第58話:未来視の少女①
その少女の病室に入ると、物が飛んでくる、それを受け止めながら少女を見ると驚いた顔をしていた。
「危ないなぁ……物は投げちゃだめだよ」
「あんた何者……ってその顔……」
俺の顔をまじまじと見ると、目を見開いて驚いている。
「そういえばあのタンカーに居た子か……」
鑑定で見ると吐き気を催すような情報が見て取れた。
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名前: 性別:女 年齢:9
状態:多数の精神疾患、多数の病気有、軽度の衰弱 ジョブ:予言師
備考:未来視を所有、幼い頃より親から暴行。
及び強制買春をさせられていた。
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「初めまして、俺は上凪 優希。会うのは2度目かな?」
「三度目です……」
「あ、そうか。あのタンカーから連れてかれてるから3回か」
「はい……」
「それで、君は治療を拒んでいると聞いたんだけど……理由を聞いていいかな?」
「それは……」
次の言葉が出ないのか俯いてしまう女の子。
「うん、いきなりは失礼だったね……そうだ、ケーキがあるんだけど食べる?」
「は? ケーキなんてどこn!?」
少女の寝ているベッドに近づき、空間収納からケーキとお皿をテーブルへ取り出す。
「!?!?!?!?!?」
滅茶苦茶驚き、目を白黒しながら。ケーキの出た空間を手で触ってる。
「あはは……手品みたいなもんだよ、それで食べるかい?」
その瞬間女の子のお腹が、小さく鳴った。
「————っつ!! 食べます……」
「そっかそっか、それじゃあ……おぉ~さすが巴ちゃんのケーキ、美味しそうだな」
中には少し早いけど、ブッシュドノエルが入っていた。
「どうしようか……ここはでっかく半分くらい行っちゃう?」
「いいの!?」
そう少女に聞くと目を輝かせて答えてくれた、甘いもの万歳。
大きく半分に切ったブッシュドノエルを少女の前に置く。
「飲み物は? コーラにサイダー、紅茶に緑茶。カフェオレとかもあるよ?」
「じゃ、じゃあサイダーで……」
「わかった、それじゃあ美味しくなる魔法をかけよう」
そう言いながら回復魔法を混ぜていく。
「おいしくなーれ、おいしくなーれ、ほら君も一緒に」
「おっ、おいしくなーれ、おいしくなーれ」
ちょっと派手目に光らせると目を輝かせる。
「じゃあ、魔法のサイダーから飲んでね」
そう言うと少女はコップのサイダーを一息に飲んでしまった。
「————けぷっ」
そうし小さく息を吐いてコップを置き、ケーキを食べ始める。
「うぅ……ぐすっ……」
ケーキなんてめったに食べれる事は無かったのだろう、少女は泣きながらケーキを食べている。
そうしているうちに食べきった少女は、お腹いっぱいになったのか眠ってしまった。
「さて……話にいかないと、って……無理か……」
いつの間にか握られてしまった裾を見ながら、耀へメッセージを送る。
するとすぐに、静かに病室へ入って来た耀と看護師さんにケーキを食べた事を伝えると驚いた顔をされた。
そうして、俺はグループチャットに帰れない理由を伝えると、返信のスタンプまみれになった。
「さて……先に身体の傷を治しておくか……ヒール」
回復魔法と復元魔法で少女の体を治療していく、鑑定を交えながら使っていく。
「よし、終わり。ん?」
いつの間にか少女が目を覚まし、こちらを見ていた。
「起こしちゃった?」
「体が……痛くない?」
不思議そうに首を傾げる、というか今まで我慢してたのか……。
「そっか……今まで頑張ったね……」
「!?」
いつもの調子で頭を撫でると一瞬身構えられてたが、受け入れてくれた様でそのまま撫でられている。
「眠れそう?」
「眠くないので……無理、です……」
「そっか……それなら……」
女の子をブランケットに包み抱き上げ、そのまま窓から身を投げる。
「$%&▵◕☤♴⚄✳❉❨✩❍❪➭!?」
そのまま飛翔魔法を発動しつつ、温度調節の魔法で寒くない様にする。
「大丈夫だよ、目を開けて」
そうしてぎゅっと瞑っていた目が見開かれ驚きに代わる。
「わぁ!!」
まだ早い時間なのもあって、東京の街は星が散りばめられたような明るさだ。
「まだ、信頼できないかもしれない、でも何かあったら言って欲しいな今までの事。そうしたら必ず力になるよ」
返事は無かったけど、顔を見ればあんまり心配は無さそうだ。
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それから深夜、家に帰ると耀と巴ちゃんが起きて待っていた。
「おかえり~」
「それで……どうでした?」
少女の事を話すと、二人共怒りと嫌悪感を表した顔をしている。
「それで、巴ちゃん」
「はい、わかりました。調べます」
「ありがとう、また明日行ってみるよ」
「わかったわ、それじゃあ明日は夕飯のお弁当届けるわね」
「ありがとう、小っちゃい子だから可愛い弁当が良いんだけど……俺はほら……」
「あー、優希の美術の成績は、うん……」
俺がキャラ弁を作ると、モンスター弁当になるからなぁ……任せるしかない。