|幕間|だれでもいい…助けてくれ…
◇雛菊side◇
目が覚めると見慣れない場所だった、しかも手は縛られている。
「ここは…」
「おう、目が覚めたか」
ドスの利いた低い声に振り返ると、虎獣人の大男厭らしい笑みを浮かべがそこに居た。
「いらっしゃい、稀代の魔法鎧職人のヒナギクさん」
「ここに無理やり連れて来たのはアンタ達だろ」
「まぁ、そうだな!」
ガハハハハハと酒臭い息で笑う男
「それで、レディーをこんな黴臭い所に招待して、何の用だい?」
「まぁまぁ、気を急くなよ、まずは余興を楽しもうじゃないか!」
そうして連れてこられたのは裸の男女、しかも両手を縛られ体中に痣や切り傷がある。
「何するつもりだ」
「ッチ、うっせーなキャンキャンキャンキャン、発情期の犬か」
そういって大振りのナイフを投げつける、ナイフは縛られた男性の腹部に吸い込まれる。
「ひぎゃっ」
「きゃ-ーー」
「うるせえな!」
悲鳴を上げた女性が殴られ吹き飛ぶ、そして大男はナイフの刺さった男性を軽々持ち上げる。
「おっ…ドンピシャ!」
確認した後にナイフを抜き去り、男性は悶絶する。
「さっすがお頭!」
「いつ見ても惚れ惚れするナイフ投げだ!」
いつの間にか居た大男の取り巻きが沸き上がる、大男は気を良くしたのかニタニタしながらこちらに近づいてきてしゃがみ込む。
「さて…本題だ、ここにお前を生かしてきた理由はわかるな」
「ふん!それを私が飲むとでも?」
「そうか…残念だなぁ…おい!ガキども連れてこい!!」
「待て!何するつもりだ!」
「いやな、お前が断るから、可哀想な可哀想な子供が増えちまうなぁ~と思って」
そうして連れてこられたのは7~10歳位の子供達だ皆、猿轡を付けられ首輪が付けられている。
「さてどいつにするかな~」
子供達は皆、怯えた目をしている、こうして他の子が犠牲にされる様を見てきたのだろう…
「よし、決めた、髪色が独特なお前だ」
選ばれたのは虹の様な綺麗な髪の少女だった。
「止めてくれ!わかった!作るから!」
「はぁ…何を言ってるんだお前?」
「え?」
「そもそもテメエが一度拒否したからじゃねーか、これはその罰だ」
そう言って大男が剣を振り上げる。
「やめてえぇぇぇぇぇぇぇ」
飛び散る血と共に飛び散る髪、足まであった髪は足と共に切り落とされ血溜りが出来上がる。
「おい、ヴィクアンこのガキの傷口を焼いておけ、その手の趣味の貴族に売りつける」
「全く人使いが荒いですね…―――火球」
ヴィクアンと呼ばれた男が火球を出して女の子の脚を焼く。
「ん゛ん゛————」
肉を焼く痛みで女の子がバタバタと暴れる。
「ぎゃはははは」
「何だあれ!死にかけの虫かよ!!」
そう言いながら周りの男たちは笑う。
「この下種野郎が…」
「あん?お前またもや勘違いしてるな…」
「何がだ!」
「はぁ…俺達がお前に手を出さないとでも思ったのか?」
その直後剣が振られる音と共に私の視点が崩れ落ちた。
「ヴィクアンこのアホ野郎脚も灼いとけ」
「本当に、人使いが荒いですね…殺さない様に焼くの大変なんですよ…―――火球」
あきれながら火球で私の脚を焼く
「ぎゃああああああああああああ」
「いいですねぇ!やはり火は素晴らしい!香しく焼ける匂いと人の悲鳴!本当に興奮します!!!!!」
「あああああああああああああ」
「はぁ…はぁ…少し焼き過ぎましたね…あぁこの感じがもうたまらなくて、絶頂てしまいました♪」
視界が滲み痛みで朦朧とする。
「おう、わかったか?」
「(ヒューヒュー)」
「おい、伸びてるとこ悪いが、大事な事言い忘れたぜ」
大男が私の髪を掴み持ち上げる。
「明日までに俺の魔法鎧を作れ、作れなきゃガキを1人殺す、期限は日が真上に来るまでだ」
「お頭!それってお頭が起きる時間じゃねーですか!」
そう言ってる部下に一睨みして大男が続ける。
「それから、1時間遅れる毎に大人を殺す、それでも間に合わないなら子供を殺す、わかったか?」
そのまま私を投げ捨てると大男は去って行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから私は痛む足を引きずり布の元へたどり着き、布を持ち上げ裁断し縫い合わせていく。
「私が…私がやらないと…」
じくじく痛む足を庇いながら私は残された子供達の前で縫い続けた。
そして朝になり男達が起きてきた、私の手は痛みで刺し違えた針によってボロボロになったが、残っていた【吸積魔石】を使いなんとか一つ完成した。
「ふん…流石の手際ですね、両足が焼かれたとはいえ完璧ですね」
「やる事はやったわ!さっさと捕らえた人達を開放しなさい!」
「ふむ…またもや何か勘違いしていますね…」
「へ?」
「次は私の分を作るんです!、その次は他の団員を!ちなみに半日で1着作らなきゃ子供達を殺します―――火球」
ヴィクアンは魔法で出来た火球を子供達に近づける。
「わかった!わかったから!作るから!!」
私の言葉に満足したのかヴィクアンは魔法を明後日の方向に飛ばす。
「ざーんねん、焼きたかったなぁ…」
「…………」
「それではお昼を楽しみにしています♪」
そう言い残し鼻歌を歌いながらヴィクアンは完成した魔法鎧を持って行った。
――あぁ…この絶望は終わらないのだと…気が遠くなった。
「だれでもいい…助けてくれ…」