第11話:綴 縫衣-つづりぬいえ-【改稿版】
◇上凪 優希side◇
待合所に戻ってくると耀は、スーツを着た見知らぬ女性二人と談笑していた。
二人ともかなりの美人で、一人は大学生くらいだろうか? 金髪に小麦色の肌をした、俗にいうギャルと呼ばれるそこそこ苦手なタイプの人。
もう一人の女性は、日本人なのかわからないが、外国人である耀のお母さん並みに、日本人離れしたスタイルで、紫紺の髪色をした女性だ。
「割って入るの気まずいな……待たせただろうし、飲み物でも買って来るか」
自販機に向かい自分含め飲み物を人数分買って戻る。
「耀、おまたせ」
耀に声を掛けると、女性二人もこっちに視線を向ける、しかも物凄くニヤついた顔だ。
(なんだろう……あまり良くない予感がする……)
そう思っていると、紫紺の髪色の女性が立ち上がり、こちらに名刺を差し出してくる。
「はじめまして貴方が優希さんですね、私内閣府のダンジョン庁、ダンジョン対策委員会、ダンジョン対策課の綴縫衣と申しますお見知りおき下さい」
顔を上げた綴さんは、青い瞳をこちらへ向けてくる。
「あっ、お……私は上凪 優希です、どうぞよろしくお願いします」
名刺を受け取り握手をする、手も白魚のような綺麗さだ。
「俺呼びで大丈夫ですよ、私も堅苦しいのはあまり得意ではありませんので」
「そうなんですね。じゃあ、俺は上凪優希です、そこに居る耀の幼馴染をやらせてもらってます」
「はい、よろしくお願いします! それでですね、先程耀さんのジョブについてお話させていただいておりました」
顔つきが変わる綴さん、何か不味い事があったのだろうか?
「耀のジョブですか? 何かあったんですか?」
「はい、その件につきましては別の場所でお話し致しましょう。お二方にも許可は取らせていただいております」
そういって綴さんから視線をずらすと、ギャルの女性と耀がこちらに来ていた。
「おひさ~優希君、3年ぶりかな? 白鳥鶫だよ~」
「白鳥さん? 確かクラスメイトに居た様な……」
「そーそー耀と仲良かった、あの白鳥だよ~」
そう言われ中学の頃に耀と仲良くしていた、そんな名前の女の子が居たと思い出す、でも見た目が変わりすぎていてあの頃と一致しない。
「びっくりしたっしょw高校デビューって奴ですよww」
そういって白鳥はケラケラ笑う、それと同時に胸がぷるぷる震える、俺の中のちょび髭の閣下が「おっぱいぷるんぷるん!!」と叫んでいる。
「ちょ! 優希君見すぎぃ~みるなら耀の見てあげなさいよ~」
「い、いや!? ジロジロとは見て無いよ!?」
するといつの間にか横にいた耀に、ぐりぐりとわき腹を突かれる。
「とりあえず、別の場所へ行きましょうか。お二人の事も聞きたいですし」
「はーい」
「よきよき」
そしてみんなで移動中、耀が腕を抱いてくる、そして二の腕をつねられた。
「うぐっ……痛い……」
「むぅ……何か言う事は?」
「じろじろ見るのは失礼だと思いました……」
うん、さっきのは俺が悪いから仕方ない。
それから綴さんに連れられ、使ってない会議室に通された。
耀と白鳥さんは少し離れてるが、全員席に着いたので買ってきた飲み物を渡す。
そして真面目な顔になった綴さんの話が始まった。
「まず先に説明させていただきますと。耀さんは確実に探索者学校へと転校となります、それもご本人の意思関係無く」
「それって……耀のジョブが関係してるんですか?」
「はい。耀さんは現在、世界で唯一の【魔法使い】という大変希少なジョブに目覚めています」
「【魔法使い】ですか……」
「ええ、現時点で全世界の40歳以下のおおよそ45%が適性検査を受けています。その中では今の所見られておりません。そして、貴重な人材として政府の管理下に置かれます」
頭を思い切り殴られた様な衝撃だった……。
(耀が居なくなる?)
耀を見ると気まずそうに笑っている、今まで長いこと隣に居た、〝大切〟な幼馴染が目の前から居なくなると想像したら、全身の血が冷えていくような感覚に陥る。
「優希さん聞いて下さい。これはあくまで耀さんが断った場合です、そして耀さんは《《貴方と共に》》なら転校しても良いというお答えもいただいております」
「そ、そうだったんですね……早とちりしちゃいました」
「ただ問題がありまして、希少なジョブである耀さんとは違い、優希さんが〝普通〟のジョブだった場合は、試験を受けていただく必要があるんです」
申し訳無さそうな顔と声で綴さんは告げる。
「試験ですか?」
「ええ、耀さんは政府直営の探索者学校の特別育成科への編入になります。基本は政府推薦の者達になりますが、それだけではクラスが埋まりませんので、もう一段階の編入試験を合格すれば編入可能となります」
「つまりはその科に特別枠を設けるから、試験に合格して欲しいということですか?」
「はい、その通りです。試験への推薦は私の方がやるので捻じ込みます、ちなみに優希さんのジョブは?」
「それでしたら、これを見ていただけたら早いと思います」
そう言って検査結果の紙を渡す、「拝借します」と紙を読んだ綴さんの顔が驚きに変わる。
「検査機器のエラーで何度やっても表示されないみたいなんです、なので今は暫定的に【戦士】として登録されているはずです」
「わかりました、エラーの件含め、上層部にも周知させておきます」
「ありがとうございます、試験はどのくらい過ぎたら行うんですか?」
「そうですね、現在新校舎の準備等で早くても3週間、遅くてもひと月になるかと……」
タブレットを操作しつつ、綴さんは予定を確認している。
「ひと月って……新校舎はそんなに早く出来上がるんですか?」
「新しく作る訳では無いんですよ、元々ダンジョンが出た周囲2キロの会社や住宅、学校や避難指定となっておりまして……。政府が土地の買い上げをしているのですよ、それで現在は居抜きの状態なんです。ですので最低限の学習に使う設備はあります、リフォームや新しく建て替えはする予定ですが……」
「そうなんですね、なんかいつもの政府と違って、話が進むのが早いですね、いつもなら長い事かかるのに……」
「今回に関しては周囲の住民や国会内でも余計な反発も無く、まるで魔法の様に事が進んでるんですよ。いつもこうなら苦労しないのに……」
そう言って肩を竦める綴さん。
「それに、ダンジョン発生の事象は、特定非常災害に指定されておりまして、急ピッチで進めているんです」
「台風や地震といったものと同じという訳ですね」
「そうなりますね。さて……重要なお話はこのくらいにして……。4人で夕食に行きましょう私の奢りです!」
そう言うと綴さんは、仕事モードの顔から朗らかな顔となった。
「良いんですか?」
「ええ、これから関わりある子達ですし。優希さんにはなんか不思議な力を感じるので! それに何か大きな事やらかしそうですから、仲良くしときたいのです! そ・れ・にお二方の馴れ初めをもっと聞きたいので!」
そう言って綴さんは席を立つと昔話に花を咲かせている二人の下へ向かった。
「うっ……凄く嫌な予感はこれだったのか……」
それから、ちょっと高めのロイヤルなファミレスへ向かい、耀と供に綴さんや白鳥さんから、昔の事や普段の事を根掘り葉掘り吐かされ、弄られたのであった。
作者です。
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