リミット・オブ・マナ
なんだかんだでヴァルカリア家―――いや、シグレに『え!?嘘だったの!?』と、俺の言った嘘を告白
した後そう反応され、悪気無く使っているゲイル家の一件目の家はかつて畑を持っていた時代の見た目まで復興してきた。
ただし、家の周りにはよくリスや鳥が集まっており、沢山一気に野菜が食べられないか目を光らせている。
(本当に食べる用の野菜は年中作ることのできる様に家の地下に作られた魔術核=極大の魔力を持った魔石を利用した畑で毎月とられている。上の野菜は動物たち用)
そんな日に、家のチャイムが鳴らされた。
こんな所に人が来るとは思えなかったために、俺は頭をひねらせてしまう。
しかし、シグレは来ることを分かっていたのか、「はいはーい!ヴァル、ちょっと待っててねー!」とその来客に声をかけていた。
ヴァル。
ソイツは、俺―――イヴェンシアに世界の魔力の均衡を保つように言われ、それをほっぽって現実世界に入って来、そして俺に捕まっていた奴の名だ。
「ほう、綺麗になってると思ったら子供がいるのか。
前はいなかったし、どこかで拾ってきたのか?」
感心した様に言うヴァル。
しかし、シグレはこれだからヴァルは、という様に力なく頸を振るのみ。
「...俺に何の用だ、月天人<均衡>の任務をほっぽって現実世界に来たヴァル?」
「...なんでそのことを」
ヴァルは驚いたように俺の顔を見、「もしかしてお前...」と口にしたところで、後ろからの圧に気付いたのか身体を固める。
「...ヴァル......?」
「ヒッ!?」
何故ヴァルが優にあの時ビビっていたのか、それが理解できた。
それは―――。
「...均衡が崩れた理由を調査してくるって言ってたよね...?」
「そ、それは本当で、グレンも戻って来たし...な?」
「な?、じゃ、なあぁぁぁ――いっ‼」
―――怒りに顔をゆがませ、肉体を半分聖霊化させたシグレの叱責が聞こえたからだ。
ヴァルが可哀想に見えたが、俺に託された任務を放ったのが悪い。
その上現実世界(俺でいう所の)に行くなど言語道断、という感じなのだろうか。
―――
「...ま、まあ、許してくれても...。」
「仕方ない。その代わり、ゼロの魔力計測に手伝ってもらうからね!」
「そんな事をすればここら一体に<龍の迷宮>が出来そうなんだが...。」
ヴァルを許す交換条件が俺の魔力計測とはどういうことなのだろう。
そんな事をすれば、ヴァルの言う様にここら一体に<龍の迷宮>が出来てしまうだろう。
今の俺の魔力量の3分の1ほどの魔力量しかなかった<魔龍狂踊>ですら世界中に大量の<龍の迷宮>を作り出したのだ、ここら辺近辺にだけ其の3倍の量の魔力が放出されたらと思うと―――悍ましいその予感に体を震わせてしまう。
そして、その予兆が始まろうとしていた―――。
―――
結論から言うと、その最悪の未来は回避する事が出来た。
2000万ほどの魔力量を放出し一つ<龍の迷宮>(最上位レベル)が完成したところで俺がかつて最も最初に使った虚龍王の能力を使用して空間を巻き戻し、序にシグレを気絶させ、俺の魔力計測は終わった。
しかし―――。
「あ、良い事思いついた!魔石を作ってもらえばいいんだ!」
と、半径30㎝程の大きさの魔石(保持魔力量:平均5億/純度35%)を作れと言い出したシグレ。
...結果的に、極限まで魔石の純度を上げたところ、一切魔力を持たず、魔力を抵抗無しに通過させ、魔術の威力を上げる手のひらに収まるほどの<虹魔晶>(必要魔力3億/1㎤)が作成されてしまい、それと同時に俺の魔力が切れたのか気絶したようだった。
近くの魔力反応しか見えなくなり、丸3日眠る羽目になったのだった。