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クリスマス特別編:サンタさんは誰? 後編

大神さんに話を付けた翌日、学校終りに皆の手紙に書かれたプレゼントを買いに来た。


「えっと先ずは簡単な、すずめちゃんの物からにしよう」


三人の欲しいものが書かれたメモを見る。


「えっと……なんだこれ……」


どうやらレジンと呼ばれる、樹脂を使ったアクセサリー作製キットらしい。


「しかし……売り場に行ってもわからん」


「あっ、すみません」


通りがかった店員さんへ相談すると、どうやらこのお店では売り切れの様だった。


「人気商品なんだな、まぁ何店舗か回ればあるでしょ?」


――3時間後——


「無い……どこ探しても無い……」


恐らく周辺のお店を全部回ったのだがどこも無いとの事だ。


こうなったら……県外まで飛ぶか……。


――更に4時間後——

「やっと……あった……」


最後と決めた店舗で何とかあったが……すっかり暗くなってしまった。


「帰りは転移だから良かったな……」


そうして転移で自宅へ戻り、今日のプレゼント回収は終わった。



◇◆◇◆◇◆◇◆

そして翌日、今回のプレゼント探しはユキの番だ。


「しっかし、グランドドラゴンの黄玉鱗って……」


グランドドラゴンは背中に植物や土が盛られた竜種で下級と中級の間の龍だ。温厚な性格なのだが……兎に角、見つからない事で有名なのだ、それもあってかその鱗はかなりの希少素材なのだ。


「先ずは……劉英リーエンさんのとこへ行こうか」


劉英さんなら何かしら情報を持ってるはずだ。


山と湖の港を交易路とした劉英さんの領地はアストラ、ドクリンに面した地でかなり活気がある。


「よっと……」


飛翔魔法を解除して、劉英さんの屋敷の前に到着する。


「こんにちは~劉英さん居ますか?」


門番の人に声を掛けると凄く怪訝な顔をされた。そりゃそうだ、相手は俺が誰だか知らないもんな。


「えっと、恐らく名のある武人なのだろう、龍頭リョウズウ伯爵への挑戦はかなりの順番待ちで……「いったぁ!!」」


「すみませんすみません!! コイツ最近田舎から出てきたばかりの新人で!!」


唐突に走って来た先輩らしき人に、応対してくれてた門番の方は殴られ。年季のはいった鎧の門番さんに頭を下げられる。


「痛いですよ先輩! この人誰なんです?」


「ばっかお前!! この人は勇者様だぞ!!」


そう言った途端新人の門番の顔が青くなる。


「すすす、すみませんでしたああぁぁぁぁぁ!!」


「いやいや、こちらこそすみません、家章かしょうが入った魔法鎧を今日はおいて来てしまったので……」


家章というのは異世界でいう家紋の事だ、この世界は紋章で刻まれるので家の紋章つまり家章というのだ。


「龍頭様をお呼びして来るから、お前は使用人メイドを呼んでくれ」


「はいぃ!!」


と言って先輩門番は裏手の訓練場へ、若手の門番は詰め所で魔道具を操作している。


すると、しばらくして竜人のメイドさんがやって来た。


「カミナギ様、私がご案内させていただきます」


一礼して案内される、客間に通されてから物の五分程で劉英さんが入ってきた。


「すまないな、待たせた」


「いえいえ、それでなんですが……」


経緯を説明すると劉英さんは分かったと言って、バルコニーの扉を開けた。


「ついてこい!」


飛び立った劉英さんに続き俺も飛翔魔法で飛ぶ。


おおよそ2時間程飛んだところで、大きな山の麓へ到着した。


「———————」


竜語と言われる独特の言語?で話始める。角から特殊な魔力を出すことで竜同士の会話が可能らしい。


「—————」


すると、地響きが鳴り目の前の山が上に上がる。


「え?ええぇぇぇぇぇぇ!?」


昔見たのは凄く小さかったのか……俺の想像の100倍の大きさのグランドドラゴンが顔を出した。


『すまない、人の勇者よ。驚かせたな』


え?これって……。


『声に魔力を乗せながら喋れば通じるぞ』


『あっあ~っつ』


『おお、上手いのぅ。それでお主、ワシの黄玉鱗が欲しいのじゃったな?』


『えぇ、でも黄玉鱗って、どこの鱗何ですか?』


そう聞くとグランドドラゴンが首を持ち上げる。


『ここの首元の鱗じゃよ、人の言い方で【逆鱗】と呼ばれる奴じゃ』


言った場所に一際綺麗な円形の鱗があった、まるで宝玉の様な綺麗さだ。


『普段ならやらんのじゃが、お主が真龍様の傷を治せるほどの回復の使い手らしいからのう、治してくれるならやっても良いかと思ったのじゃよ』


『わかりました! 絶対綺麗に直しますね!!』


『わかった、あまり痛くしないでくれよ』


そう言ってサクッと取らせてもらい復元魔法で傷を癒す、それから色んな所を回復魔法で治して、ユキのプレゼントは調達できた。


でも、何に使うのかな?


◇◆◇◆◇◆◇◆

そして最後は、優羽ゆわのプレゼントだ。


「うーん……実はこういうの、あまり得意じゃないんだけどね……頑張るか……」


とあるお店の中へ入って行く。


◇◆◇◆◇◆◇◆

そしてクリスマスの日になった。


「「「「「メリークリスマス!!」」」」」


クラッカーの音が鳴り響きシャンパンやシャンメリーで乾杯をする。


「さあ皆! 食べて下さい!」


今日の料理は春華とメアリーそれと綿貫さんの合作だ。


「わぁ!!おいしそう!!」と喜びを体いっぱいで表すすずめちゃん。


「良いのでしょうか……」少々困惑しながらおずおずと食事に手を伸ばすユキ。


「いただきます……」相変わらず暗い顔をしている優羽。


それから皆からのプレゼント争奪戦ビンゴなどが終わり準備が整った。


————バツン。


ふと落ちるブレーカー、そして窓の外から流れる鈴の音。


そして三人にカーテンを開けさせると、そこにはサンタクロースに扮した大神さんが居た。宙に浮いて、しかも後ろには本物のトナカイがソリを引いている。


「やあやあ、皆今年一年いい子にしてたかい?」



「「はい!」」と目をキラキラさせながら答える二人。



「…………」今までの事が引っかかっているのであろう、優羽は俯いたままだ。


「そうかそうか、三人ともいい子にしてたんだな! じゃあこれはサンタからのプレゼントだ」


ラッピングされたおもちゃが出てきて、手渡される。


「ありがとうございましゅ!」


元気に答えるすずめちゃん。


「あっ、ありがとうございます」


物凄い大きさに首をかしげるユキ。


そうして最後、優羽の前に立ったサンタが優羽に声を掛ける。


「これは君のお父さんが一生懸命作ったものだ、本当ならばお父さんから渡してもらうのが良いのだろうけどね、どうしてもサンタさんからと頼み込まれてしまってね」


驚いた顔でこちらと手の中のプレゼントを見る優羽。


「もし良かったら見てあげなさい」


袋を開けた優羽が不格好なテディベアを取り出す。


「………うぐっ………あり………がとう、ござい………ます………」


「あぁ、でもその気持ちはお父さんに直接伝えると良い」


そう言って大神さんが優羽から順に頭を撫でる。


「それでは、他の所にも行かなきゃいけないからね! ハイヤッ」


そう言ってソリを走り出させ空へ消えて行った。


というか、あのトナカイは何なんだろう……赤鼻だったし……。


そんな事を考えていると、優羽に袖を引かれた。


「おどうざん………ありがどう………」


「ごめんな、こうゆう芸術系は苦手だから、不格好になっちゃった」


「ううん、すごくうれじい……」


「そっか、ありがとうな」


泣き続ける優しく優羽を抱きしめてると、いつの間にか寝息が聞こえてきた。


「優羽を寝かせてくるね」


そう言って俺はリビングから出て寝室へ向かった。

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