第6話:俺のせいでした……
はい、瞬殺でした。
……いや殺してないよ?
全員頭にチョップしただけなので死んでないよ?
だってあいつら全員下級なんだもん……
そしてチンピラは警備員に担がれて裏へ消えて行った。
「すみません、綿貫さん」
「いえいえ~だいじょうぶですよ♪」
「えっと……この人誰?」
「申し遅れました、私、紡家に雇われているメイドの綿貫と申します♪」
「メイドさん……」
「あはは……縁あってね」
とりあえずその後迷子センターに行くとすずめちゃんの相手をユキがしていた。
「すずめ!!」
「あっおねーちゃん!!みてみてオオカミさん!!」
すずめちゃんが指差した先には耳と尻尾が露になったユキが居た
「oh……」
「ごめんなさい、ユウキ様……」
「子供は聡いからね~」
「上凪君……あの子って……」
うーんどうやって誤魔化そう……
「コスプレ?」
「う……うん、コスプレぇ……」
「みてーおねーちゃん!これ本物だよ~」
すずめちゃんがユキの耳をぐりぐりと触る。
「痛っ……」
どうやら思いっ切り握ってしまったのだろうユキが痛がる。
「こら!すずめ!!駄目でしょ!!」
白鳥さんが慌ててすずめちゃんの手を放させる。
「ごめんね……大丈夫だった?」
「はっはい!触られ慣れて無いので……少し驚いただけです……」
「ほら!おねえちゃんにごめんなさいは?」
すると、悲しそうな顔をしたすずめちゃんが声を震わせながら謝り始めた。
「ごめんさいおねえじゃん、いだぐじじゃっで。ごべんなざい……」
そして泣き始めてしまった。
そんなすずめちゃんを見ていたユキが尻尾で顔を拭い始めた。
「……ふぇ?」
「ほれほれ~もふもふだぞ~」
更には尻尾ですずめちゃんをくすぐり始める。
「くすぐったいよ~~」
いつの間にか泣き止んだすずめちゃんを見てビックリとした顔の白鳥さんが居た。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから結局、ユキの事はばれてしまったが、状況が状況だったので仕方が無い……
そして今は準備中のモール屋上に併設されたグランピングやカフェが出来る施設で状況説明する事になった。
「ここならば人の出入りはありませんので、ユキさんは普通にしていただいて、大丈夫ですよ♪」
「わーい!おねーちゃんあそぼー!!」
「わわっちょっとまって下さいすずめちゃん!」
ユキがすずめちゃんに手を引かれ芝生へ駆けだして行った。
「すみません、あーしの妹が……」
「大丈夫ですよ♪どうぞ皆さんはこちらへ♪」
綿貫さんに促され俺達はテーブルに着く。
「お飲み物を用意してまいりますが。すみません、現在オープン前でしてコーヒーと紅茶と緑茶しか用意が無いので、その3つから選んで頂けますと……」
「じゃあ私はコーヒーで」
耀がそう言うと数人が私もと手をあげる。
「すみません、コーヒーというのがあまりわからないので、私は紅茶を……」
「すまない、私も紅茶で」
エアリスとミュリは紅茶。
「じゃあ俺は緑茶で」
「私も緑茶で」
「あーしも緑茶でお願いします」
緑茶組は俺と春華と白鳥さんだ。
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
そう言って綿貫さんはキッチンなどがある建物に入っていった。
「さっきはマジ助かりました、アイツらうざいしずっと着いて来るし、すずめの事はほっとけとか言うしマジ最悪!!」
「あはは……助けに入れて良かったよ」
『まーた優希の、人助けスキルが発動してるわね』
『またですか?』
『そうなのよ……優希のご両親の影響で昔から人助けが癖づいてるからなのよ、私もそれで助けられたし』
『そうなんですか……確かに私達の世界でも人助けしてましたね』
『勇者は比較的、人助けや、危機を救った等書かれる事が多いとはいえ、ユウキは素で人助けをしてたからな』
『私が優希さんに出会った時も、優希さんは深く事情を聞かず向かってくれましたね』
『私と冬華はまさに助けられましたね』
『ねー颯爽と現れて、敵を倒して私達を命の危機から救ってくれたもんね』
『私の時も家から連れ出してくれようとしたり、命懸けで守ってくれたなぁ……』
『そういえば、理映から聞いたんだけど、異世界に召喚される前に召喚しても良いか聞いたらしいのだけど、優希は二つ返事でOKしたみたいよ』
『そうだったんですね……』
『でね、メアリーの時も……』
隣のテーブルで何かすっごく、小っ恥ずかしい話をしてキャーキャー言ってるんだけど……全部聞こえてるんだよなぁ……
くすぐったさに顔が熱くなってきていると、対面に座った白鳥さんが口を開いた。
「そいえばー上凪君どしてそんなに成長したん?」
「事細かに話すとすごく長くなるから、簡単に言うと元々異世界で5年程戦ってて、この世界に帰って来たんだけど、その時は力が制限されてて、それでこの間死んで、向こうで生き返って、力を取り戻したって感じ」
「マジ!?あーしが昔読んでたラノベみたいじゃん!うけるー!」
「それで、こうして成長してたわけ」
「そっかーでも良かったよ、上凪君が生きてて、それにいつの間にか耀も学校から居なくなっててね、センセーに聞いたら家庭の事情でお休みって言われたし、家に行っても居ないしで、ほーんと困ったんだから」
「あはは……ゴメンね~」
「お待たせしました~お飲み物お持ちしました♪」
丁度いいタイミングで綿貫さんがお茶をもってきてくれた。
「しかも働いてたバイト先潰れちゃうし!ほーんと大変だったんだよ……ずずっ、あっ美味しい」
「バイト先が潰れたのは関係無い様な気が……じゃあ今はバイト探してるの?」
「そーなんだよ、でも前みたいに中々良いバイトが無くてね……」
「因みに前のバイトをしてたの?」
「神堂グループだっけ?あれがやってるファミレス……時給がすごく良かったんだけどね」
神堂グループと聞いた瞬間、飲んでいたお茶を喉に詰まらせてしまい思いっ切りむせる。
「――げほっ……げほっげほっ」
「わわっ、大丈夫?」
手際よく背中をさすってくれる白鳥さん。
「はぁ……はぁ……大丈夫……」
「なら良かったけど……どうしたの?」
凄く言いづらいけど言わないとなぁ……
「いやーうん……その職場潰したの俺なんだよね……」
「はぁ!?」
「誤解しないでもらいたいんだけど。昔、久墨木阿って居たじゃん」
「あぁ、上凪君に大怪我負わせたって人ね、カッコいいから覚えてたよで、それが神堂グループとどう関係があるの?」
「久墨のお爺さんが神堂グループの会長で、色々な犯罪行為に久墨共々手を染めてたんだよ、それで俺が殺される事件が起きて、次々とドミノ倒しの様に事件が明るみなったんだ。ほら少し前に大人子供が数十人犠牲になるダンジョン事件アレを引き起こしたのも久墨とお爺さんだったんだよ」
「あぁ……すずめと同じくらいの子達が犠牲なった奴だね……あの事件もだったのか……」
「だから……ごめんなさい」
わざとではない、とはいえ引き金を引てしまったからにはと思い頭を下げる、その途中で止められる。
「そんな……上凪君が謝る事じゃないよ、悪いのはそいつらなんだから」
「ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ。でも、どうしようか……」
「そうなんだよね……どっかに割りの良いバイト無いかなぁ……」
そういえば……白鳥さんってジョブがあれだったよね……
「白鳥さん、今白鳥さんのジョブって【裁縫師】のまま?」
「そだよー、でも妹の洋服繕う位にしか出来ないんだよね~」
「それだったら……いい考えがある!!」