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掌編小説  作者: kj
2/12

隠しもの

香辛料、隠れる、嘘 の三題噺です。

掌編におさめる感じが物語の序章っぽくなってしまいました。批評お願いします。

 国の要である関所。

 そこに務める末端の衛兵たる私は怪しげな男を捉えていた。

 馬車に繋がれた荷車に若い男一人、中年の男一人。

 行商人にしては若すぎる。

 そのくせ身なりがだいぶいい。

 何か違和感を感じる奴らだった。

 

「おい、そこの。ああそうだお前らだ。とまれ」

 私は二人を止めた。

「へい、なんでしょう騎士様」

 中年のほうが下卑た声で答えた。

「積み荷はなんだ?」

「へい、香辛料でさあ」

 荷車に積まれたかごの一つに手をかけた。

 かけられた布をめくり、中を見せた。

 中には黒い粒がぎっしりとつまっている。胡椒だろうか。

 なるほど、香辛料。それなら確かに儲かる。

 今じゃ金よりも高いなんてこともあるらしい。

 小僧でも儲けがでかいのはうなづける。

 それでも不審に思う。

 香辛料だけではほかの年よりの商人どもには負けるだろう。

 それでもこれだけきれいな格好が怪しい。

 何よりこいつらの顔が気に入らない。

 「何にも悪いことしてませんよ、ぐへへへへ」というセリフが書いてある、ように見える。

 気のせいではない、私の直感がそう訴えかけてくるのだ。

 私のそうした疑り深さが門兵長に選ばれた所以だ。

「貴様ら、何を隠している。すべての荷を見させてもらおう!」

 私は部下に指示を飛ばす。

 商人はその時、確かに脂汗を流していた。

 もう一人は荷台の上でどこ吹く風、しらばっくれているがこれは決まりだな。

 間違いなく違法の品を密輸している。

「騎士様! お話があるんですがね……」

 ほうら、来た来た!

 十中八九賄賂の相談だろう。

「まあ待て。まずは何を隠してるのかだよ。商人くん」

 私はにやりと笑う。

 ここまでくればもうこっちのものだ。

 自慢じゃないが門兵の給料はたかが知れている。

 相当やばいものではない限り商人のご相談には乗ってやるつもりだ。

 かごの下のほうに隠れていた木箱を部下が見つけた。

 こいつの分け前は一割増だな。

 箱の中には乾燥した葉がぎっしりとつまっていた。

 素人であれば香辛料の一つだと思うかもしれないがそうではない。

 ふうむ、アヘンか。ふん他愛もない。

「なんだろうなあ、この葉は。薬か?」

「ま、まあ似たようなもの? かもしれませんでさあ」

 大麻、マリファナいろいろな呼び方があるが、そんなに珍しいものでもない。

 一応は禁止されているがよく出回るものでもある。

 いいだろう。

「いくらだ?」

 私は単刀直入に聞く。

 なにが? なんてとぼけでもしたら即刻ブタ箱送りにしてやる。

「金貨5枚でいかがでしょう?」

「おい、こいつら詰め所につれていけ」

「じゅ、10枚で!」

「早く連れて行かんか」

「15枚!」

 商人は、はあはあと息を切った。

 まあ、こいつらであればこのくらいであろう。

「よし、いけ」

 二人はとぼとぼと門をくぐっていった。

 ありがたく思え、捉えられなかっただけましだろう。

 まあ、こってり絞ってやったけどな。

 門兵に嘘など100年早い。今日はうまい酒が飲めそうだ。


「いやあ、だいぶ絞られましたね」

 門をくぐった中年の商人は大金をせしめられた割にシャキシャキと歩いていた。

 それに若いほうの商人がだるそうに答えた。

「もう商人の真似事はやめてよいぞ。確かにずいぶんと大金を巻き上げるものだ。

 しかし手慣れたものだったな。やはり腐っている。

 今の王では国がいずれ死ぬであろう」

 若い商人は身にまとったローブを脱ぎ捨てた。

 青年はもちろん商人ではなかった。

 もちろん密売人でもない。

 国を憂う王族の一人であった。

 これからの計画は…とか王位簒奪のために……などとブツブツつぶやく。

 いったん思考をやめると王族の青年は中年のほうに語り掛ける。

「それにしても迫真の演技だったな。もう従者などやめて役者にでもなったらどうだ?」

 青年はくつくつと笑った。

「そんなことしたら私はあなたに首を落とされるでしょうね。

 それにしてもわざわざこんな危ないことしなくてもよかったのでは?」

「たわけ。本当に隠したいものがばれないようにするためには、

 隠し物を見つけさせてやるのが一番だろう?」

 そう言ってのけた青年は荷車の中でふんぞり返る。

「あなたが王族とばれた時点で私たちの首は飛んでますからね。

 それでは支援者と合流しますか。いよいよですな」

 「ああ、こんな腐った国ぶっ壊してやる」

 二人の商人から王族と従者になった二人はこれから始まる真の目的を果たすため、その先を急いだのだった。




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