第52話:ごめんなさいごめんなさいごめんなさい ※残酷描写有り
クズ男(久墨)が一人で戻り1時間後、スタンピードがやってこない為外で待機している探索者にもしかしたら優希が未だに戦ってるかもしれないという空気が流れ始める。
「俺は助けに行くぞ!」
「俺もだ!」
「私も行く!」
「私も行きますわ!」
「行かなきゃいけないでしょ…」
「………(コクリ」
神楽組の面々も行く様だ。
「私も行きます!」
「春華が行くなら、私も行かないとね…」
「駄目よ皆!」
今回の監督責任者の綴さんが叫ぶ。
「彼の話を聞けば、一度崩落しているのよ!そんなダンジョンに向かうなんて危険すぎるわ!」
「だからと言ってこのまま彼を見捨てるのか!」
「行かせてもらう!!」
そう言って彼らはダンジョンの内部へと入り込んでいった。
「冬華行こう!」
「うん!春華!」
そう言って飛び出そうとする二人の手を引っ張る。
「駄目でス、お二人にもしもの事があれバ、私が優希さんニ顔向けできませン」
「「でも!」」
「皆さんハ、ここで待ってて下さイ。私が行きます」
私は優希さんから貰った愛銃を担ぎ外に出る。
「少しきな臭い事もありますので、その際は迅速に動けるようお願いします」
そう言って部屋を出る。
◇◆◇◆◇◆◇◆
私は気配を消しながらダンジョン内部を進んでいく。
するとあの屑野郎と他国の工作員らしき人が何かを話している所に遭遇した。
「まさか、スタンビートも自由自在に起こせるとはな…」
「いえいえ、我が国もモンスターの研究の一環を試すことが出来て良かったです」
「ふん、これで目障りな奴は消えたしお前達は実験が出来て万々歳だな」
「はい、では。死ねえええええええ」
和やかな場面から唐突に工作員の男が銃を取り出す、その引き金のよりも早く久墨の手が男の頸を刎ねていた。
「馬鹿かお前、殺すならもっとうまくやれよ、お前もだ」
「ごぷっ……」
もう一人の工作員も片付け久墨は踵を返す。
「さて…アイツが死んでるか確認しないとなぁ…」
(これは…不味いですね…)
先程の取引の時から動かしているカメラで工作員の顔等を撮る、指紋やDNAを採取しておく。
(身分を示すものは…あった…偽装パスポート)
偽造品だが証拠になるだろう、以上を手早く保管して、久墨の後を追う。
崩落した現場であるところまで着て久墨は走り出す、来た道を戻り下へ降りるつもりらしい。
私はそこから飛び降り最短ルートで優希さんを追いかける。
そうして階層のセーフエリアである階段の所まで行くとそこに彼は居た。
(居た!優希さんだ!)
あの男より先に見つけた喜びと生きていた事に感謝し、飛び出そうという私の足はそこで止まった。
影に隠れていた久墨が優希さんの首を切り落としたのだ。
「駄目じゃないか…ちゃんと死んでなきゃ…」
そうして遺体を蹴り落とした、横に転がり落ちてくる愛しい人の死体。
顔を上げると狂気の笑みを浮かべたその顔と目が合う。
「お前!!一体いつから!」
叫びながら剣で切りかかってくる。
背中に走る熱と痛み、咄嗟の事だったが体が動いていた。
「守れなかった…助けられなかった…」
再度こちらへ向き直り切りかかる、私は咄嗟に掴んだ優希さんの小太刀で受け切る。
「ぐあぁ……」
(吹き飛ばれさた?体は?私生きてる?)
そこで優希さんと目が合う、死んでいるはずだがこちらを見て「逃げろ!」と叫んだ。
その行為に驚いた私と久墨は振り返り固まる、そして走り出した私は全力で階段を駆け上がる。
一秒でも早く!
誰よりも速く!
何よりも疾く!
皆にこの事実を伝えなければ!
優希さんが作ってくれたこのチャンスを逃さない様に!
全身のバネを使い跳び、壁を蹴り、音を置き去りにする。
身体の各所に痛みが走るが気にしている暇は無い…今は一秒が惜しい。
止められなかったあの一瞬の後悔、そして絶望を糧に。
ダンジョンを飛び出しそのまま耀さんの元へ。
飛び込んだ部屋には皆が居た。
「メアリー!?」
「メアリーさん!?」
「メアリーお姉ちゃん!?」
「メアリー……さん…」
「これヲ皆さん二……」
私は彼の最期を映した動画を皆に転送する。
そうして膝から崩れ、ズタボロになった脚が軋み悲鳴を上げる。
筋肉が痙攣を起こし、どこで切ったか足の肉が裂け、折れた骨が皮膚を突き破っていた、背中の痛みはピークになり血が溢れ出す。
「綴さん!救急車!!」
「そんな事ハどうでモ良いでス!見て下さイ!」
「……っ!!」
映像を見た耀さんが息を呑む、見ていく皆が次々言葉を喪う。
(大事だった銃も優希さんが伸ばしてくれた髪も全部奪われた…)
だがそんな痛みよりも、今胸に走る痛みのが勝っている。
「ごめんなさイ…守れなかっタ…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
最早痛みなのか、憎しみなのか、悲しみなのかわからない涙があふれる。
遠くなる意識と共に誰に向けたかわからない悲痛な謝罪は空虚に消えていくのであった。
作者メアリーに頑張らせすぎぃ!