異世界の氷華 斉太 or 深夜の事 or 00
「さて、君に来てもらった理由は他でもない、君がこの世界を―――地界ヴァルドを滅ぼす可能性のある物だと見えたからだ。
．．．分かっているのだろう？」
「．．．まあ」
俺は、目の前の男の聞き取り―――というよりも、他の目的を持っているようなその問いに答えていた。
「．．．では、聞き取りを終了する。
君は、もう少しここで待機願おうか」
何故待たされるのかは分からないが、先程俺をひっとらえた男が次に来るのだろうか。
．．．その男は、どこかでいつも見ていたような、そんななりをしていた。
「．．．全く、お前はいったい何をしているのだ」
「．．．またお前かよ!?」
やはり、いつもの男だった。
氷華 斉太。
ソイツが、俺を引っ立てて行っていた様だ。
―――
「全く、君の精神状態が回復したようだから元々転移したようだった場所に行ってみればいないし、嘗てグレンが語ったヴァルカリア高等魔術学院なる場にもいないし、取り敢えず一番広いこの地で監視を行えば来るではないか。それも、君の身を案じて先にこちらに来た由紀君と共に！」
その口から出てきたのは、珍しい心配だった。
とても分かりにくいのだが、一応心配してくれているようだったため、父としての評価を多少見直そうと思ったのだが―――。
「全く、私も来れる物だったら君と共にこの場で若々しい者たちを見守りたかったものだ！」
―――その一言で、見直すという事柄の艇は俺の口という港に着く前にものの見事に轟沈した。
「あ、お帰り！
．．．って、やっぱり伯父さんかあ．．．。」
「やっぱりとは何だ。そんなに敬愛する威亜を奪われたのが嫌だったか？」
「そりゃそうだよ！ボクだって待ってるのは寂しかったんだからね！」
由紀は、帰ってきた俺を見るなり飛びついて来ようとし―――そして、氷華 斉太を見るなり動きを止め、いやそうな顔をする。
それに少し心外そうな顔をした親父は、一体何なのだろう。
いや、それより。
「敬愛してるってなんだよ」
やはり、其のことが重要である。
―――
「え!?もしかして、知らなかったの．．．？」
少ししょんぼりしたような感じの由紀の表情が、少しだけ可哀想に見えた。
「．．．だからあいつは俺の事を鈍感だって言っていたのか？」
「そうだよ！全くもう、ボクが馬鹿みたいに見えるよ！」
「いや、一部抜けてるって言うか．．．。」
「な!?酷いよ、イア！」
ようやくあの頃鈴が言っていたことを理解する事が出来た。
まあ、言った当人はもういない（とこの当時は思っていた）のだが。
「．．．悪いな」
少し自らの行いを恥じつつそう言うと、返答はなかった。
その代わりに、何故か撫でられた。
驚きつつ由紀を見ると、「へへへ」と言いながら、結局撫で続けていた。
．．．少しだけ、由紀が分からないが、それでも、まあ．．．このまま居れるのならなあ、と思う心が俺の中には存在していた。
―――
「．．．なんでお前がここに―――」
「しッ！静かにして、イア。いいから、静かに、ね．．．。」
深夜、俺が慣れない違和感に戸惑いを覚え目を覚ますと、そこには由紀がいた。
なんだか誰かから逃げているのだろうか、そう思うと。
「せんせー、ユキ知りませんかー？」
そういう声が聞こえた。
どうやら、彼女たちから逃げていたらしい。
だが、今コイツを出せば俺にとって不利な事、例えばセクハラをされた、と言われかねない。
だから、「いや、居ないぞ？」と答えるしかなかった。
「．．．ゴメンね、イア。
でも、今は見つかるわけにはいかなくて．．．。」
どういう要件なのかは分からないが、対してあの3人が探さなかったという事は、たいしたことではないのだろう。
「．．．こうやってイアと一緒に居たくて、抜け出してきたからなあ。
今日戻ったら伯父さんに怒られちゃうかも」
「．．．俺に迷惑かけんな。親父には自分から言うことだな」
「え!?酷いよ、そうしたらイアもさっきいないって言ったんだから共犯だからね！」
軽く殺気めいたものが出かけたが、もう隠した時点でダメだったらしい。
だが―――。
「．．．でも、こうやって一緒に居させてくれるのは、嬉しいなあ」
と、その由紀の一言が俺の心に刺さり、今日だけは一緒に居てやることにした。
．．．まあ、そこまで心を許した時点で結構ダメだったのかもしれないのだが。
―――
「．．．やはり、由紀はここにいたか。
まあ、仕方あるまい。鈴君が居なくなった今、多少計画に狂いが出ても仕方ない。
．．．それにしても、由紀君が、か。少し意外だが．．．まあ、彼女の親もいないのだしな．．．。
私が死して、二人に何かあればいいのだが．．．威亜の事だ、私などあまり気にしないのだろう。
それはそれで少し寂しいものだが」
俺達が寝た後、この世界でもGM権限があるのか異空間から体を一部だけ出した親父が不穏なことを言っていた。
だが、それが俺の耳に届いていたとしても、俺が眠りにつく寸前に由紀が言った言葉と間違えただろう。
イメージ的には寝る前に何かしたり///
...は無いですが、次の話でそれは判明しますかねえ．．．？
後、題の00は∞（アインソフ）です。
