2-2
「さっきから何よそ見しているの?」
背後から声が聞こえてくる。
まさか……!
「随分な余裕ね、ならこれでも食らいなさい!!」
げげ、なんだかこっちに手向けてる!
しかも、手には太陽のようにめらめら燃えてる火の玉が出来てるよ!
「うひっ」
あ、あんなの当たったら死んじゃうよ!!
どうしようどうしよう。
あたしも魔法……魔法……。
あああああだめだ!!
魔法どころじゃないよおおおお!!
うわああ!!
あたっちゃうううう!!!!!
…………。
…………。
…………。
…………。
あれ?
なんとも……ない?
なんか煙すごかったし、何にも見えなかった。
というか当たる瞬間怖くて目つぶっちゃってて何が何だか……。
「う、うそ……、私の全力陽光火球が……」
でも、どうやらあたしは相手の自信満々の一撃を耐えてしまったらしい。
あ、あれかな。
窮地に陥った主人公が突然、謎の隠された新たな力に目覚めて、それで防いじゃったみたいな?
「きゃあ!!」
あたしに攻撃を防がれた女の子は動揺していた時、突如光の玉が彼女の背後を襲う。
その後、女の子はあたしを恨めしく見ながらその場に崩れるように倒れて動かなくなってしまった。
「後ろががら空きだっつーの」
「あー! つり目の女の子!」
どうやらさっきの光の玉を放ったのは、馬車でずっと一緒だったつり目の女の子のようだ。
女の子は杖をこちらに向けたまま、少しつまらなさそうにそう吐き捨てた。
「つり目……。あぁそうか、俺の名前まだだったな」
「う、うん」
あぁしまった、あたしの勝手な呼び方を口に出してしまった。
まずい、このままじゃ今度はあたしがやられる番に……。
「エレナだ」
つり目の女の子エレナは、向けていた手を下ろした後に腕を組みながらそう告げた。
「あたしはゆきだよ」
名乗ってくれたからには、こちらも名乗らないと失礼だと思ったあたしも、すかさず名乗った。
「なるほど、ゆきかー」
「うんうん」
「ま、今はどうでもいいな。ゆきも潰すべき相手だしな」
ひっ。
やっぱりあたしもやられる!?
ひええ、今度こそさっきのようなまぐれはないよ!
どうしようどうしよう……。
「だが、まずはめんどくさそうな奴からだな。じゃあな! 油断するなよ!」
エレナは組んだ腕を解くと、背を向けながらもそう告げてあたしから離れていった。
「あ、さっきは助けてくれてありがとう!」
と、とりあえずは助かったぁー……。
エレナ強そうだしなぁ、あんなの受けたら本当に死んじゃうよ。
でもどうしよう。
まさかの舞踏会……もとい生き残りバトルなんて……。
あたしも魔法使えるのかな。