第18話:レオナルド
飲み物を買い耀の元へ戻るとおっさんに絡まれていた。
「Please stop, don't touch(やめて、触らないでください)」
「Inglese? Non so di cosa stai parlando(英語か?何言ってるかわかんねーな)」
そうやらお酒が大分入ったアホに絡まれてる様だ、よしぶっ飛ばそう。
気づかれない様に背後へ近づく。
「おい」
思った以上に低い声が出た。
「Non disturbare il fottuto ragazzo!(邪魔するなクソガキが!)」
振り返り立ち上がるおっさん、うわっ酒くせえ。
「That girl is my fiancée(その娘は俺のフィアンセだ)」
「Che cosa stai dicendo?(何言ってるかわかんねーよ!)」
そう俺には分からない言葉で叫びながら殴りかかって来たので受け流して肩の骨を外す。
「ぎゃああああああああああああああ」
あ、この言葉は理解できた、汚らしい悲鳴だ。
痛がるおっさんの首元を片手で絞めつつ持ち上げる。
「英語が分からないなら日本語で言ってやるよ。あいつは俺の婚約者だ、下手に手を出したら今度は腕千切るぞ」
ヒールを掛けて肩を治してから付き飛ばす、ド派手に尻餅をつきながら倒れ込むおっさん。
何が起きたかわからないって顔してるなぁ…
やがて、自覚したのか怒りで顔が赤くなる。
「Ti ucciderò con le mie mani!(てめぇぶっ殺す!)」
飛びかかろうとした瞬間おっさんと俺の前に人が割り込んでいた。
「Dai, i buoni non si eccitano(おいおい、良い男が熱くなるなよ)」
そう言いながら男性は相手の男を制圧する。
「Cosa sei!(お前何者だ!)」
「Me un tale ragazzo(俺か?こういう奴だよ)」
男性は首元に入ったタトゥーを見せる、その途端おっさんは縮み上がり逃げ出して行った。
「Uh, giapponese?(あーえっと日本人か?)」
「I'm sorry I don't know Italian(ごめんなさいイタリア語が分からないんです)」
そうしたら横で見ていた耀が答えてくれる。
「Can you speak English, then speak English(英語なら出来るのか、じゃあ英語で良いな)」
そうして男性は英語で話し始める。
「すまなかったな、そっちの少年も英語は出来るのか?」
「完璧には出来ないですが少しなら」
「それだけ話せれば十分だよ。しかし、さっきの馬鹿が迷惑かけたな」
「大丈夫ですよ、それはそれとしてありがとうございます」
「まぁ、お前は俺の助けなんかいらない位強いんだろう?」
「まぁ、それでも助けてもらったのには変わりないですから」
「おう、いいって事よ、しかし災難だったな」
「どこの国にも居るんですねあんな奴」
「うちの国のワインは極上なんだがな…たまーに安酒呑んで悪さする奴が居るんだよ」
「ははは、そりゃ大変ですね」
「全くだよ…そうだ、俺はレオナルド、君たちは?」
「俺はユウキ」「私はヒカリ」
「ユウキにヒカリか、迷惑かけたお詫びだ、飯をおごってやる。」
「そんな、悪いですよ」
「良いって良いって、それに女性に怖い思いさせたままじゃイタリア男のプライドが許さないんだ」
レオナルドが俺と耀の間を見る。怖かった様で、さっきからずっと手を握っている。
「まぁ、飯って言っても、ここのホテルのレストランだけどな」
そう言ってレオナルドが先に歩き出す。
「耀、どうする?」
「うーん悪い人じゃなさそうだけど…そうだ、丁度良くあの魔法の練習になりそうじゃない?」
「あぁ、あの魔法か良いんじゃない?」
「なら行きましょうか」
「分かった。先に行ってて、念の為メアリーに連絡入れとくから」
「わかったわ」
そう言って耀は先に歩いて行く、俺はスマホを出してメアリーに連絡を入れる。
「はイ、優希さンどうしましタ?」
「それがね……」
メアリーに経緯を話すとメアリーはすぐに戻ってくるとの事だった。
通話を切り二人を追いかけレストランに入り座席に着く。
「どうした?ユウキ?」
「あぁ…一応同じホテルに親が居るからね、夕食を先に食べるって連絡を」
「そうかそうか、ってまさかお前ら未成年か?」
「そうだよ」「そうね」
「なんてこった…イタリアの極上に美味いワインが飲めないなんて…」
「残念だけど後4年待ってもらわないと…」
「しかも16かよ!?」
「もうちょっとで17になるけどね」
「私は12月なのよね~」
「そうか…残念だ。それと、お前ら恋人か?」
「恋人というか…婚約者だね」
「そうね、もう結婚するけどね」
「おう、マジかよすげえなユウキこんな美人となんて」
「まぁ子供のころから一緒だったしね」
「好きになったのは私の方からよ」
「くあーいいなぁ!!」
出された食前酒のワインを呷りながら
「レオナルドは居ないの?左の薬指に指輪あるし」
「あぁ…昔は居たんだけどな、お前達と同い年の時に病気でな」
「それは…悪い事聞いちゃったな…」
「良いって事だ、未だに引きずってるのは俺の方だしな」
「レオナルドはいくつなんだ?」
「俺か?俺は25歳だよ」
「そっか……」
「なんかごめんなさい……」
「ほらほら、暗くなるな!せっかくのイタリア極上の料理だぞ」
ウェイターさんが持ってきたのは色鮮やかなイタリアの海と山の幸だった