実質一日目のサリグ観光
「...ん―――...。
ああ、由紀がいるな。なんだかかわいい」
「ん―――...。
眠いよお、イアあぁぁ...。」
...俺に甘えているのは、勿論の事由紀だった。
ふわふわしているような感じが出ていて、とてもかわいい。
なんだか、いつもの由紀とは違く見える。
「...あれ?なんでイアがいるの?」
戻ってしまったことを残念に思いつつも、真面目に答えることにした。
「いや、お前が来たんだろ。
どうせ「私が怒ってるぞ、今のうちに皆に気付かれぬようこっそりと戻った方が良いのではないか?」何ッ!?なんでお前が...!?」
そこにいたのは、氷華 斉太だった。
しかし、寝間着姿でどこかからか出てきていた為に、恐らく異空間チックな場所から姿を現しているのだろう。
「...なんで伯父さんが!?え、なんで...。」
「全く、生徒寮を抜け出すとは。
大好きなのだな、威亜の事」
「...何か悪い?」
「いや。とにかく、由紀君は帰ってもらおう。私の睡眠時間が削られてしまう」
慌てる由紀をそのまま異空間に収め、帰っていく親父。
まあ、少し寂しいが...本来がこれなのだ、仕方ない。
―――
「イア!おはよーっ!」
「...全く、懲りないやつだ」
朝、俺の布団にもぐりこんでいたとは思えない他人行儀さで挨拶する由紀は少しおかしく見えた。
だが、そんなところもコイツらしい。
「全く、君たちはしっかりとしてもらわなくては」
そんな由紀の後ろから現れたのは、白衣に身を包んだ親父だった。
完璧に見た事のあるような姿な為に笑いそうだが、恐らく笑うとつらつらと文句を回りくどく言われそうな気がしたのでやめた。
「そんなこと言ったって、おじさんって先生の“嫌いな”お父さんなんでしょ?」
そんな言葉が由紀以外の者から聞こえた為、俺は思わず目を見開いてしまう。
「...そんな事を言ってくれるな。なあ、威亜君?」
「俺をこの世界でその名で呼ぶな。こっちではゼロだ」
「何?由紀君がイアと呼ぶものだからつい...。」
「先生ってもともとイアって名前なんですか!?
大昔にいたとっても強い人の名前と同じじゃないですか!だからそんなに強いんですね?」
大きく的外れなことを言う者に注意しようとしたのだが、それ以上は騒ぎ始めてしまったのであきらめた。
全く、由紀にも困ったものだ。
「さて、では君たちを案内しよう。
君たちが載っていた戦艦...エリトルガ、と言ったかな?あれは港の秘匿船廠に隠されている。
それも、私しか入れない空間にね。
...本来では君たちには入国できなかった、という意味でもあるからな。
それなりの代価は支払ってもらおうか」
その親父の言葉に凍り付いたのは、恐らく俺と由紀だけだ。
何故か?それは―――。
―――
「あ―――‼おかしいだろ、なんでこの機体性能じゃ勝てねえんだよ‼」
「ふははは、我が国の技術力は世界―――いや、宇宙一なのだよ、ゼロ君‼」
「...ねえ、伯父さんの事消滅させてもいいかな?」
「何ッ、酷いではないか由紀君―――」
「良いぞ」
「goサインを出すでない!私が死ねば、この世界から出れなくなるかもなのだぞ!?」
「いや、自分の力で出れるから」「あ、ボクも!」「な、何イイィィィ!?」
俺達は、今サリグ国内の何処かにある、モビルスーツ(サリグ語で、機動性能の高い人型機械の事らしい)の模擬戦闘場にて戦っていた。
他の者達も色々と聞かれてるらしいが、あの船はブラックボックスだ。
俺意外に詳しく分かる者はいないだろう。
それにしても、何故ここまで親父は強いのだろうか?
幾らこれがまだ兵装が少ないとしても、おかしいような気がする。
「なんでお前のはそんなに強いんだ?」
「あ―――...。
ま、まあ、年の差というものだ、あははは...。」
どう考えてもおかしい話だったが、俺の機動兵装はまだまだ強化・改修を続けていく。
どんどん強くなっていくだろう。
―――
「それは何かね?」
「ああ、アストラルMk-βの完成だ」
「おお、では私と対戦願おうか。...さすがに勝てなさそうだが」
そこにあったのは、クリンゲと共に消えたアストラルMk-αを改修、更に強化したアストラルMk-βだ。
動力は超小型の対消滅式エネルギー発生装置だ。
俺が搭乗することにより、俺の魔力と聖霊力を吸収して電気を生み出し、それを翼の形の、滝の世界の俺の見た目を彷彿とさせるような6対の背部スラスターやバーニアなどからエネルギーとして放出するのだ。
また、補助用としては可笑しいが、エリトルガに積んだ相互干渉永久滑落炉をバーニア部出力として搭載している。
本来ならできない暴装備だが、まだ機動兵装―――モビルスーツが飛び回る世の中ではないので安心できる移動手段だ。
(ちなみに、大気圏を振り切って宇宙空間に行くことも可能な為、気密性は異常に高く設定されている)




