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掌編小説  作者: kj
3/12

占いの効果

秋風、ヒゲ、夜店 の三題噺です。

占いをテーマにしてみましたが、占いだとやれることの自由度が高いので各人が書けばめちゃくちゃ面白くなるんだろうなと思いました。わたしのでニヤリとしていただけるかどうか……。

最近は毎日一作投稿できればと思っておりますのでよろしくおねがいします。


 大きな月が昇り、あたりに心地よい秋風が吹く。

 そんな情緒的な背景をしり目に、ふらふらとした足取りで俺は歓楽街を歩いていた。

 隣には会社の同僚が並んで歩いている。

 これまたくねくねとおぼつかない足取りだ。

 花の金曜日、給料日のあとだった俺たちの財布の紐は、おのれの頭と一緒に緩―くなっていた。ほろ酔い気分のそんな折、同僚がとあるものを見つけた。


「あれって占い師?」

 確かにそこにいたのは占い師らしかった。

 ご丁寧に怪しげな紫色の背景に「占」の文字が書かれた看板を立てかけている。

 同僚は合わない焦点を俺に向けた。

「ちょっと行ってみねえか? 面白そうじゃん!」

 えぇー、と俺は抗議の声を上げる。俺は占いが嫌いだからだ。

 これは偏見かもしれないが、テレビで見るような占い師は基本的に当たり前のようなことしか言わないし、だれもが思っているような願望を、さも当ててやりましたとまくしたてる占い師にイライラするからだ。

 わかるだろう? 占いを信じていないやつは99%そう思ってる。うん。

「少しだけ! なっ?」

 俺はしぶしぶ同僚についていった。

 占い師は髭の長い爺さんだった。

 長いひげは秋風にたなびき非常にシュールだ。

 俺の占い師に対する好感度はまだ占いが始まってもいないのにもかかわらず、暴落を始める。出落ちじゃねえか。

「んじゃ、お前占ってもらえ」

 俺かよ! 来たかったやつが占ってもらうんじゃないのかよ! というツッコミももはや早く終わらせたい一心で飲み込んだ。


「私の占いは命術と相術を使用した総合占いになります」

 はじまったよ、まず興味ないから説明はいらん。

 占い師は俺の誕生日、血液型、家族構成などを聞いてきた。

 普通に考えればそれなりの個人情報である。

「最近嫌なことあったでしょう?」

 まずはジャブ的なのが一発。

 逆に聞きたい、嫌なことない奴いるか?

「ああ、会社ですかねこれは」

 サラリーマンがほぼ一日中いますからね。大抵はそこでおきるでしょ。

「うん、人間関係ですね?」 

 いやなこと第一位をしたり顔で言わないでください。

 俺の心の中のツッコミは永遠と続いた。

 そのあともいろいろよくありそうな占いの言葉が並べられた。

 そのあとめちゃめちゃイライラして記憶がなくなるまで飲んだことを追記しておこう。


 後日、喫茶店に入ると混雑していてカウンター席しか空いていなかった。

 仕方がなく、カウンター席に着く。

 ちょっと待てよ、この光景なんか身に覚えがある。

 ……あ、あの占い師だ。あの後、占い師は具体的な未来を予想してくれた。


・店が混雑していてカウンターに座る


 嘘だろ。当たってるじゃないか……!?

 コーヒーを注文したがちょうど豆を切らしてしまったらしく、別の飲み物を頼む。はっ! これは!


・コーヒーが頼めない


 またか! 具体的に未来を当てられたことにさすがに驚く。少し占いに対して考えを改めなければならないかもしれない。そこまで考えて、俺はハタと気づく。あの後占い師はそのあとなんて言った? そうだ、


・運命の人と出会う


 細かい内容はばかばかしいと思ってほとんど覚えていない。これは非常にまずいんじゃなかろうか。そんな事を考えていると唐突に話しかけられた。

「となりよろしいですか?」

 黒髪がきれいな女性だった。


・黒髪の女性に話しかけられる 


 確かにそんなこと言っていたかもしれない。これがその相手だろうか。だとしたらアドバイスをもらった気がする。


・その女性を○ ○ なければいけない


 肝心なところが思い出せない。普通だったら仲良くなるためには褒めるところだ。

 しかし、わざわざアドバイスするということは普通じゃないのではなかろうか。

 褒める? けなす? 笑わせる?

 くっ、あの時の俺に言ってやりたい。占いを信じろと!

 すみませんお一人ですか、と尋ねるとそうだという答えが帰ってきた。よし。

「髪、おきれいですね」

 チキった俺は無難に褒めた。女性は怪訝そうな目つきでこちらを見、

「は、はあ、ありがとうございます……」

 と引き気味で言った。テーブル席があくとそっちに移ってしまった。

 間違った……。選択を間違えた。

 俺はその場に突っ伏した。

 占いをしてなければ……。

 そもそも占いなんてしなければ告ってもいないのにふられた気分にならなくても済んだのかもしれない。

 占いなんて、ともはや侮る気にはなれなかった。しかし残念ながら俺にとって占いの評価は変わらないまま。

「占いなんてキライ……」

 俺はそうつぶやくことしか出来なかった。


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