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第44話:春華のドヤ顔

昼食を食べた後、足早に街まで戻ると、夕暮れ時だった。


「私は衛兵の元に行ってくるよ」


「じゃあ、俺も行ってくるわ、空間収納アイテムボックスに入ってる死体を出さないといけないし…」


「私も行くわね、一応状況を報告しないといけないし」


「私は夕食の支度をしますね…お買い物をしないといけないですが…」


「春華さン、私も手伝いまス」


「それなら詰所に行った後に買い物に行こうか」


「でハ、私は先に戻って下拵したごしらえ等をしてしまいますネ」


「私はヒカリとリンカの魔法鎧を仕上げをしてしまおう」


「私は、やることが無いですね…」


「私も〜」


「それなら私を手伝ってくれ、マネキン等も焼け落ちてしまってな…今から揃えるにも手間で…」


「わかりました、私で良ければ」


「トウカ、手伝って、トウカの武器、強化する」


「わかったよ、ユフィおねーちゃん!」


「さて、それじゃあ行こうか」


それから詰め所に行きダミサンの死体と、バラバラになったヴィクアンや盗賊達の死体を出す。


「これは…凄まじいですね…」


「ダミサンって…指名手配されてますよね…しかもかなり強かったはず…」


「流石…勇者様ですね、綺麗な切り口ですよ隊長」


わらわらとダミサンの死体に衛兵が集まる。


「獣化した獣人を一刀両断とは…」


「いやー俺達の剣じゃここまで切れないよ…」


「きっといい得物使ってるんですね」


「コラ!お前達!!見るなら後にしろ!後に!!」


案の定怒られていた。


「あはは…得物はアストラの東の端にあるとこの刀って武器ですね」


「へぇ~刀ってあるんですね」


春華ちゃんが不思議そうに聞いてくる。


「あぁ、そうか言ってなかったね。この世界でも刀は流通してるんだよ、こっちのリーベルンシュタインじゃ本当に希少で多分王城の宝物庫にあるだけだね」


「そうだな、だがまさか…ユウキが刀なんて折れやすいものを使ってるとは思わなかったがな」


「ん?折れやすい?」


「確かに、峰や平で受けたら折れますが…」


「いや、斬ったら…折れたが?」


「は?」


なんか春華から低い声聞こえたんだけど…


「優希さん、確か丸太持ってましたよね?」


「は、春華!?」


「優希さん…お願いしますね♪」


「はい…」


「え?何?どうしたの?」


「あっ、耀さん♪」


天使の様な笑みを浮かべる春華を見て耀がこちらに来る。


『優希…なにしたの?』


『いやさ…俺の武器が刀じゃん、ミュリが刀が斬ると簡単に折れるって言っちゃってね…』


『春華ちゃんって刀にこだわりあったっけ?』


『わかんないけど…怒ってるのは確かなんだよね…』


『兎に角、やってあげた方がいいんじゃない?』


『そうだね…』


「よし、じゃあやるか。隊長さん訓練場とかって空いてます?」


「あっ、ああ。こっちだ付いて来てくれ」


「すみません…」


「ははは、いい機会ですよ。ウチのひよっこ共も勇者様の技が見れるのは良い刺激になりますでしょうし。それに私も見たいので…」


そう言う隊長さんに連れられ訓練場に通される、中には新兵とベテランが訓練をしていた。


「すまない、ここを使わせてもらうぞ」


「隊長じゃないか、良いけど何をするんだ?」


「勇者様の得物を見せてもらうんだ、どうやら刀というらしい」


「ほう…前に一度流れの商人が持っていたが…勇者様はそんな貧弱そうな武器を使っているのか」


「あはは…俺の国じゃ伝統的な武器なんですよ」


「そうか…しかし刀ねぇ…」


ベテランの衛兵も懐疑的な目で見ている、春華の怒りゲージが溜まってる音が聞こえる…


「ともかく、ここで良いか…」


太さ15㎝位の丸太を出す、これ…いけるかな…


そのまま集中して構える、縦には無理だろうし、横薙ぎで斬るには無理あるだろうし…とりあえず踏み込んで斜めにいくか…


身体強化で力を込めて斜めに斬り払う、すると綺麗に吸い込まれ丸太が斜めから切り落とされた。


「———ふふん!」


滅多に見ない春華のドヤ顔がそこにあった。


唖然としていた周りの人達が拍手を始めると一気に広がった。


「どうです?これが刀のポテンシャルです!」


相変わらずドヤ顔の春華の頭を撫でつつ刀を仕舞う。


「凄いな…身体強化のみで武器の強化魔法など無しに丸太を斬るとは…」


「多分優希さんが盗賊に使った技は別だと思いますが、同じ様に丸太を斬れると思います!」


「いや…藁巻きだっけ?藁をスパっと斬るのは見た事あるけど…丸太って斬れるものなのね…」


「いえ、優希おにーさんの実力が7割ですね、3割はお爺ちゃんの刀自体が頑丈ってのもあります」


「そう言えば、鷲司さんに渡されただけだけどこの刀凄い切れ味だよね」


「そうですね、おじいちゃんの刀は元々鋼と隕鉄を組み合わせた刀なんですよ、昔作られた隕鉄刀は切れ味が良くなったみたいで、色々と組み合わせて重さと切れ味と頑丈さを兼ね揃えたみたいです、製法はわからないですが落として刀身が半分丸太に刺さるみたいです」


「料理以外で春華ちゃんが饒舌なの初めて見たわ…」


「えへへ…元々お爺ちゃんが私の包丁を作ってくれてから、色々と興味が湧いたんです」


「そうだったんだ、そういえばお爺さんは?」


「えっと…今はどこで何をしているか…昔材料を探して世界各地を旅してる途中に行方不明に…」


「そうだったんだ…ゴメン」


「いえ、お父さんも『生きてるならどっかで刀を打ってるだろう、死んでても天国で打ってるさ』って言ってました」


「案外この世界に居たりしてね~」


「あながち、ありそうですね…」


そう笑っていると、いきなり訓練場に大きな音が響いた。


音の方向を見ると、訓練場の壁(木製)が崩れ、ミュリがやらかしたという顔をしていた。


「あ…あはは…試しに私の剣でやったら…丸太ごと飛ばしてしまって…すまん…」


凄くバツが悪い感じのミュリに一同苦笑いをした。


◇◆◇◆◇◆◇◆

それから壊した部分を手持ちの木材で修理して、詰所を後にした。


盗賊の身元確認等は町長がやってくれるとの事で俺達はそのまま市場に来た。


「今日のご飯は?」


「異世界野菜のシチューと簡単なムニエルにしようかと…」


「良いわね、美味しそう」


「そうだな…魚は市場で買うのか?」


「はい、意外と新鮮なお魚が多かったので!」


「その…シチューとムニエルとは?」


先程まで壁の修復をしていて軽く汚れているミュリがおずおずと手を上げる。


「そうだったね、この世界だと…牛乳煮込みと、パン粉を付けないフライみたいなやつかな?」


「そうですね、この世界だとバターの流通があまり無いので食べる機会が少なそうですからね」


この世界は菜種油と牛脂や豚脂ラードが一般的で牛乳は殆ど流通が無い、作られるのも大体がチーズなので牛乳煮も一部地域でしか食べられていない、最近は氷魔法や冷蔵庫が作られているので少しづつ流通してるが、殆どが魚の流通に使われているので牛乳を市場で見る事は無かったりする。


「ふむ…ハルカのご飯だし美味しいのは確定だからそのシチューとムニエルも楽しみだな!」


「はい、ですが…ミュリさんは訓練場を壊しちゃいましたしねぇ…」


少しいたずら気味な笑みを浮かべ春華がニヤニヤしていた。


「そ…そんなぁ…反省してるからぁ…この通り!!」


すごい綺麗に土下座していた。

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