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11-6

「こんにちは。むっ、お前は!!」

「あ、あの……」

「邪教の首魁が来たぞ!!」

 ひ、ひええ。

 なんか武装した教徒が集まってきた……。

 とても話を聞いてくれる状況じゃないし。

 というか、よくよく考えたら、いきなり本拠地に向かうのはまずかったんじゃないかな!!


 こうしてあたしとエレナは教徒たちに建物の奥へと連れていかれてしまい……。

 到着した場所は、小窓が一つだけある頑丈な扉の部屋だった。



 十字聖教の大礼拝堂内の部屋にて。


「では早速ですが話をしましょう」

 仰々しい飾りがついた帽子をかぶっている、なんかこういかにも偉いんだろうなって人が話し始める。


「逃げずに来たという事は、あなたは自身が犯した罪を認めた。そして許しを請いに来た……と」

「いやー、まあ、うーん」

 別に悪い事してないし、みんなが勝手に崇めだしただけなんだけどね……。

 だから認めるとか許すとかそういう問題じゃないと思うけども。


「我らが崇める主に懺悔し、同胞へと転生する……と」

「えっ」

 ちょっと!

 なんか勧誘されているし!!

 あたし宗教とか興味ないよ……?


 そう思っていた時、偉そうな人は、近くにいた教徒へ目線で合図する。

 すると、教徒の人らは部屋から出て行き、大した間を置かずに炎を満たした銀製の杯を持ってきた。


「それでは、この書物を自らの手で聖なる火炎へとくべなさい」

「…………」

 偉そうな人の手から渡された書物。

 間違いない、あたしが描いた本だ。


 なるほど、踏み絵をしているわけだね。

 ここで本を燃やして未練を絶てば許してもらえると……。

 買ってくれた人たちが言った暴言も全部チャラになると……。


 …………。

 …………。

 …………。

 …………。


 あたしは無言のまま、自分が描いた本を見つめて考えた。

 そして至った結論は……。


「さあ、どうしたのですか」

「ごめんなさい、それは出来ません」

 やっぱり出来ないよ。

 仮に人気が出なかったとしても、自分の作品を自分で陥れるなんて出来ない。

 この作品もあたしなんだ。

 捨てられるわけなんてないよ!!


「今……なんと……?」

「できません。あたしの大切な本ですから」

 あたしはぎゅっと自分の本を抱きしめながら、まっすぐと偉そうな人へ告げた。


 その瞬間、偉そうな人の表情がみるみる強張っていき……。


「何故ですか!!!!! 何故出来ないですか!!!!!」

「ひっ」

 今にもあたしやエレナを食べてしまうのではないかと思わんばかりの勢いで、机を両手でバンっと叩いた後にそう大声で言い放ったのだ。

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