10-3
「試しに、剣を出すイメージで手に意識を集中させてみてください」
「へ? は、はい」
学園長の言っている事がよくわからないけども。
手に意識を集中すればいいんだね。
だから、手を広げて……。
うーんうーん。
剣よ出ろ~、出ろ~。
でろでろでろ~。
…………。
…………。
…………。
!!
「うわあ!!!」
ひええ、何か出たよ!!
なにこれ、剣……?
でも全体的に青く光ってるし、なんか輪郭ぼやけてるし。
「成功ですね」
どうやらこれでいいらしい。
って、これ何!
「あの、これなんでしょう……?」
「ゆきさんは魔法力が無いわけではないのですよ」
「えっ、でもミカエルやセフィリアには10って言われたし……」
とりあえず物騒だから剣しまっとこう。
あ、簡単に引っ込んだ。
意外と便利かも……。
「魔法力には波長があるのですが、ゆきさんはそれが特殊なのです」
「ほ、ほほお……」
「だから他の生徒の方には読み取れないし、通常の魔法は使う事が出来ない」
確かに、火を出そうとしてもボソっとしか出なかった。
他もいろいろこっそり試してみたけど、軒並み駄目だったしなぁ。
「その手袋は、そんなゆきさんの魔法力の波長を調整しているのですよ」
「ふむふむ。つまり、この手袋をはめていたら魔法が使えるんですね!」
「はい」
おおお!!
ついにあたしも魔法が使える!!
「ですが、魔法力を具現化させる事しか出来ません。それをつけていても、火や雷は出ないでしょう」
なーんだ……。
具現化しか出来ないんだ。
てっきりエレナとかミカエルみたいに、ばーんとなってどーんと相手をやっつける魔法が使えると期待したのに。
「そんな残念がらないで下さい。魔法力の具現化は、使い方によっては攻撃にも防御にもなる優秀な力ですよ」
「は、はい……」
「その手袋は差し上げますので、頑張って下さいね」
こうしてあたしは(具現化限定だけど)魔法が使えるようになった。
でもどうして学園長はここまで優しくしてくれるんだろう?
個別授業もそうだし、アリスの衣装の試着もそうだし、この手袋だってそうだし。
迫ってきたくらいだから、もしかしてお気に入り……?




