な料理があるんだね」
「まぁここまで色が濃くないし、色々な野菜が煮込まれてたりどろっとはしてないわね」
「へぇ~スープカレーみたいなもんか……」
「スープというからにはもっとサラサラよね? だったらそれに近いわ」
シャリアはこっちの世界のカレーも知ってるらしいので、後で違いを聞いてみよう。
「うおっ……レナ、よだれよだれ」
いつの間にか涎が垂れているレナの口元を拭く、そうしていると隣から「くぅ~」っと可愛らしい音がした。
「!?!?!!!」
アミリアが慌ててお腹を押さえて顔を赤くしている。
「ゴメンゴメン、そろそろ食べようか」
お皿を綺麗にしてペーパータオルで拭く、紙と言ったら皆卒倒しかけてたけど。君らがトイレで使ってるトイレットペーパーも紙と教えると悲鳴を上げていた。
「それじゃあ、いただきます!」
「「「「「イタダキマス!」」」」」
いつの間にか流行った『いただきます』をして食べ始める。
「「「「「!?」」」」」
「「「「「うっまぁああああああ!!」」」」」
「なにこれ! 凄く美味しいわ!」
「何ですかこれ! こんなの食べた事無いです!」
「昔食べたのとは違って、かなり美味しいわ」
「旦那ぁ! これ美味すぎますよ!!」
「何なのこの美味しさ……」
「おいし~♪」
どうやら気に入ってくれた様だ、異世界の人ってカレー好きだよね。
と思ってる間に皆がおかわりを要求してくる。
「俺の分、残るかな?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
うん、残らなかった!
仕方ないので日本から持ち込んだ食事を食べている。
「あ、ユウキ……」
お風呂上りだろうか、パジャマに着替えたアミリアがやって来た。
「ゴメン、私達が食べ過ぎたからだよね……」
「ん? あぁ、大丈夫だよ元の世界に帰れれば食べれるし」
そう言うとアミリアが悲しそうな顔をする。
「大丈夫だよ、世界は渡れるし、今度はアミリアとレナを日本へ招待するから」
「うん……楽しみ……」
そうは言うが、体育座りのまま下を向いている。
「ねぇ……ユウキ……」
「ん? どうした?」
「やっぱり、私……」
「うん」
「ううん、何でもない! ゴメン!」
顔を上げたアミリアはいつもの表情に戻っていた。
「そっか、じゃあこれ食べるか?」
棒アイスを差し出して聞いてみる。
「これは?」
「アイスって言って。冷たいお菓子だよ、俺達の世界じゃお風呂上りとかに食べるんだ」
「へぇ~これは、どうやって食べるの?」
「ちょっと待っててね」
袋を開けてアイスの棒側を差し出す。
「この棒を持って食べるんだ。舐めても良いし、齧ってもいいよ。ただ棒は食べれないからね」
「わかったわ。ん~美味しい!」
そして俺も食べ終えるとゴミはまとめて空間収納に入れる。
「それじゃあ、俺も風呂入ってくるか」
「あ、うん……先に寝るわね」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
そう言って俺は風呂へ向かった。
湯船に浸かり天井を見る。
「流石に嫌だろうなぁ……」
今回の旅の為に立てた目的を思い返す。
「でも、これがアミリアの望んでる事だもんなぁ……」
俺は近い内に帰るつもりだし、その為の動きをずっとしている。
「アミリア達とは違う道を歩むんだから……」
《《友達》》として、彼女達が安全・安心して暮らす為に、やる事をやらないとな。
そうして湯船から出て着替え、割り当てた自分の部屋へ向かった。