第48話:ダンジョンの異変①
神楽坂さんの救出が失敗して2日、何してたかも判らない様な状態が続いていた。
「おーい優希?おーい?」
「返事ありませんね…」
「全く…婚約者よりも別の女の事考えるなんて…」
「おーい優希、おっぱい揉む?」
「揉む」
「ひゃう…せめて一呼吸おいてからにしてよ」
「ちょ!おにーちゃん!私のいきなり揉まないですよ!」
「じゃあ…私は…えいっ」
「失礼しまーす」
そうして前後でサンドイッチしてくる春華と巴ちゃん。
「とりあえず元気出た?」
「出た…」
「そうそう、優希に嬉しいご報告」
「ん?どした?」
「綴さんから連絡が来てて明後日にダンジョンの調査をお願いしたいみたいなのよ」
「調査?」
「なんでもいつもならモンスターがそれなりに多く現れるのに数が全然でないのよ」
「あーそれは不味いかもしれないな…」
「ん?なんで不味いの?」
「あーモンスターが少ないってことは内部に上位種が生まれてる可能性があるんだよ、ダンジョン内も弱肉強食の世界だし、前に俺達が戦ったシルバーオーガなんかは明らかに上位種だからね、まぁあれは上位種の中でもさらに選りすぐりのエリートだからめったに現れないけど、オーガ位なら生まれてる可能性があるね」
「あのオーガ位…」
「春華…出会ったらリベンジマッチだね」
「うん」
「あー二人共いいか?」
「はい?」
「どしたの?」
「えっと…二人ならもう多分シルバーオーガ位なら余裕だよ」
「ふぇ?」
「そーなの?」
「まぁ確証は無いけどその下の上位種のレッドオーガとかの奴なら全然余裕で倒せちゃう、油断は禁物だけど」
「ねぇねぇ私は?」
「耀なら3体まとめてでも倒せるかな…例の覚醒状態使えばだけど」
耀のあれは相性が本当に良いからね…遠距離から体を削り取られる技とか近接しか出来ない相手には地獄だよ。
「ともかく調査だけど、参加しよう。それって俺達だけ?」
「いーや他の中級探査者や神楽組も参加するみたい、綴さんに全員参加しますって連絡あったみたい」
「そうか…」
神楽坂さんが元気そうなら…うん。
「まーた他の女の事考えてる!」
「ホント冬華ちゃんは鋭いなぁ…」
「私にはぜんぜんわかりません…」
「すごいですね…」
「これは…わからせないとね…」
「ああの耀さん?」
「そーだねー」
「冬華さん!?」
「これは…仕方ないですね」
「春華さん!?」
「わ、私も頑張ります!」
「巴ちゃん!?」
「でハ、私はこれデ」
「ちょ!メアリー助け!たすけてええええええ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「あぁ朝日が目に染みる…」
各々が好きな体勢で寝ている所を通り抜けシャワーを浴びると頭がすっきりしたので部屋に戻り着替える。
「最近ダメ人間になりつつあるんだが…大丈夫かな俺…」
「そうですネ、大丈夫かト…」
「うわぁ!ビックリした!」
「おはようございまス、優希さン」
「気配を消して背後に立たないでくれ…」
「すみません、リビングを通るのに忍び足をしてたのを忘れてました」
「絶対楽しんでるでしょ…」
「そんな事ハありませン」
とメアリーはそっぽを向いた。
「それで、ただからかいに来た訳じゃ無いんだよね?」
「そうでしタ、コレ渡してくれト、神様かラ」
メアリーが差し出してきたのは金色に装飾されたシンプルな指輪だった。
「これを?」
「はイ、肌身離さず付けとくようニ、だそうです」
「指はどこでもいいの?」
「サイズは変わるみたいなのデ、大丈夫みたいでス」
試しに右手の薬指につけたら取れなくなった。
「ちょ!外れない!」
「凄いですネ、私とお揃いでス」
メアリーの右手に同じ指輪が光る。
「やめて!浮気を疑われる!」
「大丈夫でス、全員に渡すように言われたので全員分ありまス」
「それ先に言って!」
「てへぺロ」
可愛いな!ちくしょう!
その後起きてきた皆に指輪を渡して全員の右手薬指に着ける儀式が急遽行われた。
お陰で遅刻ギリギリだったけど。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから二日後、G県M市にてダンジョンの調査という事で関東圏の探索者達が集まっていた。
「いらっしゃい優希君、今回は来てくれて嬉しいわ」
「お久しぶりです綴さん」
「今回の調査割ときな臭い部分があって私も駆り出されたのよ。だから気をつけて…他国の諜報員も入り込んでるって噂だし、何も無いと良いけど…」
「わかりました、気を付けます」
「じゃあ頼んだわよ」
そう言って綴さんは本部のある所へ歩いて行った。
辺りを見回すが神楽坂さんの姿は見当たらない…仕方ない皆の所へ戻るか。
それから説明と連携の為の各々の話し合いが終わった頃神楽坂さんを見かけた、一人だけだったので近づいて話しかける。
「神楽坂さんお久しぶり」
「チッ、何ですか?」
「久しぶりだし挨拶をと思ったんだけど…」
「チッ、話しかけないで下さい、迷惑です」
そう言って立ち上がり歩いて行ってしまった。