温泉街の街並み
「さて、ついたな!ここは温泉が有名でな、俺の行きつけなんだよ!
血流促進、リウマチなんかにも聞くし、温泉卵ならぬ温泉蝶もいるしな!」
これがグレンが付いた時に発した第一声だった。
ゴルア温泉街。
ヴァルカリア王国と東側の小国ゴルアの国境に存在するその温泉街は、国際の通貨がヴァルに設定されている(ヴァルと言うのは<魔龍狂踊>の際に記念されて作られた通貨の名前)。
昔ながらの街で、俺がそこに噴水を作るとそれが文字通り呼び水になったのか温泉を噴き出すようになり、それによって独立したのがこのゴルア地域だった。
毎年俺が入りに来ていた場所で、それが宣伝のようなものでもあったことから、世界的に43の週にこの温泉街に人が集まっているのがよく見られた。
そんな街だが、此処にも名産と言えるものがある。
それが、グレンが言った温泉蝶だ。
「わあ、何これ可愛い!...3色団子...」
そうシグレが言うのも納得できるような、いろんな色を持った団子のようなものだ。
《ワレ オイシクナイ タベルナ》
「え!?喋れるの、君」
《フザケルナ ワレハ ヴェフロールナルゾ‼
スコシ ヨリシロデ アソンデイタラ オマエニミツカッテシマウトハ!
ワレヲ イジメテ タノシイノカ、キサマハ‼》
その声と共に声は消え、《カリ カリ ウマクナイゾ》という無機質な音が鳴った。
相変わらず蝶らしくもない見た目だが、コイツの飛行形態は蝶にも見えるフォルムな為に、温泉蝶と呼ばれていた。
―――
「おい、何だよ、この量は...。」
《カリカリ カリカカリカ カラカリカイラカリ》
耳に響くそのカリカリなく球は飛び跳ねながらグレンの周りを飛んでいた。
耳障りな事途轍もないのだ、こう合唱されてしまうと。
実際、グレンも「ああうざってえ、どっか行ってくれよ!」と言っているし。
結局、いやがらせ目的で買っていたらしいシグレがその処理のためだけに異世界への門を開いていたことから、シグレに対しての評価を一層低くする必要があるように感じた。
「ふい――...。
...疲れたなあ」
「そうか?俺としては毎回こうやって旅行できるのが最高なんだが」
「趣味かよ」「そうだが、何か悪いのか?」「...そうかよ」
俺達は、二人温泉に入っていた。
グレンは教師だから、という理由でここにいた。
そして俺は―――。
「それにしても、お前がたった3時間で最高級の魔晶―――それも大き目な虹魔晶を作って、それにつけ足して魔石でできた杖の部分を作って一気に二つ解除するなんてなあ...。」
―――多少屁理屈のようだが、魔石の杖と魔晶を作って組み合わせたものを提出したためにここにいた。
現場監督はヴァルと、さっきの嫌がらせの報復として残らされたシグレがとっている。
...それにしても、と考えてしまう。
何故、俺にはこんなに緩い条件を付けてくれたのだろう?
そう考えている間に、グレンが地雷を投下してくれた。
「因みに、お前は魔晶鋼を利用した武器づくり、それに一式の兵装、最後に...」
「機甲兵装を用意していただこうかな?」