第1話:襲撃者の正体
飛び出した姉妹を追いかけ、スラム街を一定の距離を保ちながら走る。
『——探知』
(おおう……こんなにも簡単に引っかかるのか……)
姉妹と俺の周囲を囲むように10人程の相手が動いている、恐らく毒の効きを遠目に観察してた様だ。
(姉が言ってた様に、死にかけた所に恩を売る予定だったんだろうな……)
すると限界を迎えたのか足が止まる、病み上がりで500m近くも走ったのか。
「はぁーー! はぁーー!」「ふぅーーふぅーー……」
「いやー早いね……アミリアちゃんもレナちゃんも」
「!?」「あっ、おにーさん!」
レナちゃんがこちらにやって来る、それを抱き上げて姉の方へ歩く。
「どうして私の名前を……レナ! そいつから離れろ!!」
宝飾の施されたナイフを構え、戦闘態勢を取るアミリア。
「レナちゃんコレをぎゅーっと握ってお姉ちゃんと一緒に居てね」
空間収納から防御魔法の魔道具を取り出し手渡す。
「わかった!」
「アミリアちゃん、今から敵が来るだろうからレナちゃんから離れないで、それと怖かったら目を瞑ってていいよ」
「んな!?」
その瞬間、背後からナイフが飛んできた。
――カキンッ!
「ひぃ!」「きゃぁ!」
まぁ防御魔法に弾かれて届かないんだけどね……。
すると背後に8人程降りてきた、後の二人には逃げれる位置か。
「そこのお前、そのガキ達から離れろ」
全身黒づくめにフードとマスクか……。
「はいはい」
レナちゃんを置いて離れる。
「護衛ってわけでもなさそうだし……この子達の生活水に毒を混ぜた連中か」
「「「「「!?」」」」」
なんで驚くのさ……このタイミングでしかけてきたらバレバレでしょ……。
「とりあえず、リーダのブリッドさん? 知ってる事吐いてもらうよ!」
身体強化を施した体で最後尾の二人の首を落とす。
「先ずは二人……」
その後追加で二人の頭を持って叩きつけ気絶させる。
そこまで行くと相手も反応したのか飛びずさり様子を伺う。
「今なら先着で2名生かしてあげるけど、誰にする?」
そう言うと、目を血走らせた二人がナイフを構えて突っ込んでくる。
「仕方ないなぁ……情報聞くのは奥の二人で良いか……」
1人目にカウンターを入れてナイフを奪い二人目の喉元に突き立てる。
「ごぼっ……」
仰け反る一人目を空間収納から出した剣で両断する。
そのままリーダーを蹴り飛ばし、もう一人を抑え込み締め落とす。
「さて……後はお前だけだな……」
「何なんだ貴様……こんな手練れ知らんぞ……」
「そりゃ知らないよ? だってついさっきこの世界じゃ無いとこから呼ばれたんだから……」
「!?」
「おっ、その反応何か知ってるみたいだね?」
「という事は、国か宗教のお偉いさんか……」
「な、何も知らない!!」
「とは言っても、もうバレてるんだけどね、教皇庁の暗殺集団かぁ……」
「!?」
「こうなったら!」
瓶を取り出して呷る、すると途端に苦しみ始めた。
「はぁ……『——復元』」
ヒールで治療する、青酸カリとかみたいな化学反応を続けられるものじゃなくて良かった。
「どう……して……」
恨めしそうな顔でこちらを見て来る。
「いやだってね、情報源なんだから殺したら駄目でしょ?」
「クソッ……」
そう言って五体投地をするブリッド。
「あ、そうそう。監視してた奴の位置は分かってるからね」
「!?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
その後、逃げる監視役を始末して、拘束したブリッドの所へ戻って来る。
「さて、それじゃあ質問だ、勇者召喚を主導したのは国か? 教皇か?」
「………………」
「喋らなくても良いんだよ? でも貴方が喋らなくても他の人は喋るし、貴方の頑張りは無駄になるんだ」
「…………っつ」
「まぁ良いか、それじゃあ他の人に聞くよ、どの道任務に失敗してるんだしほっといても死ぬんだから……」
そこまで言うと、決心がついたのか大きく息を吐いた。
「わかった全部話そう!」
そうして、二人を狙う理由と、召喚をした理由等諸々聞きいてたら夜になっていた。
起きてきたもう一人も別の場所で脅すとペラペラと喋ってくれた。
「大体わかった、拘束も外すから好きに逃げていいよ」
そう言って二人を逃がすと、姉妹の元へ向かった。
「お待たせ、それじゃあ家に戻ろうか」
「「は、はい……」」
二人は背筋を伸ばして視線を逸らしていた。
「あはは……流石に怖がらせすぎたかも……」
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◇???side◇
「あぁ!!! やってしまった……」
水晶球で勇者たちを見ていた者が悲鳴を上げた。
「やばい……ランダムで召喚の選定をしたらリソースが全部《《あの人》》にもってかれてる!?」
「いやまぁ……あの三人は《《一応》》勇者候補な訳だし……加護は与えてるから大丈夫だと……思う」
「しかしなんでもう優希《あの人》を追放しちゃうんだよおぉぉ!!」
そんな悲痛な叫びが空間に反響するのであった……。