集まる変人達
──ブレイブダンジョンオンライン、通称BDO
このゲームをプレイするに際して必ず知っておかないといけないことがある、それがクランシステムだ。このセカイにおいてダンジョンとは富の象徴であり、恐怖の対象でもある。そんなダンジョンを探索するためには各国々に設置されたクランに所属した上でパーティを組まなければならない。
クランと言っても様々だ、身内だけで組んだ少人数のクランやソロプレイヤー者たちを受け入れる超大人数のクランなどが存在する。目的だって異なれば掲げるものだって違う、そんなクランにも頂点というものが存在する。
誰が決めたわけではない、なにか本人たちが誇っているわけでもない。しかし、共通理解として皆の頭に刷り込まれている。
──クラン【百花繚乱】
BDOにおける最強、百花繚乱の意にそぐわぬメンバーの一人ひとりが個性と力に恵まれた少数精鋭のクランとされている。
曰く、百花繚乱の直営の他クランに所属していること。
曰く、なにかの分野に特化したものであり、それが認められること。
曰く、クランメンバーに勝負で勝つこと。
上記3つをクリアした上でクランのメンバーの過半数の賛成を得ること。
など、かなり困難な条件を満たすことが条件とされているらしいがその真偽は定かではない。
このクランを語るにおいて欠かせないのが【七つの仮面】と呼ばれるプレイヤー達だ。一人はだれもが知っているであろう蒼色の鎧を身に纏い、類まれなる直感と空間把握能力でどんな戦場もくぐり抜けてきた、まごうことなき最強──【Aoi】、男性か女性かもその兜の下に隠しておりそのプレイヤーネームすら百花繚乱のギルドマスターがつい口から漏らしたものでしかない。
他にも、黄色のプリーストや水色の魔法使いなど、色をモチーフにしたプレイヤーが七人おり、その全員が卓越した能力の持ち主である。
更にはリーダーを筆頭とする10名のメンバーも忘れてはいけない。彼らもまた、最強に手をかける者たちである。
「筆者としてはこの七人がなぜ顔を隠し続けるのか、いつか真相に迫ってみたいものである。だってさ」
「そんな事言われても、困るんですけどねぇ……」
リリィとともにハウスに帰宅した私はそのままリーダーのいる部屋に向かった。するとちょうど私の話をしていたようでそのまま話に入る。ちなみにリリィは他の子に連れ去られていった。
「ワハハッ!アオイはシャイだからな!」
「いや、シャイとかじゃなくて……ああもうそれでいいですよ」
豪快に笑う巨漢は【へらくれす】、ネタとかでなくひらがなでへらくれす。この電子時代にあるまじき機械音痴で、変換をミスしてこうなったとか……脳波打ち込みのはずなんですけどね。
ちなみに本人も結構気にしているらしく、たまにネタにされては落ち込んでいたりする。
「おや、帰ってきていたのかい。まあ、うちのエースのアオイが実は一人七役だなんて誰も信じないわな」
「というか私が顔を出してしまったらほんとに収集がつかなくなりますよ……」
「うちとしてはそれでクラメンが増えるならいいんだけどねぇ」
「ふざけないでください」
あまりにも無責任な事を言う眼の前の飄々とした男の膝に蹴りを入れるもシステムの壁に阻まれて数センチのところで止められる。
彼の名前は【†エクセラ†漆黒の闇】(通称エクセラ)すっごい胡散臭い見た目をした二枚目の男だが、こんなのでもクランリーダーだったりする。実際、突飛なことを言い出して人を困らせたりするがゲームの腕はピカイチで頭も切れるためファンも多い。まぁ私のほうが多い。
あとこのふつーにダサい名前はお酒のノリで付けてしまったあとシラフに戻って後悔したらしい
「おーこわ、でもアオイの正体がまさかあの大人気学生モデルのシノノメだなんて、2年の付き合いだけど未だに信じらんないもんね」
「はぁ、髪の色とか変えても気づかれちゃって、ゲームはじめてすぐの時とか結構大事になって大変だったんですからね」
私こと東雲蒼は正直めっちゃ人気者だ、最近は学生生活とBDOに集中しているためモデルの仕事は入れていないが、それでも高校が特定されて今は基本タクシー登校になり、下心も隠せないような男子たちからの告白なんて日常茶飯事だ。それに、私自身の事情もあいまって余計にメディアからは注目されている。
このゲームもリーダーにあのとき出会わなかったら恐らく続けていないだろう、しかしそんな感謝の言葉を聞かせたあかつきには向こう一週間はネタにされる。絶対言わないですからね。
そんな感じで談笑を続けていると扉が開き、人が入ってきた。
「たーだいまー!」
「ちょっとアイ!はしたないから机の上に座らないの!」
「えー?そんなのきにしなくていーじゃん!ユイは硬いなあ」
扉を勢いよく開けて飛び込んできたのは黒髪に黒いフリルのドレスを着た少女と白髮で白いフリルの付いたドレスの少女。色こそ真逆だが見た目はうり二つなユイとアイだ。
「いや……そのアイちゃん、見えちゃうから隠して……」
「むふー!ケルにぃなら見てもいいよ?……なんちゃってね!あははっ!顔真っ赤になっちゃったぁ」
「こらー!うぅ……おにぃちゃんごめんね?」
そんな双子の白い方に絡まれているのが【keru】だ。見た目はなんてことない青年で平凡イズ平凡を地で行く男だ。
「うん、大丈夫だよ。アイちゃん、もちろんユイちゃんも可愛い女の子なんだからあんまりはしたない行動は慎みなね?二人になんかあったら心配しちゃうから」
「「う……うん(可愛いって言われちゃったぁ!)」」
砂糖を吐くような甘いセリフに、アイユイ二人とも顔が真っ赤なゆでダコみたいになっていた。なんでこいつら入ってきて数秒でこんな自分ワールドを開けるんだろう。
「そこのたらし男さんさっさとどいてよ、部屋入れないんですけど」
そんな空気を遮るかのようにまた新たな人物が現れた。
「あ、ごめんよ。ってルシカちゃんか、ひさしぶりだねぇ」
「そーね、最近こっちに来ることもなかったし、クラメンにあったのもこの前の……げっ」
「人の顔を見てそんな顔をするのはいかがなものかと思いますよコンちゃん」
甘〜くなった空間を破るように現れたのはコンちゃんだ【RUS1KA】がプレイヤーネームだがよく狐のお面をつけているためコンちゃんと呼んでいる。
黒髪に黒い和装の剣士、赤っぽい目は少し鋭さを感じるが実際は優しいいい子だ……多分。
百花繚乱のメンバーとじゃれ合っていると、ギルマスが立ち上がりこう告げた。
「さて、今日はこれで全員かな。では会議を始めようか」
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