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第38話:神楽坂さんの絶望

「アイドル、やらないか?」


そう神楽坂さんのお父さん(巧さん)に言われ固まる俺。


「はぃ?ア…アイドル?」


「そう、アイドル」


「あの歌って、踊るやつですか?」


「そう、その歌って、踊ったりするやつ」


「いや…俺には…無理じゃないですか?」


「うーん、俺の予感だと君人気出ると思うんだよね」


「そんな訳無いですよ、俺なんて顔も良くない、ダンスも踊れない、ただの素人ですから」


昔から周囲に「冴えない顔」だの「パッとしない顔」って言われたり、学校のダンスの授業では何時も平均点かちょっと上、それも耀が居て初めて平均点以上になっている、俺一人じゃ補習寸前なくらいだ。


「うーん…そうは言ってもね…ダンスは学校の授業でやってたりしないかい?」


「そうですね、学校では体育の時間でやってます」


「そのダンスは創作?それともコピー?」


「創作ですね…どうしてそんな事聞くんですか?」


「いやね、ダンスが出来ないにも数種類あってね。ただ単に運動が出来ない人とかは除いて、創作のダンスが得意な人間と、コピーダンスが得意な人が居るんだよ。まぁアドリブが得意な人とそうでない人の違いだね」


「はぁ…」


「物は試しだ、鈴香ちょうど今練習してるのがあるよね、見せてあげなさい」


「え゛っ……」


「なんだ、覚えてないのか?もうすぐお披露目だというのに……」


「いっいえ…できます…」


目の前で鈴香はおもむろに靴を脱ぎ捨て、靴下を脱ぐ眩い程の白い足が現れた。


その足で踊る用のスペースへ行く、そのまま静かに動き始めたと思ったら曲の始まりと同時に体全体の動きになる、ステップを刻み体が激しく動く、かと思ったら曲の落ちる瞬間にはピタッと制動する、そうしてサビに入り今度は引き寄せられるようなダンスになる。


「すごい…」


今までテレビとかではアイドルのダンスを見ていたが動きが違う…探索者の身体能力を使った動きが緩急をしっかり分けているのだろう、見せたい部分と魅せたい部分が素人の俺でもよくわかる。


その動きに魅せられてる間に神楽坂さんのダンスは終わった。


「うん、ちゃんと練習はしてるようだね」


「お母さん…」


「まぁ詰めが甘い部分があるけどそこはまだ練習だね、この後は?」


「練習場でレッスンです」


「よろしい」


そうして二人して細かい動きの修正点などを話し合っている。


「こうなってしまうと二人は当分帰ってこないね。それじゃあ上凪君、話の続きだ」


「話の続き?」


「そうだよ、ウチの商品をタダで見せたんだ、君も見せてくれ、出来るはずだよ」


「でも…」


「まぁまぁ…ほら先程鈴香がやった動きでいいから…」


無理矢理立たされて、先程まで神楽坂さんが踊っていたスペースに行く。


「さっき、神楽坂さんがやってた動き……こうかな…」


思い出しながら先程見た神楽坂さんの動きをトレースする。


「ここはこう…ここをこうして…この部分は…」


「ほう………」


「凄いわね……」


「チッ……」


そうして踊り終えると不思議な達成感と共に目を輝かせた巧さんと里香さんが駆け寄る。


「やはり!俺の目は正しかった!!君は凄い存在だ!」


「えぇ!!ビジュアルも可愛らしく王子様系に出来るし、このままいけば絶対売れるわよ!!」


「え?ちょっと待ってください!」


「早速契約を!君みたいな稀有な存在は逃しちゃいけない!」


「あぁ…今からデビューが楽しみね!!衣装はどうしようかしら…」


俺の事は無視、神楽坂さんの事は放置して俺に詰め寄る二人。


「待ってください!俺はやりませんよ!ダンスだってなぜか踊れたんですし」


「はぁ?何を言ってるんだ?今君は目の前で完璧なダンスを踊ったのに何を言っているんだい」


「それで踊れないというなら、鈴香のダンスは素人同然、ゴミ屑レベルよ!、貴方には才能がある!それを生かさないなんて本当に人類の損失よ!」


その里香さんの言葉に神楽坂さんが絶望と悲しみに満ちた表情になる。


「なんてこと言うんですか!神楽坂さんのダンスは素晴らしかった!それなのになんでそんな事言うんですか!」


神楽坂さんのダンスは凄かった、それなのにそんな言い方するなんてあんまりじゃないか!


「いいえ!あの子のダンスは未熟も未熟大多数の中に埋もれたら!本当に才能のある人間と比べたら一瞬で地に墜ちるわ!」


里香さんの言葉にショックを受けた神楽坂さんは涙を堪えながら荷物を纏めそのまま部屋の外に駆け出してしまった。


「神楽坂さん!!」


追おうとした直後二人が前に立ちはだかる、今はそれどこじゃないのに…


「逃がさないぞ…」


「逃がさないわ…」


どう考えても二人共異常な執着をしている。


(入り口に立たれてる…となると窓しかないか…)


窓に駆け寄り鍵を開ける、開いた窓から入り込む夏の熱気に顔を顰めるが今はそんな暇は無い、そのまま身を外に躍らせ飛び降りた。


(今は神楽坂さんを追わないと!)


『我が風の翼よ、その力をもって天を翔ける力となれ!———エア・ウィング!』


耀がこの間使っていた飛翔(滑空)魔法と簡単な風魔法を展開しそのまま空へ駆け上った。


諸々解説を

鈴香ちゃんは血のつながりはあるのですが才能にいまいち恵まれなかった子(それでも普通の人より優秀です)、才能をカバーできる努力の人です。


主人公は自身でダンスを創るノウハウはありませんが、学習能力が異常に高いんです。

異世界でも発揮されていて剣を握った事も無い主人公は1月で一流の剣士並みに剣が振れる様になりました、それも5年という歳月でさらに磨かれています。

実は主人公が小鳥遊流の剣術を使えたのはここに秘密があります。


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― 新着の感想 ―
 出来る人でしょうけれど、最低の親ですね。
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