蒼の剣戟
おはようございますうううう
薄暗い森の中を走る、つい先程フレンドからアルギの森に特異個体が表れたとメッセージがあったからだ。
「近くだからすぐに向かったとはいえもう少し詳しく場所を聞くべきでしたね、ここマップが広くて好きじゃないんですよ」
耳に意識を割きながら、足は止めず、独りごちる。
数分走って森の中心に近づいてきたときに左の方から轟音が聞こえてきた。間違いない、あそこに目標がいるはずだ。
「やっと見つけましたよ……ってあれはまずいですねっ!!!」
先程までの小走りとは違う本気の踏み込みで駆け出す。今にもミノタウロスの縋が振り下ろされ、先程の轟音の理由であろうボロボロの青年が殺されてしまうところだ。
しかし、
「【蒼の抱擁】!!!」
スキルを発動し、その隙間に庇うように入り込み攻撃を受け流す。
「あ、【Aоi】?!」
私のことを知っているのだろうか、こちらを見るなり名前を呼んできた。しかしそんなことにかまっている余裕はない。
「下がれそうなら早く下がってください、回復薬は念の為渡しておきますね。」
このままだと後ろの青年を庇いながら戦わなくてはならなくなるため早めに下がらせる、これで1対1だ。
「しかしまあ、何を食べたらそんなに大きくなるんですか貴方は……それに見たことのない体毛の色、ほんとに特異個体なんですね」
目の前の敵に向かってそうつぶやく、威嚇なのか身の丈ほどある戦鎚を真横にスイングする様子はたしかに一般人が見たら恐怖で竦むだろう。
本来なら緑っぽい体毛を持つはずのミノタウロス、色は黒く、目もなんか光ってッッッ!!
ミノタウロスの目が光ったと思ったら左側から衝撃が来た! おそらく先程の青年もこれにやられたのだろう。
「でも、私を舐めてもらっては困りますね」
その程度の攻撃でダウンするほどやわな鍛え方はしていない。衝撃をいなすように自ら吹き飛び、空中で体勢を整える。木の側面に着地するようにして即座にミノタウロスに向かって切り込む!
「GMOOOOOO!!」
「この程度で終わると思わないでくださいね!!」
肩から深く切られ、よろけたところに追撃でもう一太刀入れる。するとミノタウロスががむしゃらに武器を振り回した、ロングソードでいなしながらその最後の振り下ろしをバックステップで躱す。
「【不朽の蒼】!」
距離を取り再び踏み込もうとしたタイミングでまた目が光り今度は上から衝撃が来る。相手が何をしたかはわからないが、そのトリガーはわかった。スキルを使って真正面から受け止める。
「なるほど、目が光ると衝撃波を飛ばす能力……?にしてはなにか妙ですがッ!」
とにかく、攻撃がそこまで驚異ではないのはわかった、ならばこちらも全力で行かせてもらおう。
「GUMOMOOOOOO!!」
ミノタウロスの突進を横に飛んで躱し、すれ違いざまにまた一太刀入れる。昨日の戦いでかなりあれを使ってしまったから本当は節約したかったが仕方ない、
「【侵食する蒼】!」
スキルを叫ぶとミノタウロスに傷を入れた数カ所に魔法陣のようなものが浮かびだす、そして動きが鈍りだすやいなやその傷口から蒼色にきらめく結晶が生える。それは全身を覆うように、まさに侵食して対象を捉えていく。
「GUMMOOOOOOO!!!」
ミノタウロスはそんなことはお構いなしに動こうとするが無常にも結晶は全身を覆い尽くして行き、物言わぬ痛々しい像へと変えてしまった。
「ふう、結局雑に戦ってしまいましたね。ユキちゃんの言う反省反省ってやつですね」
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