10-4
学園長の執務室から自室へ帰る道中にて。
「お、いたいた」
おや、エレナだ。
どうしんだろう?
「まーちょっと来いよ。セフィリアも待ってるからさ」
「うん」
二人が待っている?
なんだろ……。
あたしは疑問に感じながらも、エレナについていく事にした。
学園内、資料室にて。
「おーい、連れてきたぞー!」
「ありがとうございます。じゃあ話を始めましょうか」
あれ、ここってあたしが絵を描くのに調べものする場所だ。
二人ともどうしたのかな。
「この本のここを見てください」
すごい古そうな本だ。
どれどれ……、何かが書かれているのかな。
”もしも私の身に何かあれば、王城の中に私の力の一部を隠す。必要があれば使って欲しい”
「ほおほお……」
「すげーだろ?」
「で、これ何」
「にっぶいなー! この学園内のどこかにその力ってのがあるんだよ!」
いや、まぁうん。
それはわかるんだけども……。
「それってそんなにすごいの?」
「この本は、かつて魔王と戦った勇者の手記の一部なのです」
なるほど、確かに勇者の力の一部なら、すごいと思うけど……。
「勇者って、この世界の英雄なんだよね? よくそんなの見つかったね」
「私も偶然なのです。本の合間に挟まっていたから、今まで誰も気づかなかったのかもしれません」
なんかこう……、偶然すぎるというか、ご都合展開というか。
普通そんな大事なものだったら気づくよね……?
それとも、個人的の日記だから、誰も存在を知らないとかなのかな。
「それで、その力のある場所ってどこなの?」
今はそんな展開をどうこう言う場合じゃなくて。
問題は、それがどこにあるかだよね。
ってか、王城が学園になったタイミングで、見つかってそうとは思うけどもどうなんだろ。
「ははーん。さてはゆき、もう既に見つかっているとか思っているだろう?」
「う、うん……」
「私も最初はそう思いました。次にこれを見てください」
セフィリアがそう言いながら、近くにあった巻物を手に取り広げた。
「これって、ここのかな?」
「はい」
間違いない、ここの見取り図だ。
しかし、こういうので見るとやっぱ広いなぁ……。
あたしが普段行き来している場所以外にも、いろいろありそうだもんねえ。
「実は何か所かおかしい部分があるのです」
「というと……?」
「例えば、ここの空間」
「あー、ここって確か階段があるところだよね」
「ええ。実際に見ると扉や他に入る場所が無いのに、なぜか空間があるのです」
確かに、本来なら何もないはずなのに、部屋っぽいと言われればそうかもしれない。
「そういう場所が、他にもいくつかありまして」
「うーん、設計ミス……なわけないよねえ」
本当だ、確かにいくつもある。
なんだろ……。
学園長なら知ってるんかな。
「でさ、ここにその勇者の力があったら面白いよなって話してたんだ」
「はい」
エレナはともかく、セフィリアって大人しくて真面目だと思ってたけど……。
意外と好奇心旺盛なのかな?
ノリノリだ……。
勇者の力かぁ……。
確かにそれがあったら、あたしももっと強くなれるかもなぁ……。




