第56話:クラスメイトは欲望まみれ。
鳳さんに連れられ各々のクラスへ別れる、先に小鳥遊姉妹の一年生の教室へ。ちなみに鈴香は先に神楽組の皆と教室へ向かった。
そろそろ~っと教室内へ入って行く春華と「おっはよー」っと元気に突入していく冬華、中から女子たちの「おかえりー」の声と共にきゃあきゃあという声が聞こえる。
「大丈夫そうですね、それじゃあ行きましょうか」
「そうですね」
そうして2年生の教室へ到着し中へ入る。
「「「「「「…………」」」」」」
皆、目が点になっている。
「えっと……お久しぶり?」
「ほら優希、後がつっかえてる!」
「ここが、ユウキ様の教室なんですね」
「ん、早く座りたい……」
室内に入って来たエアリス達に、教室の皆が目を奪われる。
「皆、今日から上凪君と水城さんが復学して、リーベルンシュタインさんとエンバレンスさんが通うので……まさか聞いていないのですか?」
視線を向けられた手前に居た女子が頷く。
「はぁ~~~~~~~~蔵間先生は…………」
頭を抱える鳳さん、ご愁傷様です……。
その直後チャイムが鳴り蔵間先生が入って来る。
「お~いお前ら~席に座れ~それと今日は復学と編入生が来るか……もう来てたか……」
「蔵間先生ぃぃ!」
「おう。鳳か、早く教室に戻らないと遅刻になるぞ?」
「私は、上凪さん達の案内を任されてるので大丈夫です! それより上凪さん達の事、クラスの皆さんに伝えて無かったんですか!?」
そう言われてクラスの人(先程も鳳さんに質問されていた女子)に蔵間先生も聞く。
「え? 俺伝えて無かった?」
女子が頷く。
「そうか……すまんかった、とゆう事でこのまま自己紹介に移るか……」
「はぁ……もういいです、上凪さん放課後迎えに来ますね」
こめかみを抑えながら、申し訳なさそうに言う鳳さん。
「わかりました待ってます」
「では、失礼します」
綺麗なお辞儀をして出ていく鳳さん、それを見送って蔵間先生が話し始める。
「それじゃー一限は俺の授業だし、このままショートホームルームを延長して上凪達の自己紹介なんかをしようか」
「えぇ……」
「なんだ、上凪不満か?」
「授業の進行は大丈夫なんですか?」
「問題ない、俺の授業はもうかなり進んでるとこやってるからな。心配するな」
だからこの人の担当教科のみ、課題が多かったのか……。
「わかりました、それじゃあ――――」
◇◆◇◆◇◆◇◆
程なく自己紹介を終えた俺達は、用意してあった席へ座り授業を受ける。
相変わらず説明は上手いし、板書も綺麗だ、しかも滅茶苦茶わかりやすい。
「—————♫♪♫♪——」
「おっ、終わりか……それじゃあな」
そう言って、そそくさと教室から出て行った。
そして教室に漂う微妙な空気……チラチラとこちらを見て来るけど話しかけては来ない。
「えっと……上凪さん? 上凪君? どっちで呼べばいいかな?」
そう思っていると前髪にオレンジ色のインナーカラーが入った男子が話しかけてきた。
「あぁすまない……こんなナリだけど一応このクラスの男子委員長をやらして貰っている矢吹だ、よろしく」
「よろしく、呼び方は……どっちでも良いですよ」
「そうか、それなら上凪君で行かせてもらおう、それと敬語も不要だ」
「わかった、よろしく矢吹君」
軽く握手すると、矢吹君はにこっと笑う。
「それで、皆がそわそわしてるから聞いてしまうんだが……君はあの話題になりまくった上凪君で良いのかい?」
「その話題の内容を聞くのも怖いんだけど……多分皆が思ってる上凪優希は俺だよ」
「そうか……ならば聞きたい……あの子達全員が君の奥さんなのは本当なのか?」
「「「「「「ゴクリ……」」」」」」
教室の中の人達(主に男子)が息を呑む。
「あぁ、まだこっちの世界じゃ成人年齢じゃないから、婚約者って名目だけど。向こうの世界では結婚式を挙げたよ」
「「「「「おおーー!!」」」」」
女子たちが「きゃあきゃあ」言い始めて男子は感嘆の声を上げている。
「ほうほう、それでここからが本質だ……異世界と言うんだっけ? その世界はケモミミ少女が沢山居るのか?」
「あっ! 委員長ずるいぞ!!」
「俺も俺も!! ケモミミのおねーさんとかいるのか!?」
「俺は……リリスたんみたいな悪魔っ娘がいいなぁ~」
「エルフのおねーさんを紹介してくれええぇぇぇぇぇぇ!!」
委員長の欲望マシマシの一声にクラスの男子が詰め寄って来る。
「そう言えば! 上凪君はあの幼女とも結婚してるのか!?!?」
委員長が目を血走らせながら聞いてくる。
「ユキの事? まぁうん、ちゃんとした奥さんだよ」
「くそおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
膝から崩れ落ちる委員長、まぁユキクラスのかわいい子あの世界でもかなり希少だからなぁ……。
「ちょっと男子!! どきなさい!!」
いつしか傍に寄って来た女子が目を輝かせながら口を開く。
「上凪君! ケモミミイケメン獣人とか紹介して!!」
「あっ、ずるい! 私はイケメンエルフ!!」
「私はディ〇ブロ様の様な美しい悪魔が!!」
「私は――」
そしてそんな事が休み時間の際に、幾度も繰り返されるのであった。