地獄の始まり or 禁術『異世界転移』
「さて、どうだったか?
此処まで旅行してきたが、トールとヴァル、それにグランスだけが試練をクリアできたんだろう?
残りは追試だ、お前ら、終わるまで卒業は無いからな!
...ただし、これがクリアできれば卒業までもう一歩だ、頑張れよ!」
俺は絶望を知った。
これは単年のクラスだ、と思って舐めていた。
単年でも成績が悪ければ留年があるのは必至、それで以前も3年生で退学したのだから当然だ。
俺に残った試練、飛行可能な戦艦の作成と一式の装備の作成。
何年かかるか分かったものではない物が完成しなければ、俺は解放されない。
そのことが俺に与える絶望感が、旅行に出る前に聞いた『毎回、こうやって苦しみと楽しみを同時に味会わせてくれるのが先生なんだよなあ』と言っていた誰かの言葉を非常に同意したく思っていた。
―――
「...戦艦作りになるんだろ?
まあ、飛ぶ船ってのはすごいと思うが、生きているうちに作れるか?」
「うるせえよ!俺の生きているうちにできなくても問題ねえし、大体お前に出す奴は俺が作りたい奴じゃねえよ」
「マジかよ!?まあ、お前がやろうと思うならいいとは思うが...。」
俺がグレンに課された―――というより、自分で追加した試練の中に、浮遊する戦艦を作ることを上げていたのだが、流石に一人ではきつそうだと思った。
何しろ、俺には高性能なシステムなど分からないし、そのシステムで動くものを作ろうと思うとこの世界にDestiny Planを持ってくるようなもんだ。
つまり、不可能に等しかった。
その為、浮遊戦艦など創るのは無理だと思ったのだが―――一つだけ、この世界にあってあの世界にない物が有った。
それは、魔術。
魔術の有無によって、技術力を補おうとしたのだ。
「魔術でどうにかなる物なのか?」
そうグレンが聞くのも納得できる―――どころか、そもそも魔術でどうにかなるのかはわからなかった。
それでもやらなければならなかった。
自分の課した試練のために、というのは少し悔しかったが。
―――
「...どこ行ったんだろうなあ、シグレとヴァル」
その頃、ゲイル家ではイアが不満げに待っていた。
約5ヶ月前にこの家を出てから、一度たりとも二人が戻ってきた事は無かった。
ゼロが帰ってこない事はグレンによって伝えられていたものの、二人が帰ってこないというのはイアにとって途轍もないストレスとなっていた。
イアにとっては二人に置いて行かれたようなもので、特にやることもなく、暇なことから虚無術式と何かの魔術を組み合わせて何かできないかと遊んでいた。
虚無と虚無の術式同士を組み合わせると転移が出来ることを知って楽しんでいたところ、イアは遂に使ってはいけなくなった禁術―――虚無術式と転移魔術の組み合わせ結果を使ってしまった。
―――その後、ゲイル家にイアと言う名の少女はいなくなっていた。




