11-2
学園長の執務室にて。
「待っていましたよ」
学園長は、椅子に座り紅茶を一口飲むと、笑顔であたしを迎えてくれた。
あたしは軽く会釈して、椅子に座った。
「次のあなたの作品の発売日が決まりました」
おお、あたしの新作!
製本とか終わったんだねえ。
本当、現世ではありえなかったもんなぁ。
みんなには感謝しかないよ、ありがたやありがたや。
「3日後です。場所はここや商店街から少し離れた広場です」
3日後かー、そっかそっか楽しみだね。
ん?
商店街じゃない?
なんでだろ。
「それに際して、ゆきさんには一つお願いしたい事があるのですが……」
「ん? なんでしょ?」
お願いしたい事ってなんだろう?
まさかコスプレして売り子もやるとか……?
あ、あんまし自信ないけども、この際だからやってやる!
3日後。
王都敷地内にある、広場に設けられた関係者が控えるための小屋にて。
「あの……」
「はい」
「いくらなんでもこれって……」
確かにコスプレして売り子をするという予想は当たってた。
だけどもさ……。
「とてもお似合いですよ」
あたしに用意された衣装。
それは真っ白で丈の長いスカートの法衣だった。
しかも、露出少ないくせに何故かスリットだけはしっかり入ってるし、太もも見えるし、ニーソはかされるし。
なんかこう、いろいろと間違えている聖職者の服装って感じだ。
いやー、ファンタジーやってるねぇ……。
それで、なんでこんな格好をするかというと。
どうやらあたしは、街では教祖として崇められているらしい。
だからこの装いでいけば、買ってくれる人は喜んでくれる……という話みたい。
聖女から教祖ってグレードアップしすぎでしょう。
……本当なの?それ。
「魔法少女よりも、そちらの方がいいかもしれませんね」
「えぇ」
「冗談ですよ」
一瞬本気かと思ったよ!
教祖なんてやったことないからわかんないし、あたしそういうキャラじゃないし!
「ゆきは分かるんだが、なんで俺もこんな格好しなきゃいけないんだ?」
「エレナさんは神託を受け、天使の力をその身におろした巫女ですからね」
「なんだそれ……」
エレナもあたし程豪華な作りではないにしろ、白色のローブに背中には天使の羽を模した飾りを背負わされている。
まさか自分もまきこまれると思っていなかったのか、崇められることに慣れていないのか、普段は何事もきっぱりと割り切るけど、今は怪訝そうな顔をしている。
「さあ、そろそろですよ。教祖様、巫女様」
「うう……」
「へいへい」
なんかこう、あれだね。
新興宗教だね。
うーん、なんか変な方向になっちゃったなあ。
で、でも折角みんな買って来てくれるし……。
頑張らなきゃね。




