第35話:記者会見④(お疲れ様会編)
「じゃあ皆さん、コップは持ちましたか?」
「「「「「はーい!」」」」」」
「それでは、配信&記者会見お疲れ様です! 乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」」
各所でグラスを打ち合わせる音が響く。
白鳥さんや金守君にも合流してもらい、株式会社マジカルヴェストメントの記者会見成功パーティをしている。
まずは……あぁ、あそこに居たのか。
「神楽坂さん、お疲れ」
「あ、優希さんお疲れ様です」
「優希さん」
「お疲れ様です」
「おつかれさまです、優希さんもカッコ良かったですよ~」
「(こくこく)」
「あはは……ただ、立ってただけなんだけどね。それで皆遅くなったけど、衣装とかは大丈夫だった?」
「私は、ちょくちょく調整してたし大丈夫」
「私も」
「私もだいじょうぶですねぇ~」
「(こくこく)」
4人は大丈夫のようだけど……鈴香が黙っている。
「鈴香? どうかした?」
「胸が……きつい」
「……」
「あー」
「あはは……」
「あらあら~」
「(ぽぽぽぽ)」
4人が「あぁ~そうゆう事ね~」って感じで見てくる。
「えっと……衣装って鈴香の3サイズを送って、マネキンで作って貰ったんだよね?」
「そうだね」
「それでやってもらいましたわ~」
「あっ……」
鈴香が思い出した様に声を上げる。
「ん? どうした?」
「えっと……その3サイズって、元々私の事務所で出してた奴だよね?」
「うん、そだよー」
「あはは……ごめんなさい逆サバ読んでました……」
「マジか」
「あれより大きいのか……」
「あらあら~」
「!?!?!?(驚愕の表情で胸を触り始める)」
「そうゆう事か、わかった。明日にでも雛菊さんのとこに行こう」
「ありがとう、優希」
「えっと、明日の予定は……あ、その前に。復学届出さないと」
スマホのスケジュールを見て思い出した、明日復学届を学校に出しに行かないといけないんだ……
「そういえば優希さんってウチの学校だったんですね」
「そーそー話題に上がったけど殆ど学校で見なくて……」
「(こくこく)」
「そうだったのね~」
「いろいろあってねぇ、いろんな場所に飛び回ったから、全然勉強してないんだよね」
「あはは……私もだ……」
「それなら、うちらが教えましょうか?」
「あーそうだね! 蒼と紅さんは勉強凄くできますもんね!」
「(こくこく)」
「蒼ちゃん程じゃ無いわよ~学年一位をずっとキープしてるんですもの」
凄いな……夏風さん、それに秋谷さんも現役の国立大生って教えてもらったし、皆で教わるには期待が持てる。
「それに翠のノートは綺麗だし」
天春さんがスマホの画面を見せてくれる、そこにはまるめの可愛らしい文字やわかりやすいように図や色で解説がきっちり書き込まれたノートだった。
「すごいな、今パッと見ただけでも、めちゃくちゃわかりやすい」
「(ぽぽぽぽぽ)」
顔を真っ赤にして恥ずかしがる冬爪さん。
「補講も組まれると思うけど、お言葉に甘えようかな……これから会社の事で一緒に動くことになりそうだし、教えてもらえるなら有難いよ」
「おっけーじゃあその内、勉強会とかもしよーねー♪」
「そうだねー菫の成績もガチヤバだし、そろそろテストもあるからねぇ~」
ニヤニヤしながら夏風さんがそんな事を言う。
「ぎゃーっ、嫌な事思い出させないでよ!!」
「そうだったわね、菫って毎回蒼に泣きついてたわ」
「そうよ~親御さんに言われたでしょ~『点数悪いと芸能活動禁止』って~」
「(ぶんぶん)」
秋谷さんの言葉に冬爪さんが猛烈に頷く。
「わかった、それじゃあ天春さんがウチでしっかり働けるように、頑張って貰わないとね」
「ぎにゃーーー! 優希さんの鬼!!」
「「「「あはははは」」」」
「それじゃあ、他の人とも挨拶して来るから」
「あっ、私も行った方が良いですか?」
「良いよ、まだ。みんなと話してて」
「わかりました、何かあれば呼んで下さい。」
「了解」
そう言って鈴香達の元から離れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「お~い、優希よ」
会場内を歩いていると上機嫌な声が俺を呼んでいる。
「んな人を、お茶の商品名みたいに呼ばないで下さいよ。厳徳さん」
「ええじゃろ! ええじゃろ! 今日は気分がとても良くてな!」
「また飲み過ぎて……巴ちゃんに嫌われますよ」
「それを出されると弱いのぅ……」
そう言うと厳徳さんは、お酒を注ぐ手をいったん止める。
「それでどうしたんですか?」
「いやのぅ。まさかお主がここまでなるとは、思ってもよらなくてのぅ」
「それって……国民栄誉賞の事ですか?」
「そうじゃそうじゃ♪」
上機嫌で喜ぶ厳徳さん、なんかここまで喜んでもらえると、普段の子憎たらしいおちょくりをされる分、なんか嬉しいな。
それはそれとしてお酒の手がまた動き出した。
「それは、よかったです、何だかんだ言ってウチは祖父母ともう会えませんから」
「そうか……それはスマン事を聞いた」
「良いんですよ、小っちゃい頃でしたから、あまり顔を覚えて無いんです、まぁ代わりに耀のお爺ちゃんお祖母ちゃんには構って貰えましたけどね」
「そうか、それはそれでなんか悔しいのぅ」
お酒をちびちび飲みながら言う、とゆうかこの短時間で熱燗2本開けたよ、この人。
「どこで張り合ってるんですか……」
「ワシも、男孫を甘やかしたかったのぅ……」
「いや、巴ちゃん達も甘やかしてるじゃないですか……」
「まぁそれはそうなんじゃが……そうじゃお主いつまで巴の事を『ちゃん』付けで呼んでるんじゃ?」
「巴ちゃんは巴ちゃん、って感じなんですよね……」
「仕方ないか……一朝一夕で、どうにかなるものでもない……」
「多分、いつの間にか変わってますよ」
そんな事を話していると、いつの間にか巴ちゃんが厳徳さんの後に立っている。
「お爺ちゃん?」
「ひぇ……ととと巴!? いつからそこに!?」
「お爺ちゃんが3本目に手を伸ばすタイミングかな?」
笑顔が怖いなぁ……あれは中々に怒ってるし。
「あ、そうそう優希さん、金守さんが探してましたよ」
「了解、じゃあ厳徳さん、また」
席から立って探し始めると、静かにお説教され始める厳徳さん。
(だから言ったのに……)
そう苦笑いをしながら後にした。