第54話:救出作戦の顛末
救出作戦の翌日、宮田総理との話し合いの為、総理官邸へ向かっていた。
車に乗っているメンバーは俺、耀、鈴香、メアリーの4人と。都内の自宅から向かっている朝霧さんを含めた5人だ。
――――♪♬♫——
「おっ、朝霧さんからだ。もう到着したって」
「流石に都内だと早いですネ」
「だねー、うちも都内でマンションとか買う?」
「それってポータルの置き場の為に? 買っても良いけどセキュリティがなぁ……」
それに、俺達は比較的どこにでも行けるけど、同じマンションの人達に迷惑をかけたくない。実家の様にいたずら目的で来られるのも正直面倒だし、ご近所にも迷惑だったし……
引っ越した後、売却の偽装とかで厳徳さんが取り計らってくれたので今は家の付近に人は居なくなったが、近所の家に謝罪して回ったりもした。
「それなら私の会社の事務所が持ってるマンションはどう?」
鈴香が前の座席から顔を出してくる。
「そういえば、芸能人も住んでるとこだっけ?」
「そうそう、セキュリティーはしっかりしてるしエレベーターもカードキーで認証した階にしか止まらないし。なにより守衛さんが居たり、地下からそのまま車に乗れるのがうってつけじゃない?」
「そうだね、それは良いかも」
「でも一つ問題がなぁ……」
少し気まずそうな声を上げる鈴香。
「ん?なにかあるの?」
「シェアハウス構造になってて、今すぐに使えるところが私が確保してた部屋しか無いのよ……」
「マンションで……シェアハウス?」
「そう、グループで活動する子達はそこのシェアハウスに入って共同生活をするのが事務所の方針なのよ」
「同じグループ……って事は」
「そう、私のパーティメンバー。まぁ優希さんなら皆OKを出すんでしょうけど……」
その言葉に遠い目をする皆。
「え? 一体どうしたの?」
「いや……流石優希だなぁ……と思って」
「そうですネ、流石優希さン」
「まぁ、もし使うならパーティメンバーには許可出るか聞いてみるね」
「わかった、皆がOK出すなら、そこでもいいかなぁ……」
そしてそんな話をしていたら到着したらしい。ゆっくりと静かに止まり、紡家の使用人さんが車のドアを開けてくれた。
「お待たせしました皆様、どうぞお降りください」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「やあ、上凪君。わざわざ学校のある日にすまないね!」
宮田総理が会議室で出迎えてくれた。
「いえ、昨日の今日で、大丈夫だったんですか?」
「あぁ、大統領を通じてこちらにも情報は入ってきているが概ね良好で、君達に感謝をしているそうだ」
「それは、よかったです」
「それで君達に来て貰ったのは子供達についてだが……」
「はい、その後どうなってます?」
昨日は治療をした後病院へ運ばれていった子達ばかりなので、詳しくはまだ聞いてはいない。
「基本的には経過は良好、食事もしっかり摂れたらしい、本来はお粥などの柔らかめの食事にする予定だったが固形の食事もしっかり食べたらしい。」
「なら、良かったです」
「それでここからが重要な事なのだが、国内から攫われた子達は皆。長期の行方不明、又は死亡している届けになっていた」
沈痛な表情の宮田総理、そんなことわかったなら暗い表情にもなる。
「それにもう一つ不味い事があってね、その子供達は殆どが育児放棄をされた末に売られた子供達だったんだ……」
「「「!?」」」
メアリーから事前に、こういった子供達の殆どは育児放棄や孤児達と聞かされていたが、改めて聞くと辛いものがある。
「わかりました、もし国内外問わず子供達の身寄りが無かったり戸籍が無かったら。私達に預けてもらえませんか?」
「それは簡単に容認できないけど、何か理由があるのかい?」
怪訝な顔で宮田総理が聞いてくる、まぁ子供が欲しいって言ったら変態と思われるだろうしからね…………違うよ?
「ええ、異世界でも戦争があった際に出てくる孤児達や、スラムでの生活を強いられた子達が多く居るので、それを引き取って私の領地に学校を作ろうと思いまして……」
「そうか、戸籍の無い子達は向こうの世界の住人にしてしまおうという訳か……」
「どうせなら向こうの世界の住人として生活してもらえれば向こうで戸籍を作り仕事に就く事も出来ますからね、必要ならば鍛えて、こちらの世界で探索者として働いてもらう事も出来ますし」
「そうか、それは非常に助かるな……」
「まだ教師役が足りないので、朝霧さん達にも手伝ってもらいますが……」
「私達で力になるかわからないけど、手伝わせてもらうよ」
「わかった、それならば以前捕らえたテロリストの子供達も引き渡そう」
「ありがとうございます、差し当たっては向こうで設備を整える間に日本語等の勉強をして頂けると、有難いのですが」
「わかった、基礎的な勉強等はこちらで出来るだけ行おう……それでいつ頃になりそうだ?」
「そうですね、領地を貰ったのを最近知ったので。早く見積もっても1~2年かかりそうなんですよね……資材はそんなにすぐ集まらないですし、異世界は農耕が主ですから、そこにもテコ入れをしたいですし……」
「そうか……こちらの世界の作物も異世界の環境に適応するかわからないのか……もし良かったらそのデータを貰えると、今後の農業発展にも役立ちそうだね」
「わかりました、早くても半年以上先になりますが大丈夫でしょうか?」
「あぁ、こちらもそう言った分野に強い者達を揃えたいのでね、時間はあるだけ嬉しいさ」
「わかりました」