第30話:洋上作戦・終了
そして小腹も埋まったので、二人で船外に出て探す、すると1階部分にあったので取り外して外に投げる。
暫くすると耀から通話がかかって来た。
『あっ優希、今大丈夫?』
「大丈夫だよ、どうした?」
『宮田総理がさっき来て、位置が把握出来たから人を送るって』
「わかった、ありがとう」
『それじゃあ、気を付けてね』
「わかった、耀もね」
通話を切ると再びブリッジに戻る。
「さて、残りを制圧しに行きますか」
「はイ、お供しまス」
それからタンカーの下部に到着して探知をかける、集団のいる部屋が手前にある。
「まず人の集まってる部屋から行こうか」
「はイ、わかりましタ」
近寄るとそこは不思議な部屋だった……
「入り口が無いね」
「そうですネ……どうしましょうカ?」
「仕方ない……斬るか」
「そこですんなり斬れるト、断言するのは優希さんらしいですネ」
「あはは……とりあえず、いくよっ」
刀に纏わせた魔力の刃でそのまま何度か斬りつける、すると大人一人分がっ通れるほどの隙間が出来る。
中を覗くと子供達が一か所に集まって縮こまっていた。
「『——鑑定』うん、この子達攫われた子達だ」
「やはりですカ……優希さン、爆弾とかは?」
「大丈夫、鑑定で調べたけど、身体や持ち物にはついて無いよ」
「わかりましタ、それでしたらここから逃がしましょウ」
「そうだね、皆立てるかい?」
声を掛けると、子供達がほっとした顔をする。
「よし、メアリーはこのまま、ブリッジまでこの子達を連れて行って」
「わかりましタ、優希さんハ?」
「なんかまだ奥に、人が居たから見に行ってみるよ」
「わかりましタ、ご武運ヲ」
「ありがとう」
そのままメアリーは子供達を誘導して上へ上がって行った。
「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか」
奥の扉を開いた瞬間、目の前で閃光が弾けた。
咄嗟に右手に持った刀で飛んできたものを両断する、すると背後で爆発音がした。
「うわぁ……ビックリした……」
正面を見ると、戦車の砲身がこちらに向いている
「あぁ、今のは敵の砲弾か……とっさに斬ったけど対応できたのが自分でも怖い」
相手も驚きを隠せずに騒いでいる。
「2発目撃たれると困るし、さっさと倒すか……」
身体強化で瞬間的に戦車に迫り砲身を両断する、そのまま魔装を展開して蹴りつける。
物凄い音を響かせながら回転して壁にぶつかる戦車、ガソリンと砲弾はそのまま抜いてあるので大きな爆発はしないと思う。
そのタイミングでメアリーより連絡があり、自衛隊員の方々が到着した様だ。
「それじゃあこの犯人たちも拘束するか……」
そのままハッチを毟り取り、中から搭乗員を引っ張り出す。衝撃と轟音で鼓膜が破れ血を流している人も居た。
「後は、周囲の探索をかけてからそっちへ戻るね」
「わかりましタ、お待ちしておりまス」
探知を使い、周囲に反応が無い事を確認してメアリーの元へ無力化したテロリストと共に戻る。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「お待たせ」
「いエ、全然待っておりませんヨ。この子達にお菓子などをあげてましたので」
背後に居る子供達は、メアリーから貰ったお菓子を頬張っていた。
「やっぱり、この子達は」
「はイ、攫われても問題無い子供達ヤ、施設が共謀して売り渡したみたいでス」
「マジか……胸糞悪いな……」
美味しそうにお菓子を食べている子供達を眺めていると、自衛隊員の方がブリッジは入って来た。
「協力者と思わしき者、2名発見しました。どうやら子供達と居る模様」
隊長さんと思わしき人が通信をしている、確認をしている様だ。
「お二人は協力者の方でお間違いないでしょうか?」
「はい、上凪優希とメアリー・アーリンストンです」
「ありがとうございます、お名前も間違いは無さそうなので安心しました。私は特警隊の苅田1等海曹です。それで後ろの子供達は?」
「はイ、攫われていた子供達でス、道中で救出しましタ」
「ありがとうございます、そうしましたら後はお任せください」
「わかりました、では先に戻らせていただきますね」
「はい、この度はありがとうございました」
転移用に置いていたポートを回収して、向き直ると隊員全員が敬礼をしていた。
「それでは、お先に」
◇◆◇◆◇◆◇◆
そのままメアリーと共に、耀の元へ転移して戻ると、丁度大広間に皆が集まって来ているところだった。
「おっ、おかえりー」
「ただいま」
「只今戻りましタ」
「ふう……疲れた」
「えぇ、そうですネ」
二人して空いたソファーに座り込む、流石に何人もの人のとの命のやり取りは精神に来るものがある。
天井を仰いでいると、何も言わずミュリが頭を抱いてきた。
「お疲れ様、優希。無理をするな」
「い、いやそこまで無理はしてないけど……」
「嘘は言いっこ、無しですよ」
見上げた視界にエアリスも映る。
「ユウキは多くの人を殺したことが無い、疲れるのも当然」
「私冬華も、自分の攻撃で初めて人が死んでしまった時は、辛かったですから……」
「そっか……二人にはつらい思いさせちゃったね」
「大丈夫、おにーちゃんの顔を見たら吹き飛んだから」
「わ、私はこちらの世界に居たのでその実感は無いですが、優希さんに言われれば人を消す位!!」
「巴ちゃんステイ、流石に犯罪に手を染めてなんて言えないから……」
「そうよね、『バレなきゃ犯罪じゃないんですよ』っていうじゃない」
「流石にそれは、ばれるでしょ……」
「まぁ兎も角、顔を上げて下さいユウキ様」
エアリスに言われやっと正面を向く、すると皆が俺の傍にいた。
「こうゆう時ハ、一人で抱え込まない様にしてくださイ」
「そうね……優希の膝の上に順番に座るのはどうかしら?」
「さんせー!」
「ちょ、春華!?」
「じゃあ春華ちゃんの代わりに私が……」
「巴ちゃん!? それなら私も乗ります!!」
「でも、ユウキの事だから、違う意味で元気になる」
「ユフィ!? いやでもあながち間違いじゃ……」
「なら、遠慮せず座れますねユウキ様!」
そのままいつもの空気になる、皆の気遣いがわかってメンタルが回復して来る。
「わかった、それなら順番だ!」
半ばヤケの様に答えると、皆が座って来るのであった。