第4話:ただいま②
車に乗りメアリーの入院している病院へ着くと、すぐにメアリーの居るICU(集中治療室)へ通された。
「あのぉ…本当に外していいんですか?」
担当医師に怪訝な顔をされつつ聞かれる。
「大丈夫です、この方は回復魔法が使えますので」
「はぁ…危険だったらすぐ止めますよ?」
「その時は私も全力で止めます」
「ははは…(怖い)。とりあえず、メアリーの体から治療していくか」
先ずは背中の傷からヒールかけていく、医師の方にも手伝ってもらい皮膚に癒着したガーゼ等を切り離していく。
「全く、魔法ってのは無茶苦茶ですね。こんな痕が残る傷も治ってしまうなんて…」
「あはは…」
(体細胞を復元してるから治療とはまた違うんだけどね!)
「じゃあ次は骨折ですか…」
掛けられている布団の内側は痛々しい金具や固定具で脚が拘束されていた。
「原理はわかりませんが、そのまま治すと骨が曲がりかねますから一度切開をして、骨を配置し直しましょう」
復元だからそんな事は無いけど…後腐れない様に指示には従いますか。
「わかりました、骨の再生はしますのでお願いします」
それからメアリーを手術室に移して治療を開始した。
メアリーの脚が開かれ、砕けた骨が覗き始める。
「細かい骨は取り除いてますから、このまま再生してもらって大丈夫ですよ」
「わかりました、【復元】」
【復元】を使い骨を復元する。今回は事件前の状態に戻すつもりだ。
「うそん……」
医師の方が口をあんぐりしている。
それから押さえてもらい【回復】を使う、そのまま傷を癒していく。
ついでに膝も【復元】していく。
「膝はもう治したんで、次行きましょう」
「はぁ…」
ドン引きされながらメアリーの治療をしていく。
それから反対側の脚も同様に治療し終えて終わらせる。
「これで終わりですね、お手伝いありがとうございます」
「あっ…あぁ…こちらこそ、貴重な物を見せてもらった…」
会話を終え手術室を出ると耀達が待っていた。
「後はメアリー自身がいつ目を覚ますかだね」
「それはどうにもならないの?」
「そうだね…無理矢理起こせるけど、メアリー自身の意思で起きてもらいたいかな…」
「それが良いわね」
「そうですね」
「では優希さん採血と指紋を採らせてもらいますね」
布良さんが看護師の方を連れてくる。
採血台に左手を乗せる、チューブで縛られアルコールを塗られる。
「ちくっとしますよー」
その言葉に思わず顔を背けてしまう。
「そういえば優希って昔から注射苦手だったよね~」
「優希さん…剣で刺されたりしてるのに、注射は苦手なんですね」
鳳さんにくすくす笑われる。
「戦闘中だと気にならないんだけどね…やっぱり子供の頃についた苦手意識は払拭されないよ」
「そうだ、優希、優希のお父さんとお母さんには連絡する?」
「うーん、これから又すぐに、向こうの世界に帰らないといけないからなぁ…」
「そうだとしても会って行きなさいよ…」
「でもどんな顔して会えばいいのか…」
「そんなの、しれっと『ただいま~』くらいで良いのよ、一生会わないで生きていくつもりなの?」
「いや、そんなつもりは無いけどさ…」
「じゃあ良いじゃない、しれっと会って、しれっとまた『行ってきます』で」
「そうですね、一度はお会いになられた方が良いですね、それに絶対驚かれますから…」
「まぁそりゃ死んだと思った息子が『実は生きてました!』とか言ったら俺でも腰抜かすよ」
「ともかく、会う事。決定!」
耀が各方面に連絡をしている、どうやら大集合するみたいだ…
どうしよう、変に緊張してきた…なんて話をすればいいんだろ。
そのまま車に乗せられ自宅へと連れて行かれるのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「という訳で、優希が帰ってきました」
「いや、耀さん!唐突に何を!?」
自宅には俺の両親、耀の両親、厳徳さんに巴ちゃんの両親、春華と冬華の両親は今こっちに向かっている。
「あぁ…うん、お帰り優希…」
「ほら母さんが微妙な顔してるじゃん!」
「あっれー?もうちょっとこう…感動の再会!みたいになると思ったのに…」
「いや、嬉しいは嬉しいのよ。その前の神様が居てその神様が貴方達二人の子孫って…」
「寧ろ、そっちのがびっくりした」
父さんのその発言に頷く親達、あの厳徳さんも開いた口が塞がらないみたいだ。
「しかも優希君、こんなかっこ良くなったなンテ…」
エリナさんが少し熱っぽい視線を向けてきた。
「エリナ!?」
「お母さん!?」
「そうねぇ…元から可愛い系だと思ってたら、カッコいい系もカバーできるようになったわね…」
「母さんも何言ってるの!?」
「優佳!?」
「どうじゃ?…この機に本当にアイドルとして売り出さないか?」
「厳徳さんまで…」
「いやいや、お主の頼みで作った芸能事務所、Kプロからの移籍も居るが花形がおらんくてのう…それに神堂グループの会社をいくつか吸収しててそれなりに資金が欲しい形なんじゃ」
「えぇ…」
「まぁ…世間にお主の生存をどのように伝えるかを考えないといけないのう…」
「まぁともかくだ。優希、良く帰って来た」
「いつも耀を守ってくれてありがとうね、優希君」
「少しどころか、かなり驚いた事実引っ提げてきたけどね」
「まぁ良いじゃないですか、貴方の仕事が増えるだけで」
「簪さん!?まぁ確かにこの事実だけでこの国いや、世界が揺らぐけどさぁ……」
その姿を想像したのか方厳さんが、げんなりとした顔をしている。
「あはは…なんかすみません…」
「いいって、それが仕事だしね」
「なにはともかく」
「「「「「お帰りなさい、優希(君・さん)」」」」」
全員から笑顔を向けられた。
「ほら、大丈夫だったでしょ?」