第22話:婚約指輪⑥<ミュリ・エアリス編>
メアリーと指輪を選んでいる際に、金守君に神様の事を見られてしまい非常に不味い空気になってしまった。
「えっと……さっきの事は説明してもらえるのかな?」
「うーん……見られちゃったし仕方ないか……」
「すみませんでしタ」
「いや、俺も迂闊だった……」
互いに謝っていると、金守君が咳払いをしていた。
「こほん……とりあえずあれはどうゆう事なんですか?」
「うーん話しても良いけど、長くなっちゃうし。さっきユフィ……エルフの子から聞いた事に似た様な事だし出来ればご両親交えて話をしたいんだ」
「そうですか……わかりました、先に上凪さんの婚約指輪についてですからね、後幾つでしたっけ?」
「えっと……一つは調整無しで持ち帰るんだけど」
「良いんですか?」
「うん、当人が気に入ってるし。先に確保しておこうと思ってね」
「そうでしたか、わかりました」
「じゃあ後の二人は……まだ選んでるみたいだし。少し相談に乗ってくるよ」
「わかりました、先に注文いただいた指輪は調整してるので、決まったら呼んでください」
「ありがとう、助かるよ」
そう言って金守君はガラス張りの作業室に入っていった。
「よし、じゃあ他の人見てきますか……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
通路を覗くとミュリが一つの指輪の前で唸っていた。
「いやぁ……これは気に入ったんだが……どうにも私には……(ブツブツ」
「ミュリ? どうした?」
後から声を掛けるとばね仕掛けの玩具の様にビクンってしてショーケースを背後に隠す。
「はひゃうん!? ユユユっ、ユキか!」
「いや俺ユウキなんだけど……どうしたの?」
ミュリの肩越しにショーケースを覗くとそこには【月光】《げっこう》と名付けられた、大きな雫型の少し青みがかった宝石が台座に据えられている指輪があった。
「へぇ、ミュリに似合いそうな指輪だね」
「ふぇ!? 本当か?」
顔を赤らめながら詰め寄ってくるミュリ。
「いや……何で嘘を言わなきゃいけないんだ……」
「でもでも! こんな今まで剣しか握ってこなかった私だぞ!」
「いや、関係無いでしょ、ミュリは俺が奥さんにしたいから貰って来た訳だし、それにミュリは十分女性らしいぞ」
今ではすっかり追い越してしまった、ミュリの頭をポンポンとかるく撫でる、初めてミュリに出会って日から考えると驚くべき成長だ。
「そりゃ旦那の俺が言ってるんだし……それともミュリは俺の言う事が信じられないの?」
後を向いてしまったミュリを腕の中に収めて耳元で言うとミュリの赤色の瞳が揺れ、顔も赤くなる。
「しょ! しょんなことぉ! きゅっ、急に言われてもぉ!!」
「そうか……ミュリは信じてくれないのか……」
「わかったぁ、わかっちゃからぁ! 耳元でささやくのはぁ……」
「あはは……ごめんごめん、つい面白くて……」
「全く……お前という奴は、いつからそんなに私を弄ぶようになったんだ……」
ぷりぷりと怒りながら拗ねた様にミュリが言う、攻めると可愛いから、ついやっちゃうんだよなぁ……
「まぁ、ミュリもその指輪、気に入ってるんでしょ?」
「―――――うん……」
顔を赤くして頷くミュリ、可愛いなぁ。
「じゃあこれにしよう」
そうして少し強引にミュリの手を引き、カウンターへ行くと一つ目の調整が終わっていた。
「金守君、一人決まったよ、さあミュリ」
「おっおう! さあよろしく頼む!!」
そう言って右手を出す。
「あれ? そういえば、何故右手?」
「あー向こうの世界の慣習で、右手薬指に着けるんだ」
「そうなんですね、先程のエルフの人は説明してくれなかったので……」
「ごめん、忘れてたわ」
「あはは、調整する前で良かったですよ」
「それじゃあ彼女のを頼むよ」
「任せてください」
そうして、最後になってしまったエアリスの元へ向かった。
「エアリス、決まった?」
「えぇ、割と早く」
「それなら言ってくれて、良かったのに」
「そこはユウキ様がどのような順番で行くのか、楽しみに観察してました」
「いや……基本的に終わってそうだな~感じだったり、悩んでるなーって人を優先してたんだけど……」
「あら、私は終わってましたが?」
エアリスがいたずらっぽく笑う。
「いやぁ……まだ見てるんだろうな~って、思ったから……」
「仕方ないですね……ユウキ様は女性の事となると、割と鈍感なんですよね……」
「うっ、それは面目次第もありません……」
「ふふふ……それも含めて愛おしいんですけどね」
「あまりからかわないでくれよ……」
「あら?でもミュリの時は結構、《《俺様系》》だった様な……」
「うぐっ……見られてた……」
「良いじゃありませんか、私もたまには押せ押せなユウキ様に、責められたいですわ」
そういって笑うエアリスなのだが……なんだろう、絶対勝てる気がしないんだよなぁ……
「ふふふ、それはそうとこの指輪どう思います?」
エアリスが指差したのは一見シンプルなのだが、よく見ると固結びの様にも見える不思議な模様だ、それでいて金色と緑色の宝石が綺麗に収まっている。
「なんか……シンプルだけどすごく惹かれるね」
「はい、わたしも一目見てとても惹かれるものがありました、それにこの指輪の【結】《むすび》という名前にも惹かれました、『むすびつける』という意味や『たばねる』という物や人を繋げる意味があると巴さんから教わりましたので」
【結】か確かにエアリスとは色んな縁が結びついてたもんな……5年前に出会い、仲良くなり、一度は離れたけどまた再開して、今は世界を繋ぐまで来た、確かにふさわしい名前だ。
「うん、すごくいいね」
「では、これにしますね♪」
そう言ったエアリスが軽い足取りで俺の手を引いてカウンターへ向う、5年前から幾度となく見て来た背中に、懐かしさと喜びを感じていた。
こんな感じでの設定です。
エアリス:【結】《むすび》
→自分と優希を結んでくれた縁を大切にしたいから、世界を結ぶ、好きな人と自分を結ぶという所から選びました。
スフェーンの石言葉:永久不変・成功・幸運・純粋の意味があって、エアリス自体の優希への愛情が永久不変という事からこの石にしました。
ミュリ:【月光】《げっこう》
→ロイヤルブルームーンストーンを使用、月の光の様に素顔は見せないけど優しく照らす存在になりたいから
ロイヤルブルームーンストーンの石言葉:恋の予感・生命力・希望・幸福の意味があり初期から優希に対しての好感度が振りきれキャラとして生まれたんですよね、ちなみにメアリーの天使の部分は元々ミュリが受け持つはずだったんですよねだから名前もユミュリエルだったりします。
二人共、初期に考えてたので説明が簡素なんです。