第37話:記者会見⑥(お疲れ様会編)
エアリスを部屋に届けて戻ると、カラオケ大会が始まっていた。
方厳さんが歌ってるんだけどバチクソに上手い……神楽組の皆が口をあんぐりとしてる。
「あ、優希。おかえり~部屋大丈夫だった?」
「ただいま。うん、間違えなく行けたよ。あとは……」
「うーん、ユキちゃんどうしようか……」
椅子を並べただけの、最早ベッドとは呼べない場所でユキが丸くなって寝ている。
「ユキはだれの相部屋だっけ?」
「メアリーなんだけど……忙しそうにしてるのよね……」
見るとユフィは仕事でもないのに給仕をしている、ホテルの人も若干引くスピードで細々とした場所を気にかけて動いている。
「ちょっと聞いてみるか……」
「お願い」
耀に任され、メアリーの元に寄る。
「メアリー」
「どうしましたカ? 旦那様」
「えっとね、ユキが寝ちゃったから、相部屋のユフィに任せようと思ったんだけど……」
「うーム……」
「どうかした?」
「いエ……この状況で放置していくのモ……」
あーうん、わかる……もうノリが2次会なんだよね。
「そうだね……悪いけど頼める?」
「わかりましタ、なのでユキさんとの添い寝は我慢しまス」
「ごめんな」
「いエ、大丈夫でス」
そのまま、耀の元に戻り説明をすると、耀がユキを連れて行ってくれる様だ。
「それじゃあ優希、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
耀とおやすみのキスをして見送ると後ろから声を掛けられた。
「上凪さん」
「あれ? 金守君?」
「流石に今日は帰りますね、明日も学校なので」
「わかった、それじゃあタクシー使っても良いけど、領収書は忘れないでね」
「何か急に会社チックですね……」
「いやいや、これ会社の集まりだから……」
「そういえばそうでした……」
その後金守君は、お弁当を貰って帰って行った。
見送って戻ってくると、春華と冬華がノリノリで歌っている。
何故初代プリ〇ュア? そうか、二人だからか。
巴ちゃんはシド様となんか話してるし……厳徳さんは寝たか……
とりあえず厳徳さんが寝た事を綿貫さんに通話して伝えると、どこからともなく黒服が現れた運ばれていった。
その後は冬爪さんのとんでもなく上手い歌を聞いたり、次々と寝落ちた皆を部屋に運んでいると、いつの間にか日付も更新して夜も深くなっていた。
「メアリー、お疲れ~」
「旦那様、お疲れ様でス」
皆の撤収や送りなどの手配を終えて、伸びていると片づけを終えたメアリーと鈴香が帰って来た。
「優希さんお疲れ様です」
「おっ、鈴香も終わったか」
「えぇ、皆の部屋の手配もありがとう」
「これも福利厚生の一つだからね」
しかしこの時間になると明日の学校がしんどそうだな……
「うぅ……明日学校行くのめんどい……」
「だめよ、ちゃんと学校は行かないと」
「そうでス、行ける時に行かないト、駄目ですヨ」
二人に釘を刺される、そう言われたら行かないといけないよなぁ……
「あっ、そういえば思い出したけど。メアリーは学校どうなの? 行きたいなら手配するよ」
「そうですネ、私は一応大学卒業分ノ、勉強は終えてまス」
「えっ……マジで?」
「はイ、これでも勉強は好きでしたから」
「はえーメアリーさん凄い……」
「という事で今ハ、ユキさんの勉強も見ていまス」
なんと……知らなかった。
「そうだったんだ、どう? ユキは中学校から通えそう?」
「はイ、少なくとも飲み込みは早いのデ、春には中学校へ進学できるかト」
「そっか。それじゃあユキの家庭学習は安心だね」
「なら私から、お願いがある」
いつの間にか後ろに居たユフィがもたれかかって来る、いつもより体温が高いから多分お酒を飲んでるのだろう。
「ん? 何?」
「私も、学校に通いたい」
「マジで?」
「ん、こちらの世界の勉強は面白い」
「そうか、じゃあ相談してみるかな?」
「お願い、出来ればエアリス達も」
「わかった、先生に聞いてみるよ」
「(ぐっ)」
鼻歌まで歌ってる、こっちも嬉しくなるな。
「さてじゃあ私達も寝ましょうか? 明日学校に行くんだし」
「そうだね、じゃあ行こうか」
そのまま4人で各々の部屋に戻り、ベッドの飛び込むとすぐ眠りについた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そうして翌朝、どこからか入ったメアリーに起こされ身だしなみを整え朝食へ向かう。
朝はバイキングなので受付をしていると、ぴょこぴょこと動く耳を見つけた。
「おはよう、ユキ」
声を掛けると大輪の花が咲いたような笑顔を見せる。
「おはようございます! 優希お兄様!」
「「「ざわっ……」」」
お兄様呼びを聞いた周囲の人(特にマダム)がひそひそと話し始める。
『プレイ?』
『プレイね?』
『あんな小さい子に、お兄様呼びを強制してるなんて……』
『卑猥よ』
『卑猥ね』
止めてくれ……変態の称号が確固たる地位になってしまう……
「お兄様? どうしました?」
「あはは……何でもないよ」
空いてる手でユキの頭を撫でながら答えると、目を細めて気持ち良さそうにしている。
「それじゃあユキ、一緒に食べようか。どれがオススメかな?」
「はい! こちらです!!」
手を引っ張られながら朝食のコーナーへ向かうのであった。