夜の間 or 帰投
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機体紹介を行ったページです。
コピペしていただくと、前回の小説に飛ぶようになっています。
一応、見なくてもいいとは言いましたがどうぞ。
「...いやはや、素晴らしい性能を持つ機体だこと。
棄権しておこうか...。」
「いや、ダメだろ。大体、お前が『負けそうだが、やろうか』って言ったんだろ?」
「...やはり親子という所か、威亜君の声が私のそれに重なって聞こえるよ」
「俺はそんな事実決して認めたくねえがな。
でも、まあ仕方ない事か」
結局長口上になってしまったが、そろそろ由紀が五月蠅いし、とっとと始めることにしようと思った。
―――
「...文字通り瞬殺だったな」
「いやあ、流石に性能差と言う所か。
さっき勝てたのが幸運だったのだな」
結局、それは俺が親父の機体を秒で破壊して終了だった。
爆発に関しては、機体の損傷を虚龍王の能力で巻き戻したために起こらなかった。
それにしても、由紀がおとなしくしているのはなぜなのだろうか。
そう思って由紀のいる方角を見ると、寝ていた。
「...全く。
早く起きろよー」
そんな声をかけながらも、俺はそのあどけない寝顔に親父にペンをもらって落書きしたいという欲望を持ちながらその髪をなでていた。
―――
「うゆー――...。
ん―――?...ああ、おはよう、威亜あぁぁあああ...。」
「眠そうだな、何なら異空間に入れて帰るか?」
「いや、自分で帰れるよ。...ふわあぁぁぁ...。」
今でも眠そうな由紀だが、取り敢えず本人が大丈夫だと言っているのだから連れていくことにした。
「イアあぁぁ...。」
「なんだ?」
「手握ってて。そしたら、ボクも安心だよ」
甘えているようにしか聞こえないが、それを無視して港に落ち、そのまま低体温症で死亡、などとは笑えない。
その為、由紀が甘えているのを知っていても仕方なくその甘えを許容した。
...まあ、本来なら『生徒×先生』という、一部の恋愛漫画で見る構図になりそうだが、元々としてあった場所がここではないのだから問題ないだろう。
―――
星暦6036年、24の週最終日。
本来なら、こいつらの卒業式が行われているはずなのだが―――俺達は、今だサリグにいた。
理由としては、一つ目にグレンがあそこの先生に復職したこと、そして―――俺達の遠征が人の目に多く付き過ぎた為、サリグ以外の所に行けばその力を軍事利用される可能性があるからだ。
...まあ、サリグはエリトルガの動力源を知ってしまった物の、それはこの島では使われていなかった。
何故なら―――。
「...まさか、此処の人たちに魔力が存在しないとは」
「いやあ、初めて知った時は私も驚いたものだ。
だが、だからこそ私のようなものを受け入れてくれたのだと思うよ」
「...こんなのが親なんて」
「こんなのと言うな。確かに優にもよく似たようなことを言われるが」
―――そう、この国に住む人はみな例外なく魔力を保持していないからだ。
此の大国、サリグ首長連合国は俺が消えるまでにあった魔力を肉体に保持できない者達が集まった場所だ。
魔力を持たない者は淘汰されるか、高い金を払って魔石を購入し、杖に共鳴させて魔術を使用するかしかなかった。
そんな彼らは、『ゼロ』と名乗る、魔力を保持しながら彼等と行動を共にした者を崇めていた。
彼が、飛行機や機動兵装、戦闘機―――それらを伝えた者らしい。
『ゼロ』は『いつか、私のように異世界からやってくるものがいた場合、その者と共に来る可能性のある闇を払え。
彼の者は恐らく、戦艦に載ってくるだろう。
その者の齎す物は、技術をさらに伸ばすであろう。
...この聖なる大島に、大いなる翼の加護のあらんことを―――』
...と、そう語って息絶えたらしい。
それ以来彼らは、『ゼロ』を崇めていた。
...俺と同じ名なのが不思議に思ったが、まあ気にしないほうが良いのだろう。
後、ソイツは恐らく“アレ”から名前をとったのだろう。
―――
まあ、どうであろうと『ゼロ』の予想したことがあたりだ、と認めなければならないだろう。
技術力が最も高いであろうこの国は、その手に魔力を持った。
この魔力は植物を炙って、それを俺特製の魔力縮退炉にて魔石にすることによって利用可能になっていた。
つまり、単体ではこの聖なる地・オノゴロに存在できなかった。
そのために魔力が存在しなかったのかもしれないとも思えた。




