第19話:工房都市へ到着
始祖様に【世界樹の実】を渡された後、ユフィにせかされ春華と冬華の元へ飛んだ。
「っと…到着」
到着するとそこは粗雑な物置…いやこれ部屋だ…部屋の半分が書籍なり素材なりで埋まっている。
正面を見ると皆が途方に暮れていた。
「お待たせ、皆」
「みんなおつかれ~」
「果実!果実!!」
俺達の呼びかけに4人が振り返る。
「あっ、優希お兄さん!耀おねーさん!それとユフィさん!」
「優希おにーちゃん!耀おねーちゃん!ユフィさんお帰りなさい!」
「上凪さん!耀ちゃん!ユフィさん」
「ユフィ!片付けとけと言っただろ!足の踏み場も無いぞ!」
ミュリの叱責に聞く耳持たずなユフィ。
「全く…ヒカリお帰り、ユ…ヒュウキ…おっ…お前もな!」
「ミュリ…」
「ミュリおねーさん…」
「ミュリさん…」
唐突にテンパるミュリに呆れてる皆。
「予定より早かったですね」
「1日で見つかったからね…」
「そうだったんですね…」
「ユウキ♪ユウキ♪早く♪出して♪」
「「「「!?!?!?!?」」」」
ウッキウキなユフィが俺に抱き付いて【世界樹の実】を出せと要求してくる、その言い方語弊がありそうだからやめて欲しいんだけど…。
ほら、皆凄い顔で見てるじゃん!
「わかった、わかった。耀の杖の加工はどこでやればいいの?」
「切り出しは、ミュリに案内してもらって。それより、早く出して♪」
「はいはい…」
【世界樹の実】をとりあえず2つ出すと、素早く持っていかれた。
「むぅ…二つ…」
「とりあえず、弄るようなんだから良いでしょ?」
「仕方ない…」
そのままユフィは自分の研究室に入って行った。
「凄い情熱ね…」
「うん、あのユフィの熱心さには舌を巻くよ」
「それじゃあ、皆の鎧を作りに行こうか…」
「コホーッ、コホーッ」
振り返るとなんか真っ黒な鎧の頭を被ったミュリが居た
ダース〇イダーかよ…
「まぁ…ミュリの、あの格好は放っておいて…それでどこに行けばいいんだ?」
「わたっ、私が道案内するぞ!」
「それじゃ、頼んだ」
胸をドンッと叩いたミュリ…痛くないのかな、あれ…
そうして皆外に出て行く、俺も続いて外に出るとすごい光景が広がっていた。
様々な所で立ち上る蒸気、動いてる機械に店先で加工をしている職人、この街には一度来た事があるがここまで活気があった記憶はない。
「すごいな…」
「邪神の討伐後、ここは急速に発展したんだ」
いつの間にか隣に来ていたミュリが、話しかけてきた、ってか大丈夫なのだろうか。
行商人の馬車が通り、子供も大人も楽しそうに店先の商品を眺めている、屋台では職人さんだろうか、ケバブらしきものを買っている。
「あれ?あんな料理あったっけ?」
「ユウキが言ってたものを参考に作ったんだ…確か、トウモロコシの粉で作った生地に。焼いた肉か衣を付けて揚げた肉を、野菜とソースと共に丸めて食べやすくしたものだ」
「あぁ、そう言えばこの世界でジャンクなものが食べたくて作ったんだっけ…でもあの時は茹で肉とソーセージだったんだけど…」
「あぁ…それはこの街は職人が多いからな、ガッツリしたものが食べたいから大きく、具沢山になったんだ」
確かに俺が作った奴は、上手く出来なくて生地がケン〇ッキーのくらいの大きさだったもんな、職人さんには足りないだろう
「美味しそうだな…加工屋に行く前に食べるか…」
「さんせーい」
どこからか現れた冬華が手を上げながら主張する。
「わ、私も食べたいです!」
料理に興味津々な春華も食べたいと言って来る。
「そうだな、食べるか」
そのまま皆で並んでいると耀と神楽坂さんが飲み物を買ってきた。
「ただいま~」
「おかえり」
「お帰りなさい」
「おっかえり~」
「あぁ、ミックスジュースですか、良いですね」
そして皆に飲み物を渡していく二人、そこでふと気づいた。
「あれ?二人共お金は?」
「エアリスさんから貰った」
「そうだったのか…」
そしてトルティーヤ風ラップサンドを買って食べ歩きをしていると加工屋へ到着した。
「すみませーん」
ドアを開けるとベルが鳴る、店内はうっすら埃が積もっているが商品は小奇麗にされている。
「いらっしゃーいって、勇者様じゃん。元の世界に帰ったって聞いてたけど、どしたん?」
鎖帷子と魔石を装着した手袋を付けた小柄な女の子が出てきた。
「えっと……ユフィに言われて、杖の加工をしてもらうために来たんだけど。」
「そかそか、ウチに頼むとか相当難しい品なんだろうね」
「えっと…世界樹の森の樹ですね」
「あぁ~それならウチに頼んで正解や!ほらこっちだよ」
女の子に案内され店の奥の工房に行くと滅茶苦茶でかいチェーンソーがあった。
「ほらそこに置いて、今切っちまうよ」
作業台を指差され空間収納から枝を取り出す。
「んん?今どこから出したんだい?」
「あー俺の魔法です」
「流石勇者やなぁ…」
けたたましく鳴るチェーンソーで枝を切っていく、何故かスパスパ切っていく。
チェーンソーってもっとゆっくり切るイメージなんだけど…
「ほい、終わった」
瞬間で加工された木材が2本出来上がり渡される。
「これをなら十分使えるだろう」
「ありがとうございます」
「細かい装飾は彫刻師のが良いだろうからね、まぁ実用品ならシンプルでも良いかもだけどね」
「わかりました、お代は?」
「ユフィにつけとくさ、それと今度珍しい酒を飲みたいね」
目の前の少女としか言えない存在に酒を要求されたので変な顔になる。
「あれ?聞いて無いのか?」
「私はドワーフとエルフの混血でね、年齢は80を超えてるんだよ」
「だから見た目が若いんですね」
「という事だ、次はうまい酒を頼むよ」
「了解です、それで…お名前は?」
「あぁ、酔蓉だね、酔芙蓉って花から名付けられたんだ」
「酔蓉さんですね、わかりました」
そうして酔蓉さんの工房から耀達の魔法鎧のお店に向かうのであった。