魔晶鋼の修行
もう神龍皇となっているのに修業とは...w
「...は?」
コイツの言っていることが信じられない。
武器一式に機甲兵装の作成?そんな事をすれば―――
「―――『俺の命が持たない』、だろ?」
「...ああ」
「大丈夫、それがこの旅行の意味でもあるのさ。
そうすれば、気分も触れないだろ?」
―――...コイツは悪魔になった。
前はあんなに頭が柔らかかったのに...。
―――
「ハア...。」
「どうした、グレンに無茶でも言われたか?」
ヴァルは察しが良くて助かる。
「...そりゃ酷えな」
「だろ?いくら俺が魔力量が多くてもきついんだよなあ...。」
魔晶鋼。
それは、魔晶に多少の聖霊力を注入して変質化させ、それを高圧下で放置することによって初めて完成させる。
魔力2400000、聖霊力135000/1㎥でできる、比較的簡単な物だ。
しかし、聖霊力は一日で大量(大体8000000ぐらい)に使用すると命を削ることになるため、安全に使うとなると大体120000ほどの聖霊力までしか使用できないという欠点から、よくても9㎥ほどしか作れず、とてもではないが大量生産などできるようなものではない。
それなのに、グレンはそれを作れと言ってくるのだ、きつすぎる。
特にひどいのが機甲兵装だ。
これに使う量は、加工によって使用できなくなる量を考えるため、俺の目指す機動性のある機甲兵装を作ろうとすると毎日最低45㎥を作り出さなければならず、命を削りかけなければならないのが難点だ。
その加工は手伝ってくれるというが、聖霊力の補給はどこから行えばいいのか―――。
そこまで考えたところで、その聖霊力の塊がいたのを思い出した。
俺は、その聖霊力の塊―――聖霊王と同化している6000年以上生きているらしいシグレの許に赴くのだった。
―――
「...で、聖霊力をよこせと」
「...頼む」
「仕方ないなあ。でも、毎日虹魔晶くれるならいいよ?」
「ああやる、めっちゃやる!だから聖霊力をよこしてくれ!」
「いらないけど!?まあ、はいどうぞ」
そういわれて気軽な感じで渡されたのは魔晶を細かく砕いた際に出るような光を放っている結晶だ。
「なんだ、これ?」
そう聞くと、聞きたくなかったことが発覚してしまった。
「いやあ、僕の聖霊王の方の聖霊力をほぼ抜き取って作った奴だからさ、僕今すっごい弱くなってるよ?ちょっとイヴェンシアの魔力で倒れそうな...ぐら...い...。」
「お、おい!?」
すっかり弱ってしまったようなシグレ。
それを見ながら、半ば命を削っている行為を責めたくなり、俺も魔力を固め、その周りに聖霊力のコーティングをした結晶体を作成してみた。
それに使った魔力量は全体の9割近くであり、俺も倒れてしまいそうになった。
が、肉体に余りある聖霊力をシグレに多少分けた後、魔力結晶と聖霊結晶を合体させて魔晶鋼に変質させた後、(なんでシグレが魔力で聖霊力の代替をしなかったんだ...?)と思いつつも、魔力の放出による反動でしばらく気絶することになった。
―――
「...一日目でこんなに用意するとは。シグレも良く協力したな」
「まあ、魔力で聖霊力を生み出せることを知っていたらしいが」
「チッ、気付いたか。まあ、これを利用した魔術がイアがよく使っている虚無魔術だしな」
虚無魔術の意外な実情を知ってしまいながらも、シグレがくれた聖霊結晶と魔晶を組み合わせた物―――魔晶鋼の塊を眺めながら俺はグレンに話を聞いていた。
「この程度あれば充分だろ?」
「まあ、こんぐらいあれば機甲兵装も作れるが...戦術級の戦艦でも作る気か?」
魔晶鋼の使用量が意外と少ないかもしれないことに驚き、俺は思わず聞き返してしまう。
「いや、全部の部分に使うんじゃないのか!?」
その返答として溜息をまず来れ、次にこの言葉をいただけた。
「んなアホな。
全部の部分に使うんじゃなくて、構造的にもろい場所に部分的に使うんだよ。
...まさか、お前」
その返答は、苦笑しかできなかった。
―――
更に同じ量の魔晶鋼を作り出し(魔力は無限に生み出すことが出来るので、聖霊力の不足は気にする必要はなかった)、異空間に収めること必須な空も飛べる巨大戦艦を作成することにするのだった。