とある幼馴染カップルの正月
作者がてえてえを書きたいがためにできた小説です(上手くできたとは言ってない)
「ほらサヤ、もう6時だよ。起きよ?」
そう言って肩を揺すって起こしてあげる。
「んん・・・、あとちょっと・・・。あと5分だけ・・・」
眠たそうな声音を上げながら、再び布団に包まろうとする美少女、明宮紗弥加。
何を隠そう、俺の彼女だ。
サヤは保育園時代からの幼馴染で、出会って以来ずっと好きだったんだけど、高校に上がって思い切って告白してみたらOKをもらえて晴れて付き合う事ができた。あのときの俺、GJ!
ちなみに、サヤっていうのは紗弥加を呼ぶ時の愛称な。逆に、俺はヒロって呼ばれてたりする(俺の名前が緋色だから)。
お互いをニックネームで呼び合うなんて、前までは考えられなかったんだけどな。めっちゃ俺リア充してね?
「一緒に初日の出見るって約束したじゃん。俺、楽しみにしてたんだけどなー」
今日はお正月。
前々から新年をサヤと一緒に過ごしたかった俺は、初日の出を見るという口実で年明け早々サヤの家に全速力で自転車をとばして突撃したのだ。
正直、このまま一緒に二度寝するのも満更では無いんだけど、折角だし一緒に初日の出見たいんだよな。そう思い、少し拗ねた感じで耳元で囁いてみた。
「っっ、うー、ズルいよヒロぉ・・・。分かったよ、ちょっと着替えるから玄関で待ってて。メイクとかもしなきゃだし」
一瞬ビクッとして震えたあと、のそりと起き上がってそう促してくる俺の彼女。うん、寝起きもめっちゃ可愛いな。超好き。
「おぉ・・・」
しばらくして出てきたサヤの姿に、俺はそんな言葉しか出てこなかった。
そのくらい可愛かった。
寝ている時とは違って下ろしている、色素が薄くてサラサラな髪に、ぱっちりした目。小さい顔に合わせたような小さくて形の良い鼻。ピンクのトレーナーに黒いパーカー、ジーンズというボーイッシュな服装に合わせてネックウォーマーを口元まで引き上げて着ていて、活発さと清楚さが芸術的なほどに混ざり合っていた。
「ごめん、待った?ちょっと時間かかっちゃったんだけど」
しかも性格まで良い。ほんと、俺の彼女最高。
「んーん、大丈夫。それより、めっちゃ可愛いね、今日の服装。まあ、いつも可愛くて好きなんだけど」
そう言うと、顔を赤くして「・・・早く行こーよ」と急かしてきた。やー、なんかもう尊すぎてやばいわ。そんなことを思いながら、自転車に飛び乗った。勿論、荷台にサヤを乗せて二人乗りでな!
時刻は7時14分。20分前に海に着いたが、案外遅めに日が昇るんだな。
サヤも、「これならまだ寝てても良かったじゃんかー」と、少しご機嫌斜めだ。
しかし、いざ日が昇ると、その美しさに俺もサヤも圧倒された。
朝日を浴びてキラキラと輝く海。まだ辺りが薄暗く、だからこそより一層橙色の太陽が強調され、いつにも増してその神秘性を顕わにしていた。冬らしいキリッとした空気も上手く調和して、このシチュエーションの特別性を強化している。
「綺麗だね」
白い息を吐きながら、どちらともなくポツリと言った。さり気なく手を伸ばしてその細い指に触れると、思っていたよりも強い力で握り返してきた。
「来年も見に行こうね。次はもうちょっとお寝坊してから」
そう、茶目っ気たっぷりに言ってきた。
「・・・うん」
俺は一回家に帰り、少し緩めの格好に着替えてサヤの家に再度お邪魔した。のだが。
「・・・なにしてんの?」
おばさんに家に上げてもらって真っ先に目に飛び込んできたのは、こたつで溶けかけているサヤの姿だった。
いや、分かるよ?休みの日なのに早起きして、眠くなっちゃったんだよね?
でもさ、彼氏が家に来ること分かってて、それは気を抜き過ぎっていうか・・・。まあ、無防備なサヤも眼福なんだけどさ。
「あ、ヒロ来たー。ほら、一緒に寝よ?」
こたつの布団を上げて、ポンポンと横を叩いて横に寝るよう誘ってくる。その仕草が愛おし過ぎて脳内で吐血しまくった。
「いや、まあ、うーん・・・」
流石に恥ずかしいのと、後ろでおばさんがニコニコして見ているのとでどうしようか迷っていると、
「・・・嫌?」
と、悲しそうにすごすごと布団を閉じるサヤ。罪悪感とか背徳感とか諸々の感情が俺に多大なるダメージを与えてくる。
「分かった、分かった。じゃあ、こうしよっか」
「? わわっ!」
妥協点を考え抜いた末に、座椅子に座って、サヤをその上に座らせることにした。
「えぇー・・・、ちょっとこれ、恥ずかしいんだけど・・・」
どの口が言う。まあ、とはいえこれ、思ってたより恥ずいな。いい匂いするし、理性が危ないわ。
「サヤー」
あ、勢い余ってギュってしてしまった。耳赤くなってる。かわ。あと、さっきは布団に隠れて気付かなかったけど、部屋着めっちゃもふもふしてんのな。抱き心地最高なんだが。
「うー、止め・・・、ないで・・・。もう、ゲームするからね!」
手を伸ばしてゲーム機を手に取るサヤ。俺の上から出ようとしないところがまた可愛いいんだよな。
「みかん食べる?」
皮を剥きながら聞くと、「・・・食べる」と返ってきた。あーんしてあげた。以上。