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仮面の下のヴィラン〜負けを知らない女は今日も微笑する〜  作者: ぶる子
一章 スクールカーストにご用心
5/8

4

・作者はラノベ好きです未麗のラノベの評価は物語の都合上です作者も隠キャです(白目)


…難しいものね。


何も言わずに走り去って行った女子を思い出して、未麗は苦笑した。

父の転勤の都合で新たにやってきた学校だった。失敗はできないと思っていたし、失敗するはずもないと思っていた。案の定、クラスの大半のやつは易々と騙せた。


あいつらは、私のことを美人で知的で優しく上品な、流石すぎる人間としか思っていないだろう。私の仮面の下に目を向けようともせず、私に少しでも関わろうと寄ってたかって話しかけては褒めちぎった。


勿論私のことをよく思っていない輩にも気付いていた。その中の一人、片寄梓と言ったか。それがボスだろうと何となく目星もつけていた。ついでに、このクラスの力関係もざっと把握し、これからのプランも脳内に立てた。取り敢えず、目指すのは頂点。

梓の周りの女たちは引き抜く。どうせ梓も一人になれば力はなくなる。まだ暴れるようなら究極まで追い込むことも計画の一つしておく。最悪死んでも構わない。


男子とは積極的に、しかし女子に嫌われない程度に関わる。顔がいい人間やスポーツができる人間は大体クラスの中で上にいるから、その辺りと付き合っていくのがいいだろう。


予定通りに行けば、二ヶ月…いや、一ヶ月でこのクラスをひっくり返せるだろう。


ただ、未麗の脳裏には一抹の不安があった。

出来るだけ不安と言うものは早急に解消させたいものだが、そう上手くいくとは思えないものだった。


その不安とは、一人の女子である。先程私に声をかけたくせに、急に顔を赤くして走り去って行ったーー品田夕美、だ。


あの女子は、一見してみればただの隠キャ、私の足元にも及ばない。考えるに値しないはずの人物だった。でも、違った。自己紹介の際に、目が合った。


他とは違う目だった。探るような。疑うような。まるで私の本質に気付いているかのような。彼女としてはまだ確証があるわけではなさそうだったが、私を疑っていたのだ。


間違いなく。今まで誰一人として見破れなかった仮面に、(ひび)が入った気がした。

あいつは危ない。


直感的にそう感じた。だから、群がる奴らを無理に追い払ってまで、彼女を追いかけてみた。すると彼女は図書館へ入り、本を読み始めた。


遠目に確認したタイトルから、彼女の好きそうな系統を脳内で検索する。知識の片隅にヒットしたものが、かなりマイナーなものだったため、この本を読んでいれば彼女の関心を得られるのではないか、と好きな子に興味を持ってもらいたい小学生のような考えに至った。


運良くこの学校の図書館は本が豊富で、その本もシリーズで揃えられていた。

ライトノベルだった。


なるほどこれは、隠キャを代表するようなヲタク向けのものだと謎に納得し、一巻では作戦的に微妙だと感じ、そこそこにファンだと言うことをアピールするために、五巻を手に取った。全十二巻だった。


さりげなく彼女の隣に座り、本を開く。内容は全く興味も湧かず、面白いとは到底思えなかったが、いかにもナチュラルに読みつつ、隣へと気を配った。


予想は的中。彼女はちらりと私が読んでいる本を確認し、驚いていたようだ。

それほどにこの本がマイナーであり、かつ彼女の心中に衝撃を与えるものだと物語っていた。もうファンだったか、もしくは目をつけていた作品だったのか。


そのどちらだったとて、未麗としては自身に興味を持ってくれればそれで良かった。

「あのっ…」

彼女が話しかけてきたときは、勝った、と思った。


ここから徐々に仲良くなり、夕美自身をその中から引き出して私の姿に誤解をさせればいい、と思っていた。


しかし一筋縄には行かないのが世の摂理だと痛感することになる。


彼女は私の顔を見るなり逃げ出してしまったのである。それははっきり言って、予想外だった。いや、予想はしていたが、まさかな、とたかを括っていたところがあったのだと思う。

人間とは難しい。本当に。今まで人間など単純で簡単だと思っていたが、この品田夕美とやらは別だった。


まあいい。私が失敗するなどあり得ない。私は完璧で、悪女なのだから。


予鈴がなり、未麗は素早く立ち上がった。このライトノベルは借りた方が都合がよさそうだと思い、借りることにした。ふと、机に置かれた本に目を向ける。夕美が置いて行った本だ。……これも借りれば、彼女に渡す際に関わりが持てるかもしれない。


未麗は興味もない二冊の本をカウンターに持っていき、借りた。五限まであと数分であることに気づくと、未麗はやや早足で教室へと戻ったのだった。


その日はその後の数学でプリントを誰よりも早く解き終わり、かつ全問正解をした未麗に殆どが称賛と尊敬の視線を向け、梓が密かに唇を噛むというちょっとした注目事件以外は何事もなく事が進み、転校初日が終了した。


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