2-1
今まで大人しかった女の子達は、突然戦いだした。
「くらえ!!」
「はあぁあ!!!」
「私負けない!」
「くそ! これでもか!!」
ある子は手から火球を飛ばし、またある子は手を組んで祈ると稲妻を迸らせ、またまたある子は腕をめいっぱい振るって小型の竜巻を起こして、他の女の子を吹き飛ばしている。
え、みんな何やってるの……?
何で急にどっかんばったんしてるの……?
てかみんなさも当然のように使ってるけど、これって魔法だよね……?
ど、どどどどいうことなの!!
わけわかんないよおおお!!!!
そうだ、馬車の中で話してくれた女の子!
つり目の女の子は……!
「オラオラ!! バンバンいくぞ!!!」
つり目の女の子は、いつのまにか持っていた杖から光る玉を放出して他の女の子達を蹴散らしている。
とても話しかけられる状態じゃないし、近寄ったらまず巻き込まれる。
うう、なんで?
どうして?
メイドさん同士が魔法で戦いだすとかなんなの!
そ、そうだ。
壇上に居た女の子!
あの子ならきっと何か分かるはず!
そう思ったあたしは、どさくさにまぎれながらも壇上へ向かい、登ろうとした。
「なんだお前! 今は舞踏会の最中だぞ!」
だが、先ほどの凛々しい女騎士があたしの前に立ち壇上へ入れないようにしてしまう。
「みんなが戦いだすとか、こんなの舞踏会じゃないよ! 武闘会の間違いだよ!」
我ながら上手い事言えたような気がする。
でも魔法だから武術ではないよね……。
って冷静にセルフ突っ込みしている場合じゃない!
「いいえ、戦いは舞踏なのです」
あたしの発言に、壇上に立っていた髪の長い女の子が穏やかな表情を変えずにそう諭してきた。
「ごめん、意味がわからないです……」
「おや? ひょっとしたら何も聞いておられないです?」
「はい」
「おかしいですわね……、案内する者にはしっかり説明するよう伝えましたのに……」
あたしが異世界転生してきてそんなのは知らないだなんて、きっとこの子には通じないだろうし。
あれ?
じゃああたしの生まれってどういう事だろ?
転生してきたなら異世界での生活した記憶があるはずだよね?
気づいたら突然馬車だし……、それ以前の記憶は……うーん。
思い出せない。
実は説明受けてたのかな……、でもまるでそんなの覚えてない。
「今は舞踏会の最中ですので、簡潔にお伝えしましょう」
あたしが困ってるのを察してくれた!
これで今どんな状況なのかがようやく分かる……。
「あなたはこの世界を救うため、魔法の勉強をして立派な魔法少女になるのです。そのためにここMA学園に入学したのです」
「は、はぁ……」
「これは入学時のランクを決める重要な試験、通称舞踏会なのです」
「う、うーん……」
「あなたは自らの魔法力を使ってライバルと争い、より多くのライバルを倒し、より長く生き残る事が目的です」
「な、なるほど……」
「さあ、説明は以上です。あなたもお行きなさい」
「えっ?」
いやお行きなさい言われても。
あたしがそのMA学園に入学して、お城っぽい建物は実は学校で、今この場所でランク付けをするための試験をしているってのは分からないけど分かった。
……だけども。
さらっと魔法力がどうとかうんとか言ってるけども、あたし魔法なんて使えないよ?
だから、そもそも前提が成り立たないんですが……。