第31話:うわっ…この頭目、弱すぎ…
俺が盗賊のボスと相対してる間に、耀かユフィの魔法で森が吹っ飛んだ。
「あーあ…」
それを見てダミサンが驚いている。
「何なんだ…お前達…」
「え?雛菊さんの友達」
「聞いてねえぞ!こんな強いダチが居るなんて!」
目を剥きながら吠えるダミサンに呆れながら返す。
「いや、調べて無いからでしょ…」
「クソ!クソ!!この作戦は完璧なはず!!!」
「まぁまぁ、運が悪かったんだよ」
「クソォ!!まだだ!まだ俺が居れば負けねぇ!!!」
そう言って文字通り尻尾を巻いて逃げる、それを一定の距離で追いかける。
(どうせ、アジトに向かうんだろうしこの距離なら何かあれば先回り出来るから案内してもらおうか…それと念の為、皆の魔力を頼りに―――探索魔法)
すると皆、散らばってはいるがピンピンしてる様だ。
そうしてアジトの跡に着いたダミサンは驚いていた。
あーあ…崖ごと吹き飛んでるよ…これ…エアリスにどう報告しよう…
すると、入り口があったであろう付近に恐らく捕まってた子供と大人と気絶したヒナギクさんが檻で捕まっている状態で集まっていた。
「クソおおおおおおおお!……グフッ!」
それを見たダミサンが奇襲とばかりに春華に迫るが、そのまま綺麗に盾で吹き飛ばされた。
「春華!」
「あっ、優希おにーさん!」
手を振る春華に手を振り返しつつ近寄る、すると音を聞きつけたミュリが街道の方角から走って来た。
「ユウキ!無事だったか!」
「おーミュリ、大丈夫だったか?」
「あぁ、人質や牢に入れられてた人達の一部は助けた、次はここにいる人達だ」
ミュリが視線を向けると約半数の人が手や足が無くなっていた。
「怪我をした人は?」
「あぁ、一度運んでは、いるが…」
「結構な数が居るのね、後で治すとして…兎に角、ミュリと春華は避難を頼んだ」
俺とミュリの話の間ダミサンを捌いていた春華が振り返る。
「わかり!ました!」
そして答えると共に、大きくダミサンを吹き飛ばすと俺と交代する。
「てめぇら…何なんだ本当に…」
春華に傷をつけられまくったダミサンが恨めしそうに言う。
「うーん…名乗るのもなぁ…だって賢者の名前知らなかったくらいに無知だし…」
「馬鹿にするなぁ!!」
大振りな一撃を避ける、二撃目も三撃目も避ける。
「クソぉおおおお!!」
剣を弾いて蹴り飛ばす。
「グフゥ…」
蹴り飛ばされて片膝をついたダミサンが、ポーションを取り出し飲む。
すると傷つけられた体が回復する。
「まだやるの?勝ち目ないのに…」
「ふざけんなてめぇ!」
ダミサンが剣を振り下ろす。
「遅いなぁ…」
下がって来る剣の腹を裏拳で叩き、軌道を逸らすと剣は地面を砕いて止まる。
「んな!?」
ダミサンが剣を持ち上げようとする所を剣の背を踏んで押さえる。
「そういえばさっき手や足がない人質の人が居たけど…今まで何人同じような事した?」
「ハン!覚えてねーよ!」
「そっか、じゃあアジトに案内してもらったし。こっからは、手加減しなくていいか」
―――――ベキベキベキ。
剣を軸にして強化した足で左肘を蹴りつける。うん、折れたか砕けたな、おまけに肋骨も逝ってるか。
「ぐぎゃああああああああああ腕があああああ」
「おいおい。お前さ、今まで色んな人達にやってきたじゃん。それなのに自分がやられたら悲鳴上げるの?耐えてた子供達のが偉いじゃん」
「ふざけんなぁああああああ」
身体強化したダミサン肉薄してくる、当人は全力なんだろうけど…単純な速さは冬華のが早いんだよなぁ…
「遅いよ」
振り下ろされる剣よりも早く懐に入って飛び上がり、顔面に膝蹴りを入れる。
「うぶうううう」
鼻血を噴き出しながら悶絶する、鼻骨も折れたかな、あれ?虎って鼻骨あったっけ?
「ひょんにゃああああ!!!おへがぁ!!このおへがあああああああああ!!」
「何言ってんだ?わっかんないなぁ…ヒール」
もごもご言って聞こえないのでヒールを掛けてやる
「なっ…てめえ!!舐めてるのか!」
「いや、だって…何言ってるかわかんないんだもん」
俺の発言にキレたダミサンが顔を赤くする。
「舐め腐りやがってえええええええ」
頭の血管が切れる位に怒ったダミサンは魔力を全開にして魔法鎧を強化する。
(あれ?あれって…ミュリが使ってた奴だよね、それなら…)
「ふっ……!」
刀に魔力を込め魔法鎧にぶつける、その瞬間、魔法鎧が弾け飛ぶ、流石に下着は着てた様で下着一丁になる。
「へ?」
「あーあ…」
ダミサンはポカーンとしている。
「おーい、どうするの?まだやるか?」
流石に無抵抗な奴は無力化して終わらせるけど…どうするかな。
「まだだ!まだ終わらねぇ!」
ダミサンは獣人の切り札とも言える【獣化】を始める。
【獣化】は血の濃い獣人が使える技で硬質化した体毛と、一回り大きくなった体躯、爪や牙が鋭くなり、獣に近くなる。
「この状態の俺は!アストラ(獣人の国)でも5本の指に入る強さだ!」
「へぇ…じゃあ、ガリウス(獣王)とどっちが強い?」
「ガリウスは関係無いだろうぅぅぅぅぅ!!!」
普通の剣なら通らない体毛を盾に突っ込んでくるダミサン。
「はぁ…まぁいいか」
俺はそれに対して抜刀術の構えに入る。
「小鳥遊流刀剣抜刀術——閃」
魔力を纏わせずに、そのまま切り伏せる。
「————は?」
斜めから真っ二つになったダミサンが、血を噴き上げながら崩れ落ちる。
『ピッ』と血払いをして、空間収納から出した古布で血を拭う。流石、春華と冬華のお爺さんの刀、刃こぼれ一つ無い。
(全く…獣化したなら、身体能力上がるんだし。もう少し立体的に戦えばいいのに…)
血溜りに沈む巨体を見て思う、それよりも雛菊さんを回復しないと。
「いつの間にか、起きてたんですね。お待たせしました雛菊さん、今回復しますね」
そうして、檻に入れられた雛菊さんの元へ寄りパーフェクトヒールをかける、すると焼け焦げて炭化した脚、殴られ、腫れた頬が元通りになる。
「ありがとう…出鱈目な強さに、回復魔法。全く、君は規格外だな…」
「あーあはは…そりゃユフィとミュリの仲間ですよ」
「そうれもそうか…」
そのまま、檻の鍵を破壊して、雛菊さんをお姫様抱っこする。
「ちょちょちょ!流石に恥ずかしいぞ!」
「治したばかりで、立ち上がるのも難しいと思うので我慢してください。麻袋の様に担がれるよりは良いでしょ?」
「それは…そうなのだが…」
顔を真っ赤にして雛菊さんが、もごもご言い始める。
「ユウキ!」
その声と共にミュリが駆け寄ってくる。
「あれ?ミュリだけ?春華は?」
「今は、トウカと共に怪我人の手当てをしてくれてるよ」
「そっか、後で褒めないと」
「ハハ…ユウキ達らしいな、それで頭目は?」
「あぁ、倒したよ」
「全く、ユウキ君には驚かされたよ、最後の一撃は、私じゃ何が起きたのかわからなかった。気付いたらダミサンが死んでたんだもん」
ダミサンの死体を指差し雛菊さんが言う。
「そこまでか…それでヒナギクはどうしてお姫様抱っこされてるんだ?」
「あぁ、足を再生したんだけど。感覚が戻ってないだろうから運んでる」
「そうか、まぁ後は変わろう。念の為、ヒカリ達の元に行ってくれ」
「あぁ、私も万が一負けるとも思って無いが二人が心配だ」
「わかりました、ミュリお願い」
「任された!」
「あっそうだ、忘れてた…ダミサンの死体を空間収納にしまって…」
それから雛菊さんをミュリに受け渡し、青天井になった洞窟を歩く。
すると、仲良くお茶をしている二人が居た。