|章間|①:春華の想い
今回から章間の投稿です!
計4話ありますのでお楽しみに!
◇小鳥遊 春華side◇
ダンジョンで優希さんに助けられた日、私達は検査入院として綴さんの運転する車で病院ヘ向かっていた。
「災難だったね、三人とも」
「はい、死ぬかと思いました」
「ねー、ゴブリンに囲まれたり銀色のハイオーガ?に襲われたりヤバかったよ……」
「ゴメンね私だけ安全なとこに居て……」
「良いんだよ巴ちゃんは! 落とし穴に落ちちゃったのは偶然なんだし、助けを呼んでくれなかったら私達今頃ここに居なかったんだから!」
「そーだよ、巴ちゃんがいたから優希おにーちゃんが来てくれたし!」
「春華ちゃん、冬華ちゃん……」
大きく開いた目から涙がこぼれる巴ちゃん、親友に心配をかけてしまった事、生きて会えた事、そして優希さんのお陰でこうして無事で居られることに感謝だ。
「そういえば綴おねーさん、あのゴブリンが大量に出て来た部屋は何だったの?」
「あれはモンスターハウスと呼ばれる入ると大量にモンスターが出て来る不思議なトラップでね。初級ダンジョンに出る事はほぼ無いと思ってもらってもいい代物だけどね」
「へぇ……」
「そうなんですね……」
「二人共、平然としてるけど本当は非常に不味かったのよ。アメリカだと特殊部隊員1個小隊が中級ダンジョンで発生したモンスターハウスで全滅しちゃったのよ、その時はリザードマンっていう銃も効かない人型トカゲのモンスターだったのもあって悲惨だったのよ」
そう言う綴さんの発言に私たちの顔が青ざめていく……もしかしたら私達はとっても運が良かったんだと改めて思った。
「でも優希君が二人を助けてくれて本当に助かったよ」
「でも……綴さん、優希さんを止めようとしてましたよね?」
「うっ……私も一応立場があったし……」
「そういえば、優希おにーさんは大丈夫かな……」
「綴さん! 優希さんは大丈夫なんですか!?」
助かった事に安堵していたが、優希さんはいつの間にか運ばれて行ってたんだ、虫のいい話ではあるがあの人は大丈夫なのだろうか……。
「あー、出発前には連絡が来てなかったわね……次のSAで休憩をするからその時に連絡してみるわ」
「はい……」
「大丈夫かな……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それからサービスエリアに着いた私達は休憩に向かう、ジャージ姿の私は目立ってしまったけど、食事の間も優希さんの事が心配で仕方なかった。
「ほら、皆。夜ご飯しっかり食べないとお腹すいちゃうよ」
「「「はい……」」」
私達三人の顔色は暗い、食欲も湧かない位だ。
――ピコンッ。
綴さんのスマホから通知音が鳴るスマホを見る綴さんが息を吐く。
「さっき、搬送した病院から連絡が来たけど山場は越えたって意識も戻ってるし危険はないそうよ」
「「「!!!!」」」
「よかったぁ……」
「うん……うん……」
「良かったですっ……」
――くぅ~。
安堵したのも束の間私達のお腹が鳴る、皆で笑い合って夕食に手を付けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから車に乗り再度出発する、その道中で綴さんにまた連絡が入った。
「そう……そうなのね……ありがとう……」
そして、電話を切ると、沈痛な面持ちで私達に声を掛けて来た。
「春華ちゃん、冬華ちゃん……巴ちゃんは……寝ちゃってるわね……」
「どうかしたんですか?」
「少し、重要な事の連絡が来てね……皆にも共有しようと思ったのよ……」
「巴ちゃん起こす?」
「大丈夫よ、とりあえず二人共聞いてね……」
「「はい……」」
沈痛そうな顔の綴さんが口を開いた。
「優希君なんだけどね、一命は取り留めたわ。でも、全身のほとんどの骨が砕けたり、折れたりしてて回復までには凄く時間がかかるそうなの、もしかしたら〝数年〟はかかるかもしれない……そう今お医者様から言われたの。探索者としてはもう絶望的よ……」
その言葉に私は頭を殴られた様な衝撃を受けた、それと同時に身体から血が抜けていくような感覚に陥る、隣を見ると冬華も顔を真っ青にして涙を目に溜めている。
「かっ、可能性はゼロじゃないし、手術をすれば通常の生活は出来るようにはなるらしいわ!」
「うぅ……」
「でもぉ……」
先程まで浮かれていた自分を殴りたくなった、それはそうだ、あれだけの強敵の一撃を受けていたんだ生きている方が奇跡だろう。
「それと、貴女達も異常がないかこれから数日検査入院なんだからね、御両親には連絡はしてあるけど、明日には来るそうよ」
今回の事を両親に話そう、そして私は優希さんを生涯支える存在になろう、それが私の出来る事だ。
「わかりました。ほら冬華、涙を拭いて」
冬華の涙を拭う、冬華が気にしない様にしなければ。
「病院までまだ長いわ……二人とも眠るなら寝てていいわよ、巴ちゃんはもう寝てるし。何かあったら言ってね」
渋滞に引っ掛かってしまい動かない車内で綴さんが言う、ナビも後1時間と示している。
ずっと静かだと思ってた巴ちゃんは早々に落ちてたらしく、よだれがおっぱいの上に垂れていて染みを作っていた。
「優希さん……」
私達を命がけで守ってくれた人だ、私は出来るだけの事をしたい。
そう思い、出来る事を考えているとすぐに眠気が襲ってきたのだった。
作者です!
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