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こうして、十字聖教の人らとの揉め事もどうにかおさめた。
あたしの本……、たしか経典って言ってたっけか、それも無事に売れた。
「ふー、疲れたぁ……」
「中々きつかったなー」
「お疲れ様です。ゆきさん、エレナさん」
前回も人多かったけど、今回はもっと多かった。
結局丸一日かかっちゃったよ。
中々しんどかったし、途中トラブルもあった。
でもみんな喜んでもらえてた、結構嬉しい!
「見事でしたよ。まるで本物の教祖でした」
「う、うん、そうかな?」
別に特別なにかやったわけでもなかったような……。
教祖、教祖……ねえ。
教祖ってなんだろうね?
振り向かない事……かな、うん。
「まずはしっかりと休息しましょう」
「あの、学園長」
「なんでしょうか」
「あたし、十字聖教の人らにそっちへ行くって言っちゃったので……」
「言った手前、行かないわけにはいかないでしょうね」
そうなんだよ。
あたし行きますって言っちゃったんだよ……。
今となってはお客さん……じゃなかった信徒だっけ?教徒だっけ?
まぁどっちでもいいや。
ともかく、みんなを守るために仕方なしとはいえ、なんかえらいことになっちゃったなぁ……。
「ですが、もう夜です。また後日にしてみてはどうでしょう? 先方もそのくらいは待ってくれますよ」
「う、うん。そうだよね」
「戻りましょうか、学園に」
「はーい」
「おう!」
こうしてあたしとエレナは学生服に着替えると、商人ギルドの人に別れを告げて学園へと帰っていった。
そして自室へと帰ると、気がぬけたのかベッドに飛び込んだ直後、眠りについた。
それから数日後。
街の中にある十字聖教の本部にて。
「ひええ……、すごい建物だ……」
あたしは再び教祖の格好をしてきたわけだけども。
な、なんじゃこりゃあ!
いかにも大聖堂って感じの建物だよ!!
こんなの図鑑とか学校の授業でしか見た事なかった……。
で、今からここに入るんだよね?
コスプレしてるあたしが。
うそでしょ……。
何のギャグなの。
こりゃ冒涜言われても仕方ないよ……。
「なんだ? 入らないのか?」
巫女も一緒に居ないと駄目と学園長に言われ、エレナもしぶしぶついてきてくれた。
売り子やってた時はあまり見れなかったけど、巫女衣装のエレナ可愛いなあ。
あたしだけの天使……、うふふふ……。
いけない、何考えているんだ。
「え? う、うん」
見とれている場合じゃないよね。
よし、この扉を開けて中へ入って……。




