機甲―――いや、機動兵装の作成
「さーて、機甲兵装を作るんだな?」
「まあな。
...どちらかというと、機動性がある奴がいいが」
「そうか?まあ、ガンバレヨ」
恐らく、グレンは戦車や航空機を思い描いているんだろう。
だが、俺が考えているのは人型の機動兵装だ。
...どこかで聞いたことがあるような...。
「んで、どんな形の奴か?
装甲の分厚めな戦車か?それとも航空機か?それとも―――」
「人型の、機動性のある奴が良いんだが」
「まさか、空飛ぶ戦艦―――なんだって!?人型、だと!?」
食いつきの強いグレンに驚きつつも、俺は返答をする。
「あ、ああ、人型で、一機で戦術核よりも強いような23Ⅿ級の人型の機動兵装を作ろうと考えているんだが―――」
「人型の機動兵装なんて、魔力の均衡が崩れるからってヴァルがお前以外に作るのを封印した奴だぞ!?それに、動力はどうすんだよ!?」
「いや、虚無の力の流用で―――」
「...あっそ」
突然興味を無くしたかのようなその反応に戸惑ってしまうものの、取り敢えず作ることにする。
―――
「はあ―――...。」
「らしくないな、ゼロ君。何かあったか?」
極限まで疲労している状況でその声を聴くと、無償に苛ついてしまう。
「何が『ゼロ君』、だよ!おめえがこっちに来なければこうならなかったんだろうが!」
勿論、ヴァルだったのだが。
「酷いな、ゼロ。
俺だって死にそうなんだ」
「なんでだよ?」
「こうやって俺の分身体を魔力で作ってるだけでも、俺の魔力量じゃ限界に近いんだ。
流石にこれ以上はきついぞ」
どんなディストピアが広がっているのか分からないが、取り敢えずヴァルは勝手に死んでおけという話な為、無視することにした。
ヴァルが苦しげな悲鳴を上げ始めていたが、それを無視してきつすぎる機動兵装作りに戻ることにするのだった。
―――
魔晶鋼特別試作機、V1アストラル MK―α。
それが、俺の付けた機動兵装の名前だ。
機体の全高が23.1Ⅿと大きく外れず、また、背部に取り付けた追加高機動パックの高さの部分にすると25.3Ⅿほどあり、上に突き出た部分もスラスターが装備されている。
転移の能力が存在しないこの世界では移動手段になりそうなものだが、そうならない為に持っている物が有る。
その物とは、最大限の武器だ。
足で踏むだけでも大半の機甲兵装は破壊可能なのだが、流石に装甲の厚い奴や戦艦クラス、それに早い奴は回避する可能性が高い。
そのために、頭部の対空23mmエネルギー弾や戦艦も落とせるようにと作られた腰部搭載の62㎝対艦ビーム砲。
ビーム仕様のライフルやサーベル、それに背部スラスターの翼の部分を分離させて対機甲兵装のエネルギー弾を放つことが出来る。
要は、高速機動人型兵器、と言ったところか。
因みに、武器を実弾/エネルギー弾の機銃のみで構成する航空機型に変形することもできる。
「......こんな早くに完成させるなんて」
「まあ、俺は思考加速を使って何とか早めに完成させたからな、これで一つ試練完了だ」
「何が試練だよ。そこまできつかったか?」
きつすぎるんだよ、と言いたくなったが、まあ...仕方ないのか。
それにしても、一度だけ魔晶鋼が歪んだ時があった。
あくまでも俺は異世界に来たわけではなく、現実世界から思考能力だけ仮想の肉体を以てして動かしているのだ、現実にも何かあったのだろうか、もしくは過負荷を起こしたのか...。
どちらにしても、心配に越した事は無く、取り敢えず心配した方がいいだろう。
それが一時的な電波障害ではない事は、俺はこの段階では気付いていなかった。
決してガ●ダムをモチーフにしたとか、そういうのではありません!




