第42話:そろそろ充電が…
それから、負傷者の足を治して、全員に夕食を配ったりしてる内に夜になった、時計を見ると8時なったくらいだ。
「そういえば、そろそろ皆のスマホ、充電が切れるよなぁ…」
ソーラーパネルの充電器やモバイルバッテリーを持ってきてはいるがそろそろ限界だ。
「じゃあちょっと向こうの世界に行ってくるよ」
「うん、お願い」
「助かったよーおにーちゃん!結構写真撮ってるからバッテリーがもうヤバいよ~」
「おにーさん、私のこれも充電して貰えますか?」
電子辞書みたいなものを渡された。
「これは?」
「ポメラですね、こちらの世界のお料理とか纏めてるんです」
そう言って春華ちゃんが画面を見せて来る、そこには文字で纏められたレシピがずらっと並んでいた。
「写真はスマホで保存してるんですけど、文字を書くならそっちのが良いんですよ」
「へぇ~」
「私は…スマホが無いから…」
そう言う神楽坂さん、に言い忘れてたことを思い出した。
「そういえば、巴ちゃんがスマホ用意してくれるって言ってたな…」
「そうなんですか?」
「うん、どうしてもスマホの充電する関係で1週間で戻るって伝えてあるし、あったら持ってくるよ」
「ありがとうございます」
「でハ、旦那様よろしくお願いしまス」
メアリーにスマホを手渡される。
「見ないで下さいネ」
「見ないよ…」
「優希、巴ちゃんの予定聞いといてね」
「うん、わかってる~招待するつもりだし」
「ユウキ」
ぐいっとユフィに引っ張られる。
「ん?どうしたユフィ?」
「ユウキ、お願いがある」
「流石に連れて行っても朝には帰るよ?」
「それは、今度で良い」
「ユウキの世界の図鑑が有れば欲しい」
「図鑑?」
「出来れば文字の早見表も欲しい」
「私も!図鑑は難しいだろうから絵本を貰えると嬉しい!」
「わかった、探してくるよ」
神様から貰ったチケットを使い自宅へ飛んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「よっ…と…」
そのまま靴を脱ぎリビングに向かう、そこから大量の充電器でモバイルバッテリーとスマホを充電する。
そして自分スマホで巴ちゃんに通話をかけ―――0.5コールで出た。
『もしもし!優希さん!お帰りなさい!!』
『あはは、ただいま、巴ちゃん。今はどこにいるんだい?』
『今は御爺様との夕食会を終えて、自宅へ向かっている所です』
『そうか…じゃあ買い物に出てくるから、帰ったら部屋に行くね』
『はっ、はい!お待ちしております!』
話したい事は沢山あるが急ぐ必要があるから通話を切る。
(さて…着替えて買い物を済ませるか…)
黒のスキニーに黒のパーカーを羽織る、自室にポートを置いて家を出る。
「渋谷なら書店もあるだろうし、急ぐか…」
助走をつけて飛び立つ、長距離を飛んだことは無いけど、風に乗れればすぐに到着するでしょ。
こちらの世界でもユフィ制作の腕輪のお陰で効率良く飛べている。
30分程で渋谷に到着したのでビルの合間に降りて歩く、色々なファッション雑誌や図鑑や絵本を買った。
ついでに近くのケーキ屋でケーキを買い込む。
(よし、買い終えたし一旦帰ろう)
自宅にあるポートを起点に転移をした。
「あっ……やらかした」
靴を履いたまま転移したので部屋に靴のまま降りてしまった。
とりあえず靴を脱いで玄関に置く、後でコンビニでビニールシート買ってくるか…
それから掃除機とクイッ◯ルワイパーで綺麗にしてると玄関チャイムの音がした。
玄関をあけるとパジャマを着た巴ちゃんが居た。
「えへへ…待ちきれなくて、来ちゃいました」
「いらっしゃい」
飛び込んでくる巴ちゃんを抱き留めリビングに向かう。
「あっ…そういえば…」
立ち入ったリビングが配線でぐっちゃぐちゃだった。
「凄いですね…」
「すっかり忘れてたよ…」
「ごちゃごちゃだし部屋に行こうか…」
「はっはい!」
そのまま巴ちゃんを持ち上げ俺の部屋に行く。
「こんな時間だけどケーキ買って来たんだ、食べる?」
10時を過ぎているので女の子に聞くのもアレなのだが、一応聞く。
「うーん…」
当然渋い顔をしている巴ちゃん。
「嬉しいのですが…御爺様の所でデザートを食べてしまったんですよ…それでどうしようかと…」
そう言いながら俺の取り出したケーキを食べている。
あっ…既に食べたのね…しかも食べるのかい。
「そう言えば、お帰りは少し早かったですね」
「あぁ、とりあえずスマホの充電が皆切れそうだったし、そうだ用意してほしいものが…」
ユフィの分のスマホとサプライズでの品物をいくつか頼む。
「わかりました、ふぁぁ……」
「眠くなった?」
「えぇ…今日は忙しかったのもあるのですが…その後のお食事会が…」
欠伸を噛み殺す巴ちゃん。
「そうだったのか…じゃあ今日はもう寝るか…」
「んー…うん…」
抱き付いてくる巴ちゃんをすっぽり腕の中に収めていると、俺も眠くなってきた。
(今日はもう寝るか…)
温かな巴ちゃんの体温を感じていると瞼が重くなったので、そのまま眠りについた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝漂って来る匂いに目が覚めると腕の中の巴ちゃんは既に起きている様だった。
「時計…今6時か…」
昨日は日付変わる前に寝たのできっちり6時間は寝れた様だ。
起き抜けにリビングに向かうと巴ちゃんと綿貫さんが朝食を作っていた。
「おはようございます!」
「おはようございます♪」
「おはようございます。巴ちゃん、綿貫さん」
「片付けてもらったんですね、ありがとうございます」
「いえいえ~朝来た時はおどろきましたよ~♪」
「あはは…すみません」
「それと、神楽坂様のスマートフォンをお預かりしてきました♪」
「よく、渡してもらえましたね…」
「まぁそこは企業秘密です♪」
なんか怪しいことしてるんだろうな…
「とにかくありがとうございます」
「いえいえ~♪」
諸々の荷物をしまい終え、朝食を食べる。
「そういえば優希さん、一つお願いがあるのですが…」
「ん?どうした?」
「あの屑…久墨さんの事です」
「うん、それがどうしたの?」
「えっとですね…ちょっと状態が危険なんです」
「ふーん、何?止め刺す?」
「いえ…司法で裁くのに、生かしてほしいとの事なんですよ」
「生かす必要ある?」
「それが…」
どうやら久墨のジジイが孫が死んだら耀・春華・冬華を傷害罪として立件するとか言ってるらしい。
「弁護士の先生方は大丈夫と言ってるのですが…」
「まぁこのご時世ネットの玩具にされるのは嫌だしなぁ…」
ほんの一月前にダンジョンTuberや迷惑配信者に困らせられた所だ。
「面倒だし治療するか…」
「すみません」
「大丈夫、アイツらとはカタ付けたいと思ってたし」
「それじゃあ食べてしまいましょう♪」
「そうですね、いただきます」
「「いただきます」」
巴ちゃんの朝ご飯は卵焼き、鱈の西京漬け、ほうれん草の味噌汁の三種に白米という非常に満足いくものだった。