ユキ or クリンゲ、発艦‼
「さーて、俺も多少の時間は監視役になる、宜しくな!」
俺は、なぜこんなことになっているのか分からないまま、教官役をしていた。
「...俺が監視役になれ?それは俺の試練を終わらせないためにすることか?」
その話を初めて聞いた時、俺は軽く呆れた。
グレンから伝えられた内容は、旅行に行っているとき、毎日最低1時間は皆の試練の監視役をする、というものだった。
それに関してはまあ最悪良かったものの、俺の試練である戦艦クリンゲの完成を妨げるためにそのようなことを考えているとしか思えず、つい疑ってしまう。
「んな訳無いだろ、俺がちょっと用事あるからな」
珍しくそんな事を言うグレンだが、まあそういうのなら仕方ない。
そのような感じで今ここにいるわけだが、正直ここにはいた事が無かった。
それに、監督と言っても何をすればいいのだろうか。
「あの、ボクはどうすれば...。」
「ああ、そうだなあ...。」
そんな中、俺に助けを求めてきたのは今年に入ってきた新人、ユキだ。
...どこかで聞いたことのある名と口調のような...。
「お前の試練は魔晶作り...辛くないか?」
「まあ、ボクは魔力をいっぱい持ってたから、こんなふうな試練になったんじゃないかなって思ってます。
そういえば、ゼロさんはそういうのは無いんですか?」
そう言われるのがなんとなく理解していたため、笑いながら答える。
「まあ、こうやって監視役になってない間に少しづつ作ってんだよ。
本当は俺の時間にグレンがいる筈だが...まあ、お前みたいなおっちょこちょいには俺みたいなやつが適任だって思ったんだと思うぞ」
「な!?ボクはおっちょこちょいなんかじゃない!」
その反応が実におかしくて、笑ってしまう。
「んな―――!」と言いながら真っ赤になって怒るユキがなんだかかわいく見える。
まあ、こんなのが後輩なんて笑える以外何もないが。
―――
「ただいま戻ったぞ」
「遅かったな、ゼロ。
お前が遅かったせいで通路の動くリフト?あれと通路の間取りが分んないから適当になってるが...まあ、自分で直せよ」
「分かったよ。じゃあ、ディストピアにサヨウナラ、ヴァル」
「おい、そんなにひどいのか!?なら―――」
そこでヴァルを蹴り飛ばし、ヴァルをヴァルの魔力では文字通り死にかけるディストピアに彼を入れさせた。
今年もまたヴァルの悲鳴が聞こえたが、今年はそのようなことは気にもかけず、リフト、そして機甲兵装デッキを作っていくことにするのだった。
「うお、このリフト単列かよ!?回転して戻る循環式にして、突起に掴めるようにしとくか...。」
―――
「おお...。
これで取り合えずは出来上がりか?」
「まあな。これで試練クリア、あとは俺の作品の完成に取り掛かるさ」
星暦6035年、12の週に俺達は完成した戦艦クリンゲを見ていた。
この世界で初めて宇宙・航空可能な戦艦が出来たのだが、それの能力を紹介しておこう。
648Ⅿ級の超巨大航空戦艦、クリンゲ。
俺が初めて作った戦艦で能力はまだまだだが、この世界ではこのレベルまで発展した戦艦は存在しない為、実質唯一の最強戦艦だ。
二股に分かれた先端には6分割された機甲兵装デッキが存在しており、俺が作った仮称機動兵装や航空機―――それも戦闘機のようなものを射出するためのカタパルトも存在する。
一応同等の戦艦と戦えるだけの能力は有しており、中央の司令室直下には対艦―――いや、多少威力が高ければ惑星の機動すらも変えることが可能になりそうなエネルギー砲を放つことができる。
更に、宇宙空間での戦闘、もしくは上記の惑星の軌道を変えるために宇宙空間での活動をも可能としている。
それが、この星―――地界ヴァルドを守るための戦艦、クリンゲの能力だった。
「人の身でこんなもの以ていいのかねえ...。
あ、一応俺達は龍王だけどな」
「...屁理屈だな」
その俺の答えに華麗に無視をしたグレン。
まあ、仕方ないだろうが。
そして、この機体を地下ドックから出撃させた。
下の方で、ヴァルカリア国際高等魔術学院の人が何やら騒いでいる。
それを俺とグレンのみで笑ったのが、クリンゲ級戦艦第一番艦“クリンゲ”の初航空だった。
...そして、技術が発展した世界から来た俺のこの行動が俺がいた世界の能力を利用した戦争になる事とは、この頃の俺はまだ知らなかった。




